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010話 強力な団長。(3)

投稿頻度ランダムですいません。

あと今回は雑な過去編がちょーーーっと長めです。

 オムニブスは拠点から見て王国の右後ろに向かった。


 オムニブスはあくまで研究者だ。ウェクプルやノヴェンリー(木こりではあるけれど一応)の走る速度より遅い。それでも普通の人間よりは全然速い。オムニブスより錬金戦闘員(O.L.)のほうが全体的な戦闘ステータスや足の速さは上回っているのだ。


 右後ろに着くと身長の少し高い水色の服を着た水色の髪の人間がいた。 

 オムニブスは嫌な予感がして、すぐに人体錬金(ホムンクルス)を発動させて錬金戦闘員(O.L.)を自身の周りを囲むように十五体程召喚した。

 水色の男はオムニブス達がいるほうに空気を手で払うような仕草をした。

 その瞬間


パキィィィィィィィィ・・・


 と広範囲に氷ができた。

 錬金戦闘員(O.L.)は一瞬にして氷の中に。

 だが錬金戦闘員(O.L.)はすごい力のお陰で自ら氷を破壊していって全体氷から出てきた。

 微笑んだオムニブスだったが、その微笑みは一瞬にして崩れた。氷はまた展開された。

 今度の氷は男の意思によって壊された。錬金戦闘員(O.L.)も壊されてしまった。

 錬金戦闘員(O.L.)の召喚に必要な魔力はまぁまぁ多い。計画的に召喚するとなると今また出しても壊されて魔力が減るだけなのだ。

 O.L.による壁もなくなり、体に魔力を纏うくらいしか防御が残されていなかった。

 オムニブスは思った。


(まさかここまでの実力者が相手になるとは・・・流石にウェクプルやノヴェンリーもここまではやく追い詰められてはないだろう。賭けになるからあまり薬品は使いたくないが・・・)


 オムニブスは賭けが嫌いだ。確実性がないのだから。 

 科学も最初は確実性がない。だがオムニブス自身が最初に見つけた『希望』なのだ。



 生まれも育ちもアゴラリス王国だったオムニブスは父、母、兄、オムニブスの四人家族だった。

 母は専業主婦で父は腕の良い科学者だった。父はその時の王からの信頼も厚く、仲間にも信頼されていた。なんせオムニブスの父はアゴラリス王国の防御システムの開発者なのだから。

 オムニブスの父が発明した防御システムは画期的だった。システムを起動させると王国を包むドームを展開させて、ドームの外側から二十メートル以内にいる者を三次元空間で捉えて爆ぜさせるというものだった。ドームの展開は他の一部の研究者も考えていたが、三次元空間で捉えるということまでは考えていなかった。

