006話 不思議な飽きた。
最後らへん少し文章多めです。すいません。
ゆっくりと読んでいってください。
拠点を飛び立った。平和の森に向かって。
なるべく早くしなければと急ぎ足―――いや、急ぎ浮遊で森に向かった。久々の浮遊であまり速くは移動できなかった。距離は現世で言うところの5kmはあったが、時速100km/hほどでなんとか浮遊移動した。
森に着き、『飽きた』の案内人である影朧しか知らない合言葉を森の最奥で唱える。
「倦怠者が来た。開けてくれ」
すると空間からホールがでてきて、影朧はそこにはいった。
影朧は今まで何回も、正確にはしばらくの間この空間にいた。実家のような安心感。本当の実家はここじゃないが。
そして真っ黒の空間に女の子が一人。
チーフ・・・いや、千晴が呼んだ子だ。
伊藤衿架。千晴と同じ中学三年生。成績は結構良い方。彼氏は知らない。(どれもチーフ調べ)
影朧は衿架の近くに行った。
「こんばんは。衿架さん。チーフ様がお待ちです」
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こんにちは皆さん。伊藤衿架です。
今目の前に黒くて仮面を被っている男?の人がいるのですが・・・
ことの発端は夏休み。勉強を一旦やめ、一階で家族と夜ご飯を食べてまた部屋に戻ったときに手紙が置いてあって・・・手紙の内容を簡単にまとめると『異世界にいる千晴があなたを呼んでるよー』とのこと。千晴・・・会ったら話すってわけでもないけどそこそこ話も盛り上がるし一時期・・・ねぇ?
しばらく考えながらお風呂入って、歯磨きして、ちょっと勉強しようとした。けど、勉強に集中できなかった。異世界か。行ってみたいけど帰ってこれないかもしれないとなると行きたくないなぁ・・・とか思いつつ、手紙に書いてあった方法を読み、馬鹿げてるなぁとか思ってそのままベッドで寝た。
方法を読んだ後に寝たのが悪かった。『飽きた』と書かれた紙を持ったまま寝てしまった。ベッドで横になりながら紙を眺めていたからさぁ・・・
そして今。チーフって誰??千晴のこと?まずこの人を信用していいのか?
そう私が迷っていると
「おっと、チーフ様ではなく、千晴様のほうがわかりやすいですよね。失礼しました」
軽くお辞儀してきた。
ちらっと見えた仮面の後ろ。い、イケメンだ・・・
ちょっと照れちゃうなぁ。
「え、い、いえいえ!!大丈夫です!・・・えっとここは・・・?」
つい流れで聞いちゃったけど聞いてよかったのかな?
少しの沈黙が流れる。それが怖い。アニメとか漫画の『・・・』みたいな。
すると突然黒い人が口を開いた。いや、口あるのかな。見えないや。
「ここは飽きたの成功者が来る場所です。いわば異世界と現世をつなぐ場所とでも言えますが」
なんかめんどいんだなー。
少し私は考えてから
「帰れますか?」
と聞いてしまった。馬鹿かな?何聞いてんだよ!!
言った後にハッとなりすいませんすいませんと何度もペコペコを頭を下げた。
すると優しい声で黒い人は
「もちろん帰ることも可能です。ですが帰るともうこれなくなりますが・・・」
と言ってくれた。千晴に会えないのか・・・しばらく会えないのは悲しいな・・・
・・・って何考えてんだ私!
しばらく考えた後、まっすぐと黒い人を見て答えた。
「じ、じゃあ帰りません!異世界も面白そうですし!」
少し顔が暑い。多分だけど顔赤くなってるなぁ・・・恥ずかしい・・・
うんうんと頷いた黒い人は仮面を取りながら言った。
「わかりました。ではとりあえずようこそ、ですね。私は影朧という者です。チーフ様に名前をつけてもらえました」
千晴っぽい名前だなぁ・・・
てか影朧さんイケメン。惚れるって。
影朧さんは一人で淡々と話を続けた。
・・・まぁ簡単に言ってしまえばここで顔やら体やらを作って、後は千晴・・・チーフに会って、暮らすという流れらしい。転生系で顔とか体を自分で決められるの珍しいなー。せっかくだしかわいくしちゃおう。
あれ、でも可愛いってどんなにすればいいんだろう・・・わかんない・・・どれだ・・・?
