005話 絶対な王。
今回は戦闘回です。セリフがいつもの半分くらいかもしれませんが、まぁ戦闘回なので。まだまだ小説書くのに慣れてはいませんので温かい目で読んでくれると幸いです。
「あの人が来ました」
・・・え?もう来ちゃったの?
まだ心の準備が・・・なんて言ってる場合ではないか。
あの人の対応は、影朧がするらしい。これが正真正銘最後の客ですからだとかなんとか。
まぁでもなんの説明もないより全然いいし、俺が行っても誰?としかならないしね。
そうして影朧は急いで、俺がはじめにでてきた平和の森に向かった。
・・・今考えてもなんかむやむやするだけだからこの件は後々影朧が帰ってきてから考えよう。
そして影朧が森に向かってからも武器すげぇってなっているウェクプルと、その周りに人。
俺もそこに加わり、すげぇーってなった。
すると突然カーリタースは俺を見ながら
「あなた・・・私が今まで見てきた誰よりも才能がある・・・でもそれに合った武器は作れない。なぜだか自分でもわからないんだけど、ごめんなさい」
え、その人にあった武器が俺には作れないとかあるの??
まぁ俺には変形式魔法武器があるからいいけど。
・・・あれ、じゃあなんで変形式魔法武器は大剣になったんだ?
「だ、大丈夫・・・でも一つ聞いて良いかな?」
カーリタースは不思議そうに頭を少しだけ傾けて
「はい?なんでしょう」
といった。
俺はカーリタースにちょっとまってて、と言い自分の部屋に置いた変形式魔法武器(ティア4)を持ってきた。
「これ・・・俺が持った時はちゃんと変形したけどなんでだかわかったりする?」
武器を見せた瞬間カーリタースは目を輝かせて、口を開き、武器にふれるか触れないかくらいのところで手をぱたぱたさせている。
「ティ、ティア4・・・はじめてみた・・・」
あれ、俺の言ったこと忘れてたりするかな?
カーリタースの肩をトントンと叩いたらハッと我に戻った。
「す、すいません!つい夢中になってて・・・そうですね・・・多分、変形式は現在一番あった武器にしてくれているのではないかなと。それか、ランダムか」
ほう・・・要するに今後これを使ってってもずっと大剣ってわけではないってことか。
「なるほど、ありがとう」
まぁいろんな武器を使えるから経験になるってことで・・・
いつかは鎖鎌とかになるのかなぁ・・・楽しみだ。
すると突然遠くのほうにからどたたたたたと馬に乗った兵のような人達が見えた。こちらに来ている。
どうやらみんな俺のワンテンポ後にタイミングで気づいたようだ。
アゴラリスの人達かな?
槍とか持ってる・・・え、もしかして城建てたの怒ってる?
オムニブスは軍を指差し言った。
「きっと僕とカーリタースの件、そしてこの城の件ですかね・・・」
はぁ・・・やっぱそうだよな、と俺はため息をしつつ言った。
まぁ悪いのは俺らだけどね。
どうしようという雰囲気の中俺は
「もし戦いになったらやれるだけやるしか無いよね・・・」
と言ってしまった。
そしたら周りは俺を冷たい目で見てきた。
あれ。うんとかじゃなくて見てくるだけ?へ?
なにもわからない俺にウェクプルは教えてくれた。
ウェクプルが言うにはアゴラリス王国の兵達は全員先鋭の者で、勝ったことがある他の国の軍はまだいないらしい。まるでその姿は「魔」そのものだそう。
「えっとそれってつまり戦うのは無謀だということ・・・?」
みんな首を縦に振った。えぇ?