 三次元空間を利用するのは不可能と考えられていた。だがオムニブスの父は緻密な計算式と精密な手さばきによって実現させた。

 オムニブスの父―――ノン=リベラティオは防御システムの開発によって民と王からの信頼も厚くなった。オムニブスもノンが大好きだった。

 ノンが家に帰って来るとオムニブスは一番に迎えに行った。


「おかえりおとーさ!!今日も話聞かせて!」


 ノンは首を横には振らずに笑顔でわかったと言ってくれた。

 毎日違う話。失敗であったり成功であったり、どちらとも言えなかったり。失敗話だとオムニブスは笑い、成功話だと目を輝かせて聞いていた。

 だが失敗話でオムニブスが笑った後、ノンは必ずオムニブスに優しく言っていた。


「失敗で笑うことは悪いことじゃない。失敗を笑われて救われる人も中にはいるからな。だが失敗を嘲笑うのはやめたほうが良い。そこからの成長を諦めてしまうからな」


 小さい頃のオムニブスはこの言葉を軽く返事をして聞き流していた。意味もよくわかっていなかったから。

 そこから夕飯ができてみんなで食べる。というのが日常だった。だがオムニブスが十一歳の頃、ノンは帰らぬ人になった。理由は兄だった。

 オムニブスの兄、ミイ=リベラティオはオムニブスとは違い、ノンの話に対して興味を示さなかった。なんなら癪に障るとまで思っていた。

 ミイは仕事帰りのノンに裏で教えてもらった魔法を放った。ノンに直撃した。

 ノンは何が起こったかわからなかった。幸い傷薬はあったから命に別状はなかったがノンの心には治らない傷ができてしまった。

 そこからはオムニブスはノンが使った傷薬が気になってしまった。そして毎日のように聞いた。


「親父、あの傷薬どうして親父を直せたの?どうしたらあそこまですごいことができるの?」


 だがノンはどこかをぼーっと見つめてかすかに


「なんでもない・・・なんでもないさ・・・」


 と言うだけだった。

 そして数日後にノンは帰らぬ人になってしまった。オムニブスは泣いた。母よりも泣いた。兄は葬式にも墓参りにもこなかった。家にも姿を見せなかった。

 ノンが帰らぬ人になってから王国の防御システムは怒った王により壊された。

 そして一年後オムニブスは王国でミイに会った。最後に見た時から随分と姿も声も変わっていた。


「ん・・・オムニブスか。久しぶりだな。元気か?俺は元気だ。あの科学ジジイがいなくなって清々したんでな」


 本音をけらけらと笑いながら淡々と話すミイにオムニブスは怒りが収まらなかった。

 怒りで視界が真っ黒になったその時能力は発現した。


「・・・・・・・人体錬金(ホムンクルス)・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!」


 まだ子供だったこともありO.L.は一体だけだった。がミイを倒すのは簡単だった。

 怒りによって我を忘れたオムニブスのO.L.は少し強かった。

 ミイは攻撃魔法を何度も発動されたがO.L.に全て避けられて、やられた。

 ミイの残骸は跡形もなく殴られていた。


 そこからオムニブスはどうしてもノンの使った傷薬を作りたくなり、科学をはじめた。

 科学をはじめて二週間。傷薬が完成した。オムニブスはこれを希望と考え始めた。

 そこからジェニスに科学の才能を認められ、仕事につき始めた。仕事をはじめたときから母はもういなかった。

 仕事の中で様々な薬ができたが、どれも予想とは少し違う物でオムニブスは考えた。科学で作る薬は確実性にかけるのだと。確実性にかけるなら予想なんていらないじゃないかと。



 オムニブスはポケットにしまっておいた錠剤を飲んだ。


(これは四十%の確率で新たな能力を手に入れるが六十%の確率で命を落とす賭けの薬―――『命の天秤』!!どうせすぐにこいつにやられるなら(これ)を使ったほうがマシだ・・・!)


 錠剤が飲み込めた時、オムニブスはドクンと大きな心臓の鼓動を感じた。六割を引いたか・・・と思った。

 なにかを察した水色の男は大きな氷でオムニブスを囲い、凍らせた。

 水色の男は大したやつでもなかったが面白いやつだったなと思い、その場から立ち去ろうとした。

 その時だった。

 氷がバギィィィィンと音を立てて壊れた。何事かと思い水色の男は後ろを見る。さっき凍らせたやつが氷を壊して出てきている。男はどうやったのか理解できなかった。

 オムニブスは白い息を吐き、少し口角を上げた。

 水色の男はまたオムニブスに氷漬けにしようと手を動かした。だがオムニブスの少し前で氷は出現した。よく見るとオムニブスの前には水がある。『水』という言い方はあまりふさわしくないかもしれないが水がある。少し大きめの水槽にいれるくらいの量の水がある。オムニブスが手を動かすと水も一緒に動く。

 男は元々こいつにある能力だと考えることにした。男はオムニブスが気になった。


「・・・お前・・・名は・・・?」


 男は冷たい、ハスキーボイスで問いた。


「本当は名乗りたくないが・・・オムニブス=リベラティオというものだ。一度は聞いたことがあると思うね」


 オムニブスはいつもの口調で男に名を言った。

 それを聞き、男は


「オムニブス・・・科学者のか。俺はドクトゥス。気に入った奴には自己紹介をするんだ・・・俺・・・」


 と言った。ドクトゥスは自身の周りに小さな氷の(つぶて)のようなもの数個と冷気が回っていた。

 オムニブスは自身の前に波のようなものを発生させ、戦闘態勢にはいる。

 だが新しい能力を手に入れても魔力量が増えるわけではない。つまりオムニブスが先程出したO.L.分の魔力は回復しない。


 ドクトゥスがオムニブスに向かって走り出す。オムニブスは少し遅れてドクトゥスに向かって走り出す。

 オムニブスは自身の下に波を生成し、その波にのりウェクプルやノヴェンリーと同じ位の速さで移動した。

 ドクトゥスは走りながら左右の手を少し広げ、氷柱のようなものをオムニブスの方に鋭い先端が向くように召喚し、発射した。

 オムニブスは手の下にあたる地面からも波を生成し、向かってくる氷柱を波で防御した。その波は普通の波とは違い、すごく柔軟性があるゴムのようだった。威力を無くさせ、氷柱を地面に落とす。