影朧さんが某獣狩ゲームのキャラ設定画面の上位互換みたいなのだしてくれたけど・・・黒髪ロングはかわいいって感じよりお姉さんって感じだし、ショートは子どもみたいになっちゃうし・・・中間?無難すぎるかなぁ・・・目元もぱっちりかまんまるかキリッと・・・いや、キリッとかは可愛いではなさそうだけど。
ずっと私が髪型やら目元やら鼻やら口を細かくいじっていると影朧さんがチーフのタイプセットみたいなのを紹介してくれた。まぁ別にそれはいいや。
結局、丸めな目、ロングとショートの中間くらいで黒だけど毛先だけオレンジっぽい髪、口もぷるんとした艶の良い唇、体型は痩せたい!!って思ったからちょっと筋肉のあるくらいにした。もちろんスタイルは良い。
完成した私を見て影朧さんは
「美しいです。それでは行きましょうか・・・その前に貴方のこちらでの名前、決めときましょうか」
名前とか元々のでいいんだけどなぁ・・・
5分くらい悩んでもいいのがでてこなかった。
ないだろうなぁと思いつつ影朧さんに聞いた。
「これこそチーフが決めてくれたりしません?」
影朧さんはニコッと笑い答えた。
「事前にチーフ様が案を出していますね・・・例えばラペル・ランドロードとか・・・」
ちょっとぽいのやめてくれないかなぁ!!
異世界にぴったりじゃん!!
私はじゃあそれで、とすんなり決めてしまった。
すると影朧さんは
「では名前も決まりましたし、行きましょう」
と言い、光のある方へ案内してくれた。
その光を通ると森。鳥の鳴き声も聞こえる。平和。
そして影朧さんは私を突然お姫様抱っこし、空中浮遊?飛行?し始めた。
恥ずかしい。そしてとても速い。途中王国もあって、多分まぁまぁな距離があったのに、すぐに着いた。
その場所にはでかい城があった。立派・・・!
そんなこと思ってたら城から誰かが落ちてきた。
えっ!?大丈夫ですか!?と声をかけようとしたけど、その人は無傷に見えた。この人もイケメンだ・・・
その人は影朧さんに
「影朧、この人が?」
と言った。
え、もしかして―――
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寝ていたけど影朧の気配に気づいて、すぐさま起きて城の入口に向かって飛び降りた。思ったより怪我は治った・・・かな?外傷はないけど内傷はあるっぽい。痛い。
影朧はお姫様抱っこしていた人をおろした。
きれいな人だなぁとか思ったけど、影朧が連れてきたってことは・・・
「影朧、この人が?」
少し戸惑いつつ影朧に聞いた。
もちろん影朧からの返信は「はい」だった。
その影朧の返事でさらに困惑した。えっと・・・ホントか?
「・・・衿架?」
「・・・千晴?」
二人は同時にお互いの元の名前を呼んだ。
そして同時にゆっくりとうんうんと頭を縦に振り、お互い驚いた。
いやいやいや・・・まじかよ。現世でも可愛かったのにまた違うかわいいになってるよ・・・まって。可愛い。うはぁ。
二人は同時にフーッと深呼吸をして、改めた。
「えっと、千晴は千晴だけど今はチーフ・ラブイーター・・・多分影朧からも聞いたよね」
あははと少し恥ずかしさを誤魔化しつつ、苦笑い。
続けて衿架も
「うん。少しは聞いたよ。私も衿架だったけど、今はラペル・ランドロード。よ、よろしく?」
その名前選んでくられたんだ。なんか嬉しい。
てかよろしくって言われたからこっちもよろしくって言って握手したけど今更だなぁ・・・
来てくれたことに感謝。
周りのみんなはなんともいえない目で俺達を見ている。な、なんだよ・・・
影朧だけはニコーっと見ている。仮面外してるのね。
ふととある疑問を持った。『飽きた』はなんで異世界転生できるんだ?そこで影朧を呼び、説明してもらった。どうやら、『飽きた』は読んで字のごとく飽きたものを変える力があるらしい。でも、あくまで力があるのは、六芒星の中心に飽きたが書かれているものだけらしい。
元々『飽きた』の力があったのはこっちの異世界だけで、現世には特になにもなかったらしい。でも、影朧がとある事情(なんか言いたくない事情らしい)であの真っ暗な空間と、現世にも稀に『飽きた』の力がでるようにして、現世で『飽きた』を使うと現世に飽きたと思われてあそこに行くようになっているらしい。そしてこっちで『飽きた』を使うと今の自分に飽きたと思われて暴走?というかしちゃいけないパワーアップをしてしまうらしい。あと、こっちで飽きたを使うときは紙を握って寝るんじゃなくてちぎって食べるらしい。ひぇー。こわいこわい。
「飽きたは絶対こちらで使ってはなりません。昔飽きたを使ってとある王国を破壊した人もいるので・・・」
飽きたの力強すぎるでしょ・・・
でも飽きたは使っちゃいけないんだな。よし理解。
ふと影朧が俺の内傷に気づき、なにがあったのか聞いてきた。
全部話した。ルボルと兵が来たこと、ルボルが想像以上に強かったこと、ルボル達が来た理由・・・
影朧は「ふむ・・・」となにか考え、口を開いた。
「まぁ普通に考えたらそうなるのも当然でしたね・・・その場にいず、大変申し訳ありません。ですが、ルボルという人物と兵を倒してしまったからには、もう王国に行けないでしょうね。行ったところで全兵に襲われて、返り討ちでしょう。なので、次行くのはきっと王国を奪うときくらいですね」
王国を奪う!?さらっとエグいこと言ったぞ!?