そんなことしている間に兵達はかなり近づいていて、20mもなかった。
兵達の先頭にいるリーダーらしき人がこちらに向かって大きな声で
「ジェニス様の命令だ!今すぐこちらにオムニブスとカーリタースを渡し、その城を撤去しろ!!もししなかったら即闘う!!」
考えていた通りのことを言われた。
周りは青ざめている。すぐにでも取り掛かろうとしている。
けれど俺はなんか腹がたった。自由に生きたいからね。
だから俺は周りの奴らを止めて、一人で兵達の前に立った。
戦闘のリーダーみたいなやつが俺のことを睨んできた。
「貴様・・・歯向かう気か・・・?」
横目でみんなを見た。
全員顔面蒼白。なにしてんだ戻ってこいと言うかのように視線を送ってきた。
そしてリーダーの後ろについている兵達はたがいにこそこそと話している。全員が言っていることは大体同じことだ。『あの人に一人で闘うとか無謀にもほどがある』ということを言っている。
こそこそ話をよく聞いてるとこのリーダーのような奴の人物像がわかってきた。名はルボル=コロル・ニゲル。今までよく見ていなかったが、若干おじいちゃんだ。かなり大柄で、少し髭を伸ばし、髪も短髪ではあるが風でなびいている。普段はきっと優しい緑の目だが・・・俺に向けられているのは敵意の目だ。思った通りこの団の団長らしい。
ずっと俺からも睨んでいるとルボルは口を開いた。
「・・・ハッ、戦いたいようだな。いいだろう。斬り刻んでやる」
そう言うとルボルは背中に背負っていたでかい斧(ぽく言うとアックス)をブンッと勢いよく振りながら手に持ち、戦闘態勢に入った。
圧を出すのに慣れている。強いね。この人。普通だったら圧で失神してる。
でも俺も負けてない。ウェクプルと戦った時よりも集中して、息を整えた。
「俺は自分で言うのもあれだが強い騎士だぜ?舐められちゃ困る」
少し楽しそうにしている?なぜだ?
・・・まぁいい。たまにはこちらから―――攻める。
ルボルは少し驚いた。
(思っていた倍以上速い・・・こちらもなめちゃあかんの・・・)
ルボルは俺を避けるように走った。ルボルは見た目以上に速く動ける。ウェクプル以上だな。
だが、俺は一度止まった。あそこまででかい斧を振り下ろしたらその間にいくらでも叩ける。と考えたからだ。予想通りルボルは斧を刀のように構えた。下を向き、何か言った。
「・・・上弦月――」
その瞬間今まで以上の圧を感じ、すぐさま10m後ろに下がった。
その行動は多分正しかった。
「普通に斬れる振下し・・・!!」
ルボルは後ろにおいてた右足を前に持ってくると同時に斧も前に振りかぶった。だが器用なことをする。地面すれすれで当たっていない。その振り下ろし攻撃は当たらなくとも、すごい風圧で吹き飛んでいきそうになった。
多分普通の人があれに当たったら真っ二つどころか、風圧で内部から爆発でもするんじゃないか?音も地面が割れていてもおかしくないドォーンという音が聞こえたし・・・
あぁいう器用で速い人はさっきみたいな俺の攻撃も簡単に避けてくるだろうし、さっきの振り下ろし攻撃と同等のパフォーマンスを追いかけっこしながらやってくるんだろうな。
ルボルはゆっくりとこちらを見て、こちらに走ってきた。本格的に駆られる対象になっちまったな〜、俺。
一瞬で距離を詰められて、急いで俺も逃げた。だがルボルより少し遅かった。射程範囲内にはいった瞬間にでっかい斧をブンブンと振ってくる。だがそれを避け続けてるおかげで大体一定の距離を保っている。近づかれる→斧を振ってくる→斧を振ってるおかげで少し遅くなる→ちょっとだけ離れられるの繰り返し。だがこれも時間の問題だろう。
走ってるだけだとこちらも攻撃できない。後ろ向いてカウンターするっていう作戦をしても怪しまれて終わる。
追いかけっこで体力がなくなる気がしたから一回ジャンプした。50mくらい。まぁもちろんルボルはそれに追いついてきて、なんなら少し高いくらいだった。でもジャンプにも意味がある。逃げるだけじゃない。
俺もルボルも落下し、俺の方は地面に着地するかしないかくらいのところで自分の足元に写すだけじゃない鏡を発動させて、鏡を割った。
鏡を割った瞬間、俺は地面に一番近い体の部位が足から頭になり、ジャンプするよりも速く、高いところに行った。ルボルは俺のことを見上げ、口角を上げた。
ルボルは先程のようにジャンプしてきた。が、それでも俺の高さまではたどり着いてない。俺はルボルの様子を伺いつつ、体勢を直した。直して、前を見たら目の前にはルボル―――俺は驚く。そして、素手で叩き落される。
なぜだ?ルボルのジャンプは届いてなかったはず・・・
地面には斧が突き刺さっていた。そういうことか・・・!ルボルは足りない高さを斧を下におもいっきりぶん投げて二段ジャンプもどきで稼いだのか!!
