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嫉妬

 背中からプジョル様の温もりが伝わってきて、その温かさに心が緩み、堪えていたものが抑えきれなくなって涙が止まらなくなる。


「プ…ジョル様、恋ってこんなに辛いものなのですか?」

「時に恋は苦しく辛いものでもある」

 プジョル様の落ち着いた優しい声が全てを受け止めてくれるかのようだ。

 わたしが力強く握って離さない部屋の鍵をプジョル様がそっとわたしの手から取り上げた。


「わ、わたし、セドリック様にあんな風に…優しく…」

 しゃっくりで上手く喋ることが出来ない。

「や、優しく肩を抱かれて馬車に乗ったことないのです。だから…あれを見て、胸を握り潰されるような… 胸が痛くて…」

 喋りながら 頬を伝う涙を手で拭っていると、プジョル様がわたしの耳元に近づいてきて吐息がわかるぐらい近くで囁かれた。

 

「その感情は「嫉妬」だ。昨日は自覚がなかったようだけど、今日ははっきりと嫉妬を自覚できただろう」

 プジョル様が痛いぐらいに再度後ろから抱きしめてくれる。


(これが激しい嫉妬…)


「今日は俺がシェリー嬢に優しく触れてやる。どうして欲しいんだ?言ってみろ」

 そう言って、プジョル様がわたしの頭を撫でたかと思ったら、髪の毛をぐしゃぐしゃにし出した。

 またもや、わたしの髪の毛をもしゃもしゃにしてくださった。


「もう…プジョル様。止めてくださいっ」

 涙でグタグタになった顔で思わず後ろを振り向くと、プジョル様がとっても悪い顔で笑っていた。

 その、憎めない表情にわたしも思わずつられて笑ってしまった。

「やっぱり、シェリー嬢は激しく嫉妬に囚われている表情よりも笑っていたほうがいい」

 そう言って、ポケットからぐしゃぐしゃのハンカチをプジョル様が取り出してきて、わたしの顔をゴシゴシと拭いてくださる。


「嫉妬で恋が辛いならその恋心を忘れたらいい。セドリック殿のことも忘れたらいい。もしその恋心が苦しくても忘れられなかったらその恋心は本物だ。シェリー嬢の愛するものは仕事だろう。恋が辛ければ、仕事をより愛したらいい。わかったか?」

「はい」

 プジョル様の優しさが痛いほど伝わってくる。


「俺の知っているシェリー嬢は粘り強く対話ができる人だ」

「ありがとうございます。セドリック様と向き合ってみます」

「それでこそシェリー嬢だ」


 そう言うと、満足気なプジョル様はわたしの手を取り、手のひらに寮の部屋の鍵をのせてくださった。


「頼むから次は俺の胸で泣いてくれ」


「えっ?何ですか?聞こえなかったのですが」

「気にしなくていい。なんでもない」 

 セドリック様のボソッと言った呟きは聞き取れなかったけど、その困ったような表情から、面倒な後輩だと思ったに違いないと確信して、大いに反省をした。



 ふたりで寮を出ると一瞬、プジョル様が立ち止まり、どこかを凝視した。

「どうかされましたか?」

「あ、いや、時間が…」

「プジョル様。ご面倒をお掛けして、お時間を取らせてしまいました。申し訳ありません。急いで儀典室に戻らないとみんなが心配しますね」

 その後は、ふたりで小走りで寮を後にした。



 王城のひときわ奥にある、ある部屋を俺は訪ねた。


「なあ、どう言うことか俺にしっかりと説明をしてくれるんだろうな。従兄弟よ。一体どんな事件に首を突っ込んでいるんだ?」

「おおお!早速、アーサーはやっぱり来たな。怖い顔だな。せっかくの美男子が台無しだぞ」

「元々からこんな顔だ。茶化すな。皇太子殿下!」

 俺は従兄弟で幼馴染でもある皇太子殿下に詰め寄る。

 それでもこいつは余裕そうに笑っている。


 俺はあの後、シェリー嬢が落ち着きを取り戻して仕事をするのを見届けてから、気になることがありこの部屋を訪ねてきたのだった。

 

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