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策略

※アーサーはプジョル殿の名前です。

 プジョルは家名です

 本名は、アーサー・プジョル

お含みいただけると読みやすいかと。

「さっき、官吏の寮の出口付近で俺とシェリー嬢を影に見張らせていただろう」

 皇太子殿下をジロリと睨む。


「どうしていつもアーサーはすぐに影の尾行に気づくんだ」

 皇太子殿下がわざとらしく腕を組んで、困ったフリをする。

 答えはわかっているのに、俺に言わせたいらしい。

 

「当たり前だろう。学園を卒業するまで殿下とほぼずっと一緒に行動をしていたのだから、気づかないほうがおかしいだろう」

 俺の返答にすぐにニヤッとしながら、皇太子殿下が納得したフリをする。


 コイツとはずっと一緒だったが、こういうところが憎めないヤツだ。


「影に見張らせていたのはアーサーの策略の真意を知るためだ。この間の朝、中庭でアーサーとシェリー嬢に出会った時、アーサーはシェリー嬢との仲を特別にしたいと私にさりげなくアピールしたよな。いま思えば、あの出会いもアーサーの策略だろう」


 皇太子殿下が俺を睨み返してきてから、表情を和らげた。

「しかし、秘密主義のアーサーが自分の色恋沙汰をわざとらしく私に教えてくる奴ではないし、絶対に裏があると私は考えた。私が自分の権力を使って、セドリック・アトレイとシェリー嬢をアーサーのために離縁させるのは悪手だし最低だ。私もそこまで馬鹿ではない。逆にアーサーは私を利用してセドリック・アトレイと儀典室の多才のシェリー嬢をくっつけようとしているのではないかと考えた。私がアーサーのためにふたりに別れるように程よく圧力をかけて、ふたりの引き裂かれる恋に火を点す作戦だったんだろう。そこまでがお前の計算だろう?お人好し過ぎるというかなんというか」


 皇太子殿下がこの答えに自信があるようでニッと自慢気に俺を見てきた。


「やっと、殿下も俺のことを理解できるようになってきたではありませんか」

 俺は皇太子殿下から満点の答えが返ってきて、ついつい嬉しくなり頰が緩んだ。


「さすがは策士のアーサーだ。やっぱりそこまで計算していたのかよ」

「そうですね」

 目の前の皇太子殿下が恐ろしいものでも見たかのような視線を投げてくる。


 伊達にコイツも皇太子殿下なんて、やっていないんだな。


「お前さ、儀典室で遊んでいないで、そろそろ私の補佐に来いとずっと言っているだろう。次期宰相候補殿」

「その話はしっかり考えていますよ。でもまだもう少しやりたいことがあるのです」


 ずっと皇太子殿下から側近としての要請は頂いている。

 同じ王城の仕事をするなら、国政の中心に携われる仕事に就けるほどの光栄なことはこれ以上ない。

 しかし…


「心残りはシェリー嬢か。さっき、泣いていたと影から報告が来たぞ」

「殿下のせいだろう」

「いや…」

 皇太子殿下が歯切れが急に悪くなり言い淀む。


「で、俺はもう一度殿下に問う。財務課のセドリック・アトレイに何をさせているんだ?」


 皇太子殿下が真剣な表情で俺に真っ直ぐな視線を向けてきた。

「その前にだ。アーサーはシェリー嬢に心底惚れているのだろう?私が気づいていないとでも思ったのか?この間のセイサラ王国のアッサム殿下の歓迎レセプションの時にシェリー嬢に見せたアーサーの表情でわかったぞ」

ワイン騒ぎを起こした令嬢がシェリー嬢に酷い言葉を投げつけたあの時の俺の表情をこいつは漏らさず見ていたのか。

「いま、それを俺に聞くのか?」


「いましか機会はないだろう。あのふたりは結婚しているとはいえ政略結婚だ。セドリック・アトレイからシェリー嬢を奪ってしまったら良いじゃないか。好きなんだろう?やっとアーサーが本気になれる女性が見つかったんだろう」

「それは…」


 シェリー嬢のことは愛している。

 でもいま彼女はセドリック殿に初めての恋をして、初めての嫉妬も覚えた。

 いまはシェリー嬢の隣に立つことよりも、彼女を幸せに導いてやりたい。

 兄のようで友の関係なら、まだそばにいられる。


「なあ、アーサー。よく聞け。とっておきの良いこと教えるぞ。セドリック・アトレイとシェリー嬢は白い結婚だ」


 コイツの情報網はどうなっている。これが皇太子という権力なんだろうな。

 その情報は俺はさっきシェリー嬢から聞いて知ったばかりなのに。


 目の前で得意気な表情をしているこの国の皇太子殿下は影に一体なにをさせているんだ。


「もう俺のことはいい。さっきの質問に答えろ」

 俺は皇太子殿下を睨み返す。


「俺がセドリック・アトレイに何をさせているかって?あいつからの提案だよ」

「それは殿下がセドリック殿に圧力を掛けたからだろう!」

 意味あり気に殿下が微笑む。


「いいから、アーサー耳を貸せよ」

 怒る俺に余裕な表情を浮かべながら、殿下は自ら俺に近づきてきて耳打ちをした。


 俺はその内容に怒りで震える手をグッと抑えるしか出来なかった。




 儀典室に戻ると誰にもわからないようにそっとシェリー嬢に視線を送り確認すると、いつもの仕事を愛するシェリー嬢に戻っていて、バリバリと音がするぐらい通常運転で仕事を進めている。


 芯の強い彼女のことだ。心の中は土砂降りでも、誰にも悟られまいと気丈に振る舞っているのだろう。


「プジョル様、お帰りなさい。いま大丈夫ですか?」

 近づいてきたシェリー嬢の瞼を見ると、少し腫れている。

 でも、それはきっと俺にしかわからない程度だ。


「どうした?なにかあったのか?」

「実はふと思ったのです。昨日連れて行ってもらったミクパ国のチーズが置いてあるあの店ですが、ミクパ国の料理がどんなものか我々は知らなかったのに、なぜあのお店にはミクパ国の特産の乳製品であるチーズもあったし、レシピも見ただけで知っている様子だったのでしょうか?あの時は興奮していて、冷静に聞き取りをしていなかったと思いまして」


 相変わらず、シェリー嬢はよく気づく。


「確かにそうだな。その辺りを確認していないな。いまからでも確認しに行くか?なにかわかるかも知れないな」

「そうですね。プジョル様の予定が大丈夫なのでしたら、いまから行ってみたいです」


 俺とシェリー嬢とふたりで事情を聞きに市場に出かけることになった。


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