くそぉ・・・叩き落される時の威力もウェクプルの倍以上あるし・・・地面に当たるのも痛かったし・・・どんなに強くなっても痛いものは痛いのかよ・・・
ルボルは着地し、俺を見下した。
「俺に戦いを挑んだ奴のなかではまぁ結構上だ。が、俺以上かどうかと言われたら違ぇな」
その通りだ。ルボルは強い。
ルボルは斧を引き抜き、俺に向かって斧を振り下ろしてきた。
もう当たる。一ミリもない。
あんまりやりたくなかったけど一番楽なのはこれかな・・・
俺は手から魔力を放出させ、カウンターを発動させた。
その瞬間斧の威力がカウンターを通して斧に戻っていき、斧とルボルは激しく振動した。
斧がぶっ壊れるのが一番だったんだけどなぁ・・・
だがルボルも驚いている。
「こんな技を隠していたのか・・・驚いたぞ・・・!」
俺は急いで立ち上がり、ルボルから距離を取った。
息は荒くなっちゃったけどまた逃げるしかない・・・!
再び俺はルボルから逃げ始めた。すかさずルボルは追いかけてきた。
さっきとは違い、どんどん距離を詰めてくるだけ。なにか来る・・・
「満月・・・」
ルボルはそう言った瞬間飛び、俺の上前あたりにきた。
斧を振る雰囲気だ。
「縦回転切り!!」
ルボルは空中で体ごと斧を縦に一回転させて俺を切る気だ。
だが俺はすんでのところでカーブし、避けた。ルボルはふんわりと着地し、技が当たらなかったからか『チッ』と舌打ちをしている。そしてまた追いかけてきた。
俺も体力の限界が訪れてきた。あの時落とされなかったらもっとできた・・・くやしい。
だが俺はルボルのような攻撃技を持っていない。変形式魔法武器も練習できてないしルボル相手にはあまり使えなさそうだ。なにか・・・攻撃する技がほしい・・・
そんなこと考えているとまたルボルは飛び上がり、今度は俺の真上にきた。
「下弦月・・・」
ルボルは走っている俺に狙いをつけた。
ルボルの斧がブゥゥゥゥゥゥと風を切る。
「普通の下広範囲攻撃!!」
下への攻撃だ。さっきの上限月?ってやつの反対か・・・
今度は髪が少し切れたが、なんとか避けられた。正直自分でもなぜ避けられたのか不思議なくらいだ。
ルボルは着地し、また刀のように構えた。俺はずっと離れていっている。
一瞬視界からルボルが消えたと思ったら目の前にいた。
一番最初のやつより速く、より正確に俺を仕留めに来ている。斧を右から振ってきた。カウンター・・・いや、もうカウンターは見られているからギリギリで攻撃を止めるだろう。
逆にそれを利用する。
俺は斧が俺の腕に当たる直前で左腕の下に構えておいた右手からカウンター用の魔力を出し、カウンターを発動させようとした。
思っていた通り斧はカウンターのギリギリで止まり、攻撃を停止した。
今がチャンスだ。
姿勢を低くし、右手に魔力を貯める。すべての魔力を集める。そして、超圧縮する。可視化させると米粒くらいにまで。そして右手でルボルの腹を殴る。殴る瞬間に圧縮させていた魔力を開放させて、威力最大のパンチにする。
「魔力圧縮パンチ・・・タマテバコ・・・!」
ルボルはガードしようとしたが、間に合わなかった。俺のパンチは少し魔力で速く押していて速かったから。
ルボルは吹き飛んだ。
