004話 忠実な心。
今回バトルシーンはだいぶ短いです。でもめんどくさいとかじゃなくて単に実力差がすごかったのですぐに終わる、ってだけです。
城の中に入った俺らは影朧とノヴェンリー以外、目を輝かせていた。
・・・?ノヴェンリーは寝てるからわかるけど、影朧はどうしてすごーいってなってないんだ?
まぁいつかわかるか!!
「すごいですね、この能力。ここまでのものは初めてですよ・・・」
目を輝かせる程ではないが、驚いてはいた。
うんうん、大広間も設計図通りだ!細かいねぇ。
「設計図通りなら部屋も結構あるはず。まだ人数も少ないし、とりあえず一人一部屋でいいかな」
そう言うとみんな「うん」と言ってくれた。
「じゃあなるべく分散しないようにまとまって部屋を決めないとですね」
「うん。そうだね」
話し合いの結果、とりあえず五〜六階が個々の部屋ということになった。
決定!!になる直前にウェクプルが手を挙げた。
「え、えっと、俺からの提案なんだけどさ、チーフさんは最上階とか結構上の方が雰囲気でるんじゃない?」
まぁ確かにボス的な人は上の方にいるのがお決まりだけどさ・・・
なんか・・・ね?あんじゃん。
俺が悩んでいると周りも
「確かにいいですね」
「そうですね」
とかって言い始めて結局最上階から一階下の十九階になった。
それぞれの部屋も決めて、城の内部を見ていくことになった。
調理室や実験室、訓練場や大浴場など、城の中だけでもかなりの施設があった。
ま、道具とか器具はまだ置いてないんだけどね。
それから、自由に見て回って良い時間にして、その間にノヴェンリーが起きた。
自分で作った城に驚いているようだ。
・・・あれ待てよ?俺はとあることを思い、影朧を呼んだ。
「なんでしょうか、チーフ様」
「影朧、拠点造り・・・なんか思っていたより早く終わっちゃったね・・・」
「チーフ様・・・私も思いました・・・」
多分一番楽しいであろうところをすっ飛ばしてしまったせいで、少し反省する俺と影朧だった。
ふと、影朧が言った。
「チーフ様、そういえばなのですが科学者がいないのに実験室、いわゆる科学室があるのは少しおかしいのでは・・・?」
・・・そうだった。
なんも考えてなかった。どうしよ。
「どうしよっか・・・」
「私にいい案があります」
嫌な予感がする。前にもあったことがまた起きてしまう気がする。
「ま、まさかアゴラリス王国にまた行くとか言わないよね?」
「そのまさかです」
影朧は俺に考えを当てられて多分笑顔だ。
俺は頭を抱え、ため息をつきつつも
「わかった・・・まぁいい人材はそこくらいだし・・・」
アゴラリス王国に行くことになったので、ノヴェンリーとウェクプル、その家族達に留守を頼んだ。
安心して。事情は話した。
しばらくしてアゴラリス王国についた俺と影朧は王国に入り、科学者を探した。
が、俺はしばらくしてジェニスという人の言葉を思い出した。
「影朧?そういえばこの王国で働いてる人ってもらっていいんだっけ」
「だめとは言われましたが無視です無視。無視してもどうにかなります」
そんな会話をしていたら突然、城から白衣を着てメガネを掛けてる、いかにも科学者っぽい男の人がでてきた。
だがどうしたんだろう。焦っている。というか、怯えてる?
「許してください!!どうか私を・・・!!!」
城からもう一人、さっきの人と同じ白衣を着ている、ガタイの良い人がでてきた。怒ってそうだ。
ガタイのいい人はドシンドシンと足音を立てながらメガネの人を追いかけていた。
「おい、どうしてこんなミスをした・・・ジェニス様に消されるのは俺なんだぞ?頼むからちゃんとしろよ・・・なぁ!!!」
ちゃんとキレてる。頭をポリポリと掻きながら怒鳴ってる。
というかジェニスって名前が出てきた。そんなにすごい人なのか・・・
「か、影朧、ちょっとここは巻き込まれる気がするんだけど・・・・あれ?」
影朧がいない。周りをキョロキョロと見回すとメガネの人の横にいた。
「突然すいません。この方をもらっても?」
ちょ、ええええ何いってんの!?何されるかわかんないよ!?
