洗濯
三題噺もどき―よんひゃくさんじゅういち。
温かな気配が少しずつ近づいている。
外の桜はようやく咲こうかと準備を始め、花壇には色とりどりの花が並んでいる。
窓を開けると、少しヒヤリとした風が入り込んでくるが、それを覆うような温かさが確かにあった。春の日差しは柔くていい。
三月ももう終わりに差し掛かる今日この頃。
「……」
カーテンをすべて広げ、視界のすっきりした中で。
思いきり深呼吸をしてみたり、背を伸ばしてみたり。
鼻がむずむずとするが、花粉症にでもなったんだろうか…いや、気のせいだな。
「……ふぅ」
いつも以上に気分がいい。
昨日一昨日いいこと尽くし立ったからなぁ。
今日は天気もいいし。
「……」
何でも気分に左右される私は。
こういう気分のいい時に、色々とやっておかなくてはいけない。
いつまた落ち込むか分からないからな……まぁ、一時はなさそうだけど。
「……さて」
窓を開け放ち、風を入れ込み、部屋の空気を入れ替える。
今朝はすっきり起きて、朝食もそれなりにしっかり食べて、ほんの少し休憩をして。
買い物をしないといけないのだけど……その前に。
「……」
窓から離れ、風呂場に向かう。
そろそろ終わると思うんだけど……あと何分ぐらいだろうか。
たいした量はないはずなのだが、それなりに時間がかかるよなぁ。
「……」
風呂場に設置された洗濯機の前に立つ。
電子表示された残りの時間を見てみる。
あ―
ピーピーピー
丁度終わったらしい。
タイミングがいいことで何より。
さっさと干してしまおう。
「……」
洗濯機の蓋を開くと、ふわりと洗剤の匂いが鼻をつく。
柔軟剤は匂いが強いので入れていないのだが、洗剤でも香りが強いものがあるよなぁ。
粉のやつとか、匂いのしないものもあるんだろうけど……。
その辺はあまり使い慣れていないと言うか、無臭も無臭で落ち着かない。
「……」
から、こうして液体洗剤でシャボンの香りとかそういう感じのを使っているんだけど。
それでも、これだけ匂いがするんだから不思議でならない。
これに柔軟剤とか入れたら鼻がもげそうになるかもしれない。
幼い頃、匂いの強いものが好きだった身内のせいで、気分が悪くなったこともあるので、冗談とも言えない……気がする。
「……」
洗濯機の中から、服を取り出し、ハンガーにかけていく。
この辺りのものは外には干さない。
そのために室内乾燥のついた部屋を選んだのだ。
「……」
ピンチハンガーを広げ、タオルや下着類もかけていく。
そんなに量はないので、大した大きさのものではない。
それでも長く使っているから、そろそろ変え時だろうか……何個か取れてるしなぁ。
「……」
風呂場にいれ、乾燥のボタンを押す。
最大の時間で回せるようにセットして、その場を離れる。
洗濯はこれでおわり。
あとは。
「……」
天気もいいし、掛け布団も干してしまおう。
これは外に干す。
その辺の違いというか、使い分けはよくわからないが、なんとなくで行ってる。
家ではそうだったからなぁ……程度の感じだ。
「……」
寝室から掛け布団を引きずり出し、ベランダへと持っていく。
二枚しかないのになんでこんなに重く感じるんだろうなあ。
マットレスは動かすのが面倒なので、寝室の窓を開けておけばいいだろう。
「……ぉも」
窓を開け、ベランダに立つ。
その手すりに毛布をひっかけ、布団ばさみで落ちないようにとめておく。
それを横に二枚ならべる。
「……」
これだけ晴れて居れば、良い感じに仕上がりそうだ。
干したての布団はいいにおいがするよなぁ……何かの匂いと言われてはいるみたいだが。
いいにおいには変わりないし、それでいいのだ。……いいのだ。
「……」
ベランダに立つと、風を一層強く感じる。
風に乗って、どこからかいいにおいがしてきた。
何の匂いだろう……お腹空いてきたな。
「……よし」
洗濯も干したし、掛け布団も干したし。
軽く運動がてら、カフェにでも行ってみよう。
……そういえば、妹に勧められたあそこにまだ行っていなかった。
「……」
そうと決まれば、善は急げ。
ではないけど。
今日もいい一日になりそうだ。
お題:洗剤・花壇・むずむず