まぁ王国が奪えたら色々と便利にはなるかもしれないけど・・・
てか兵もたくさんいるのか・・・あの王国のことだし少なくともあの時の10倍以上はいるだろうな・・・
本当に王国を奪うのならば戦える者の戦闘力アップとかもしないとな・・・
影朧がまた口を開いた。
「そしてルボルを倒したのですからチーフ様はまたなにか能力が手に入っていてもおかしくないのでは?」
確かに。
ボイルのときのように新しい能力の感覚はなかったけど・・・
集中してあの時の感覚を思い出せ・・・
ルボルが息絶えて、兵が突撃してくる直前・・・ボイルの時はボイルの魂と、魂においてかれた能力が俺の中にあったがルボルは―――魂すら俺の中になかったな・・・ん?魂すらなかった・・・?てことはつまり・・・あれは偽物・・・!?
「影朧・・・あの時俺が倒したのはルボル本体じゃない・・・偽物だった!魂というものが入っていなかった!」
影朧は仮面をつけ、声色を変えて言ってきた。
「そうですか・・・そうなるとまずいですね・・・また攻め込んでくるか、王国の守りをガチガチにされるか・・・どちらにしても不利・・・」
影朧が言葉にして迷うなんて珍しい。それほどのことなのだろう。
ここで影朧と俺の考えは一致した。
『今すぐにでも全員の強化をしなければ・・・!』
早速俺と影朧はラペルと話しているみんなのところに行き、軽く状況説明とこれからすることをなんとなくだが話した。ラペルには来て早々悪いけど戦えるなら戦ってほしい・・・でも傷つけたくない・・・ま、まぁ細かいことは後から考えよう。
早速個々でトレーニングをはじめた。
オムニブスはO.L.の強さと最大召喚数を上げるのと、様々な薬を作る。回復薬はもちろん、毒やらステータス変化やら・・・
O.L.関係のことはとにかく召喚しまくって召喚数を上げるっていうのと、ウェクプルとかノヴェンリーとか俺とかと戦って互いに強さを高める。でもトレーニングの最中、いい情報がはいった。O.L.の強さはオムニブスの強さと比例するらしい。だからO.L.と戦いまくって一体一体強くするより、オムニブスと戦いまくって全員を強くしたほうが良いということ。オムニブスは薬の作成と戦闘練習でとても忙しくなった。
次にノヴェンリー。彼はあくまで木を切るのに適している。だから本当は戦闘向きではない。けれども、本人から闘う意志があったので、戦闘要員にした。ノヴェンリーは作りだず魔力の斧の性能を高めるというのと基礎的な戦闘技術を磨く。元々木をあの速さで斬れるから十分なほど強いけど、念には念を。主にウェクプルやオムニブスと戦って、たまに俺や影朧と闘う。斧のほうは頑張って形を変えたりさらに鋭くしたりできるようにしているみたいだけど、そっちに意識が行ってしまうからふとしたことで消えちゃうみたい。
そしてウェクプル。カーリタースにもらった武器をうまく使用できるように、そこらへんのモンスターと戦ったり、俺やノヴェンリーなどと戦ったり、ひたすらウェクプル専用サンドバッグを叩いている。見るたびにパンチの威力そのものや、スピード、二段攻撃の制度が良くなっている。才能の塊すぎて何も言えない。
そして異世界に来たばかりのラペルは・・・
最初の部分でチーフ様ではなくチーフと書いているのはあくまで影朧の思考ではなく、ナレーター?まぁそういう人が説明しているからですはい。
そして終わり方を見てもらったら分かる通り次回の最初もトレーニング場面になりそうです。でも予定では大半がジェニスなので許してください。
あとなんかまだ展開がはやいですよね。有名な作品はもっと一つ一つのことに一話一話使ってるのに私のやつハイテンポですよね。へへ。女性パート慣れてないのもありましてね・・・もっと幼馴染との恋愛関係書きたかったですけどそれはまた今度。
最後に一つ。ラペルの見た目最初はタイプなものゴリゴリにいれようかなとか思ったん出すけどなんか途中でやめました。違うタイミングでタイプの人というか癖なやつだしたいです。以上。