ガタイのいい人は少し考え
「邪魔だし、やるよ。お前らがなにするかは知らないけどな!ぶはははは!!!」
いいのかよ・・・いやな上司(?)だな・・・
メガネの人は自分の置かれている立場がわかっていなさそうだった。
「はやく荷造りしろ、科学オタク」
ガタイのいい人はそう言って城の中に戻っていった。
メガネの人は影朧に向かって
「あ・・・あの・・・自分・・・力ないので・・・来てもらっても・・・いいですか・・・」
「いいですよ。さ、チーフ様行きましょう」
と影朧はこちらを見てきたので仕方なくついて行った。
城に入り、科学室に入るとさっきのガタイのいい人や他の色んな人が薬のようなものを作っていた。
「さっきのやつらか。あぁメガネの荷物持ちできたのか。すまねぇなぁこんなよくわからん、何が楽しいのかわからないものを作ってるとこ見せちゃって」
「いえ全然・・・」
突如メガネの人から強力な魔力が感じられた。
「どうでもよかないだろどうでもよか・・・!」
空気が変わった。
ガタイのいい人も少し驚いてるようだ。が、まだ煽る。
「お前からしたらどうでも良くないかもしれねぇけど俺らからしたらどうでもいいんだよなぁ!科学ごときがよぉ!」
メガネの人は立ち止まり、手を下に向けて地面に二つの魔法陣を発動させた。
「科学を馬鹿にするなよ・・・体と態度がでかいだけのやつが・・・」
ガタイのいい人も頭にきたようだ。顔が真っ赤になり、今にも血管がはち切れそう。
メガネの人は冷酷な目でガタイのいい人を睨んでいる。
「頭にきたぞ科学オタク・・・!!何すんのか知らんがぶちのめしてやる・・・!!」
メガネの人は白い息を吐き、魔法陣は光り始めた。
「人体錬金・・・!」
メガネの人がそう言うと、魔法陣から人の形をしたなにかが出てきた。
何か異様だ。
「うるるるるるぅ・・・っふぅ・・・」
ジャングルに生息している鳥のような声をそいつは出した。
だが声を出すだけで体はやる気なさそうに腕をだらーんと下におろしているだけだ。
「・・・Go」
メガネの人が呟くと人らしき者はガタイのいい人に向かって走り出した。
ガタイのいい人は自分が攻撃される前にそいつらを殴ったが、微動だにしない。むしろ、近づいている。
「くそっ・・・なんなんだよこいつら・・・来るなぁ!!」
自分の攻撃が食らわないとわかってからはガタイのいい人は押されるばかりで、ついには二体から同時に攻撃を受けた。片方は拳、もう片方は足で攻撃された。
攻撃が相当強いものなのか、殴られたり蹴られたりした部分はかなり凹んでいた。
血も吐き出していた。
「んん・・・ぐぅ・・・」
声も出せないガタイのいい人は倒れ込み、その前にメガネの人が立ち、
「僕は出てくよ。君が言った通りね」
そう言うと人のような者はジャッと消え、メガネの人は荷物を僕らにもたせて城を出た。
「じ、じゃあ僕らもこれで・・・」
影朧と俺は足早に城を出て、メガネの人を追いかけた。
城を出た後のその人はうんと伸びをしていた。
僕らに気づくと
「あぁ、さっきはすまない。お恥ずかしいところをみせてしまったね」
さっきとはまるで別人のようだ。
メガネの人はこちらを向き、笑顔で言った。
「僕はオムニブス=リベラティオ。先ほど奴らに言った通り、君たちについていくことにした」
「よろしくオムニブス。俺達のこと詳しく言ってなかったけど、いいの?」
「いいよ。なんとなくだけどこういう運命を感じたんだ」
何言ってんのかさっぱりわかんないけど、多分いい人だ。
どうやらオムニブスは科学者で、科学オタクでもあるらしい。そして、科学者では珍しく魔力操作での能力も持っているんだ。さっきの人のような者がそれらしい。
「まぁさっきはたまたまあいつと実力差がかなりあってボコボコにできたけど本来はもっと激闘とかがあったよ」
とオムニブスは笑いながら言った。
とか話してたらもう門の近くだ。その時、女の人が走ってきた。
超スタイル抜群でオレンジ色でショートの髪の美女の女の人だ。
一体彼女は?
「オムニブスさーん!!」
どうやら用があるのはオムニブスへらしい。
こんな美女が・・・いいな・・・
その女の人は顔を少し傾けて
「もしかしてこの王国出ていくんですかー?」
と。
そしたらオムニブスは謝るように
「あぁ。来るとしたら薬剤とかを買いに来るとかくらいかな。なんかごめんね」
と手の平を合わせて言った。
もしかして彼女か・・・?
彼女までいかなくともそれに近い幼馴染か・・・?
「えぇー・・・オムニブスさんいなくなるとかここにいる意味ほぼないって・・・」
そして彼女は少し考える動作をし、こう言った。
「じゃあ私もついていきます!!いいですね!!」
え、えぇー・・・
そんな急に言われても・・・ね?
困っちゃうんだよなぁ・・・
「俺しかここに意味はないって・・・嬉しいけどお前はお前でやることがあるだろ?」
夢でもあるのかな?