 氷柱を地面に落としたと同時にオムニブスとドクトゥスは互いの攻撃がしっかりと当てられる範囲に入っていた。

 ドクトゥスはなにかを察し自身を氷のドームで覆い、防御体勢に入った。

 オムニブスはドクトゥスの真下、右斜め下、左斜め下、右横、左横、右斜め上、左斜め上、真上から水圧カッターのような勢いで滝のように太いものを噴射し、ドクトゥスに当てようとした。が、もう彼は防御していた。

 氷とは思えない硬度の氷とものすごい勢いの水がぶつかりギィィィと音を立てながら水しぶきが飛ぶ。

 五秒程それが続き、水が止むとドクトゥスは防御をやめて手のひらから密かに作り出していた小さな氷の礫をオムニブスに発射する。オムニブスは即座に水のバリアを展開し、礫を防いだ。

 水のバリアが礫とぶつかり、ピシャッとかなりの量の水しぶきが飛ぶ。礫はその場にコロンと落ち、オムニブスとドクトゥスは互いに少し距離をとった。

 そして今度は同時に走り出し、互いに致命傷となる攻撃をしようとした。

 オムニブスは極太水圧カッターの時や先程の水バリアで飛んだ水しぶきをその場に固定させ、密度を増幅させてジャッとしぶき一つ一つからトゲトゲをだした。

 ドクトゥスはまた氷柱を召喚し、氷柱の速度を上げるため手元でためた進力を一気に解放させ、ものすごい速度でオムニブスに向かって氷柱は飛んでいった。

 ドクトゥスは水しぶきのトゲトゲをうまく避けて、オムニブスは完全には避けきれず氷柱が右上半身を貫いた。だが不思議なことにオムニブスは右上半身が無くなったのにも関わらず血も出さず、先程と同じ表情でドクトゥスに波を当てようとした。もちろんドクトゥスはいとも容易くそれを避けるが、オムニブスはなにも変化なし。

 試しに何十個もの氷柱をオムニブスに当てようとした。結果的には波でガードはしたが三個の氷柱がオムニブスを貫いた。

 貫かれたオムニブスは波の壁が消えると同時に消滅した。ドクトゥスは少し察してはいたが、焦った。本物が消えた。

 四方八方に氷柱を発射し、発射された氷柱は遠くの岩やらなんやらに当たって砕けた。そして結局自分の周りを凍らせた。

 氷河期の再来、とでもいえる景色だ。マンモスやペンギンがいてもおかしくはない。

 それでも本体は見つからない。

 すると突然ドクトゥスは何者かに口を押さえられた。

 そしてなにかを入れられた。水だ。圧縮された水の球だ。

 口内でそれを止めようとするも無駄だった。

 少し抵抗はあったがドクトゥスは水の球がいるであろう場所を手当たり次第凍らせてはトゲのようなものを出し凍らせてはトゲのようなものを出し・・・を繰り返した。


 そしてなにかやばい、とドクトゥスが思った時目の前にオムニブスが立っていた。

 やっと現れたかと思いオムニブスを凍らそうとした瞬間、ドクトゥスの腹から無数の棘のようなものが飛び出た。しかも植物についているような可愛いものではなく、太い。そしてすごく鋭い。

 棘が出てきた時ドクトゥスは状況理解できなかった。唯一このドクトゥスというクールイケメンが思ったことは


『痛い』


 だった。

 ドクトゥスはそのまま倒れ、息を引き取った。


 オムニブスがドクトゥスにしたことは単純なことだ。

 水のバリアによって飛んだかなりの量の水しぶきの後ろでオムニブスはO.L.を召喚し、そのO.L.の表面を水にすることで自分の擬態をさせた。また、そのO.L.が放った水や波を使った技はそのO.L.自身が放ったものであり、オムニブスは放っていない。

 その肝心のオムニブスはO.L.を召喚すると同時に自身を水で覆い、周囲に擬態した。ドクトゥスの攻撃も全て避けきった。


 ドクトゥスが体の中に入れてしまった水の球はオムニブスが入れたもので圧縮された、伸縮自由な水だ。だから一番良いところで臓器を破壊しつつ、体を突き破れたのだ。


 オムニブスは自身のメガネをクイッと上げ、軽く息をつく。

 そして笑顔で言う。


「まだ科学は確率だな。父さん」

ノヴェンリー、ウェクプル、オムニブスの各団長との戦いの流れがほとんどおなじになってしまいました・・・まだ自分未熟なので・・・いつか元の力だけで勝たせるようにしたいなぁ、なんて。

あと、今回少し短いです。前回が長かったので、その分といいますか。

オムニブスの勝たせ方に異論はあると思いますが、どうしても水使わせたかったんです。お許しを。

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