俺が叩きつけられた時以上に速く吹き飛んだ。
ルボルの腹は穴が空いていた。
口からも血を流していた。
俺はルボルの近くに行った。
「俺の勝ちってことで」
するとルボルはかすれた弱々しい声で想像していなかったことを言い始めた。
「いぃやまだだ・・・俺の他にも騎士はいる・・・」
そうだった・・・まだいるんだった。
ルボル以上とは言わないけど強いやつらが。
そして息絶える前にルボルは言った。
「ジェニス・・・王・・・のた・・・めに・・・」
そう言うと同時に兵達が俺に突撃してきた。14人程だ。
だがルボルとの戦いで疲れ果てた俺にはこいつらを相手にする体力が残っていない。どうすれば・・・
その時俺の前に三人の影が現れた。
頑張って顔を上げた。ノヴェンリーとウェクプルとオムニブスだ。
さっきまで怯えてたのに・・・
「チーフさんがあんなに頑張ってくれたんだ。僕らもやるしかないさ」
彼らの顔は晴れ晴れとしていた。さっきとは大違いだ。
ウェクプルは強い人達と闘うことに興奮していて、さっきカーリタースからもらった武器を腕につけて、体からオーラみたいなものも出した。体から出ているオーラのようなものもこの前より一段階多かった。
ノヴェンリーは魔力の斧を作り、息を整えて戦闘態勢に入った。
オムニブスは人体錬金を発動させて背後に三体、人のような者・・・錬金戦闘員を召喚した。
兵が三人に標的変更したと同時に三人も兵に向かって攻撃をはじめた。
まずウェクプル。兵を一人一人ぶん殴っていて、武器の効果で二段階攻撃になっている。ちゃんと敵の攻撃もすべて避けてから殴っていた。元々殴りの強さがすごかったので、五人程をすぐに片付けてしまった。
次にノヴェンリー。大木を切り落とした時のように、一瞬目つきが変わったと思ったら広範囲に斬りかかり、五人程の兵の姿はすぐに消え、肉塊すら残っていなかった。
最後にオムニブス。錬金戦闘員が通用するか少し心配してしまったが、一体一体がそれぞれ規則性のない人間と同じような動きで、強さも申し分なかった。20体いたら俺も勝てるかわかんないレベル。錬金戦闘員は一対一で兵を倒していき、最後の一人は三体で一斉に殴った。
兵との戦いはすぐに終わった。あっけなかった。
「以外と弱かったな・・・まぁ武器の性能試せたしいっか」
ウェクプルらしい感想だ。
やっぱ彼らの実力は恐ろしい。
そんなこと考えているとオムニブスは
「チーフさん、少し休んでください。頑張りすぎです」
と。
言われた通り、というか元々そのつもりではあったが城の自分の部屋で少し休ませてもらった。
・・・自分の部屋が高すぎて行くのがだるかった。
主人公耳よくね?とか団員名前フルでださないやろ、とかのツッコミは置いといてください。あと錬金戦闘員、いわゆるO.L.は人でいう致命傷(心臓部分や頭部)になる攻撃以外は大体気にせず戦います。というか、彼ら(?)は痛みとかがないので。ウェクプルの新武器はのちのち強くする予定なのでまだこのくらい程度で見といてください。あと、兵弱くね?って思った人もいるかもしれませんが、強いです。彼らがぶっ壊れなだけで。次回の話は影朧目線から始まる予定なので覚えておいてください。