っていうか俺、こんなに会話聞いてていいのか・・・プライバシーとか守ったほうがいい気もするんだけど・・・
「いいの!武器造りなんてオムニブスさんについていった先でもできるし!!」
武器職人か・・・ありだな・・・
俺は二人の会話を聞きつつこの女の人をどうするか考えていた。
「そうだなぁ・・・俺はいいけど・・・この人がいいか・・・」
俺のことをちらっと見て、指差した。
「お願いしますっ!頑張りますから!」
女の人はしっかりとお辞儀をして、俺にお願いしてきた。
うーん、と顎に手を当て考える俺。
武器を作る腕があるのか・・・でも大変だし・・・
と考えていた俺だが、影朧は俺に耳打ちをしてくれた。
「この人はアリです。良い才能もあります」
そうか。影朧が言うなら良いか。
影朧はそういう才能関連の能力なのかな・・・
「まぁ・・・いいよ、来ても」
そう言うと、女の人はとても喜んだ。はねていた。
オムニブスも微笑んでいた。
幸せそうでいいですね。
「ただし、やることはちゃんとやってもらうからね」
女の人は
「はーい」
と軽く返事をして、一度家的なところに帰った。そしてすぐに帰ってきた。
だけど彼女が持ってきたのはかる~いリュックサックのみ。
「そ、そんだけでいいの?返ってくるのは多分しないけど・・・」
心配そうに俺が言うと彼女は
「大丈夫です!ちょっとの器具とちょっと服があれば十分なので」
・・・まぁどう考えるかは人次第ですし。
そして、その会話を聞いていたオムニブスは俺に
「あれ、名前聞いてませんね。あなたのも、彼女のも」
と言ってきた。そういえばそうだな。
「俺はチーフ・ラブイーター。チーフって呼んで」
オムニブスは彼女の名前やちょっと説明をしてくれた。
彼女はカーリタース=フェリキタスという名らしい。オムニブスはカーリタースが悪い男達に路地に連れ込まれたときに能力を使って助けてくれた、恩人らしい。
さっきカーリタース自身が言っていた通り、武器職人で腕はすごいけど興味の薄い人には作らないらしい。
そして俺達は四人で拠点に帰った。
拠点に残っていた人たちの反応はすごかった。
「も、もしかしてオムニブスって人・・・?まじですか・・・?」
「まじかよ・・・本物とか二回も見たこと無いよ・・・」
オムニブスはかなり有名な人だった。
でもなぜか自慢げにしていたのはカーリタースだった。
でもそこでノヴェンリーが言った
「あれ、でもオムニブスさんって王に忠実とかなんとかって聞いたような・・・」
え、そうなの!?なんかついてきちゃったけど!!
「あぁそれは誤解だ。僕が忠実なのは科学だ。本音を言うとアゴラリスの現在の王は性に合わなくてね」
なんか安心。いや、安心じゃないか。いや、安心かも。
淡々と話しているオムニブスは、まぁ悲しい顔ってよりかは出れたよかったーみたいな顔だ。
「彼女はカーリタース。凄腕の武器職人なんだよ!!」
と、自分ばかり褒められるのもなにかと思ったオムニブスはカーリタースを紹介し始めた。
急に自分に回ってきたので、彼女は驚いていた。
「ち、ちょっと!急に話振るの適応できないからやめて!」
と少し赤面しながら言った。
すると突然、カーリタースはウェクプルとノヴェンリーを指差して
「あなた達すごい才能を持ってる・・・武器作ろっか!?」
と。でもノヴェンリーは
「僕は自分で作れるやつがあるから、大丈夫です」
と言ったが、ウェクプルは逆に
「い、いいんすか!?ありがとうございます!!」
と喜んでいた。
その目はほしかったおもちゃを買ってもらえることになった子どものようだ。
そしてカーリタースはリュックから少しの材料と工具を取り出して、武器造りを始めた。
ゲームのように彼女の手元は煙で隠れてよく見えない。
そしてあっという間にできてしまった。
名前こそ知らないけれど、拳にはめて攻撃するまぁまぁ大きい義手のような武器だ。
「貴方の才能に合わせて作った物よ。きっと気にいるわ」
カーリタースは武器の能力について話し始めた。
内容を要約すると、ちょうどいいタイミングで拳の魔力を急激に高めると多段攻撃になるらしい。でも、三段攻撃以上はかなり難しいらしく、本当に危機的状況での覚醒とかじゃなきゃできないらしい。
「すげぇ・・・かっけぇ・・・」
ウェクプルは感動し、興奮している。
よかったねーと思っている俺のところに影朧が来た。俺の耳元で囁いた。
「あの人が来ました」
ウェクプルの武器は多分、作者である僕と皆様の考えている見た目が違ってくると思います。なのでいつかなにかしらの形で絵かなにかを見せられたらなと思ってます。今回は内容的には薄めでしたね。次回は濃くなる気がします。次の話はいつでるのかわかりません。すいません。