長年の夢を叶えた時のお話
ひだまりのねこ様が主催されている「集まれエッセイ企画」に参加させていただきました。
私は昔からはっきりとした将来なりたい夢と言うものは持ってはおりませんでした。
ある時は、ケーキ屋。(女の子がなりたい定番職業ですね)
ある時は、モデル。(姿勢を改善出来ないため無理でした)
ある時は、マジシャン。(不器用で即諦めました)
ある時は、薬剤師。(そこまでの頭がなく断念しました)
まあこんな具合で、その時その時でなりたいものが異なりました。
しかし、はっきりした将来なりたい夢と言うのは存在しませんでしたが、将来叶えたい夢と言うのははっきり持っておりました。
その夢というのは"白衣を着て実験したい"と言うもの。
実は、私は小学生3年生の時から理科が好きで、その時から白衣を着て実験すると言うのが大変憧れでした。
その姿は、とてもカッコよく思え、その時から私も将来こんなことをしてみたいと感じていました。
そのため、高校生の時、化学の先生が白衣を着てフラスコや試験管を振る姿は私にとって大変羨ましいものでした。
私も白衣を着て実験出来たら良いのにと切実に思っていました。
そんな私は、理系科目が好きで、また特に化学や生物が好きなため、そちらを専門とする学部に受験し、入学をしました。(現在、物理や第三外国語も勉強させられていますが)
私は、大学に入ったら白衣を着て実験が出来ると入学が決まった時から少し浮かれていたものでした。
そして入学して後期に入り、少し前についにその夢が叶う時が来ました。
その実験と言うのは、とても大雑把に言うと、色の変化や分離の様子を観察しようとする基礎実験。
30人程度を2人が1組となって行うと言うもの。
私は約3時間の予習をかけてこの実験を楽しみにしておりました。(友人達は、3時間もかかって大変だったと嘆いておりましたが)
教室に入ると、准教授1人とアシスタントの方が2人いらっしゃいました。
テーブルの上には、ガスバーナーや試験管、様々な薬品など私の意欲をそそるものばかりが用意されていました。
そろそろ実験が始まるのだと休み時間の間ずっとソワソワしておりました。
そして時間が来て、講義がスタート。
まずは、白衣を着るところから始まります。
白衣を着た感想は、やっぱりカッコいいなと言うものでした。
憧れの白衣です。
興奮しないわけがありませんでした。
実は白衣自体は、一つ前の講義の顕微鏡での観察の際に着たのですが、この時は標本も作るわけではなく、ただプレパラート標本を観察して、スケッチするだけなため着る意味を見出だせなかったことと、その日とても暑かったので着たくなかったの言う理由で、この時もカッコいいと興奮はしていましたが、テンションは10倍以上高かったです。
状況が違うだけで、同じ動作をしてもここまで気分が変わってくるのだと思いました。
そして次は保護眼鏡を装着します。
着けてみての感想は、眼鏡の上から保護眼鏡をかけたため、少し変な感覚。
決して気持ちが悪いとかそう言うのではないのですが、慣れないことあってやっぱり違和感を覚えました。
かと言って、裸眼だと隣にいる子の顔のピントが合わないほどの視力のため、眼鏡を外すことは残念ながら出来ません。(前に視力検査をした時にランドルト環が上から2つ目がかろうじて見えたことから多分視力は0.2ぐらいと推定されます。おまけにかなりの乱視です。コンタクトは怖いので無理です。レーシックは論外です)
多分見た目は二重眼鏡で不格好だと思われますが(鏡で確認していないためよく分からないです)、私は気にしないのでノー・プロブレムです。
そうやって私はテンションを高めまっていたのですが、ペアは全くテンションが変わることはなく、寒暖差が激しい気がしました。(多分この中で1番テンションが高かったのは私です)
こうして、身だしなみの準備も出来たところでようやく実験開始。
准教授からは事故は起こさないように気をつけろよと言われスタートしました。
行う実験は主に3つありました。
まず、1つ目はそれぞれの試薬を入れて色の反応を確認すると言うもの。
1滴1滴落としていく動作は、緊張感もありながらも変化していく様子を見るのはとても楽しいものでした。
そこでは無事実験は成功しました。
2つ目は、沈殿の生成を確認すると言うもの。
これも簡単な実験なので普通は成功するのですが、ここでなんと問題が発生していました。
実は、私が入れる試薬を間違えてしまったのです。
ここでは硝酸銀(AgNO₃)を入れなければならないのに、硝酸(HNO₃)を入れてしまったのです。
弁解をすると、試験管にそれぞれAgNO₃、HNO₃と書かれたマスキングテープが張られていたのですが、今回使った試験管は小さい試験管であるため、使う時ちょうどどちらもNO₃の文字しか見えませんでした。
また、私がそれぞれの位置を勘違いしていたため、ろくに確認もせず、入れてしまったと言うものでした。
そのため、本来なら塩酸(HCl)と反応して、白色の沈殿である塩化銀(AgCl)が出来るはずですが、銀(Ag)が存在しないため、無色で変わらなかったのです。
アシスタントの方にどうすれば良いか伺うと、取り敢えず硝酸銀を入れてと指示されました。
アシスタントの方曰く、次に使う試薬の使う量が他のペアよりは増えると思うけど、最終結果は変わらないはずだから大丈夫だろうと言うことでした。
その言葉を聞いた私は少し安堵しました。
そして、その続きとして、分離の仕方を確認すると言うものを行ったのですが、まさかここでも失敗が起きたのです。
本来ならば、上層が綺麗な水色、下層が透明となるはずが、私のところは上層がどす黒い青色、下層が桃色と言う結果に。
准教授曰く、コバルト(Co)の入れ過ぎと言うことでした。
どうやら、入れ過ぎたことにより加えた試薬とギリギリまで反応して、上層はどす黒い青色になり、また反応しきれなかったコバルトが下層に残って、コバルト本来の色である桃色になったと言うのです。
これはペアがコバルトを入れ過ぎたことが原因でした。
この動作自体は、私が失敗した動作よりも前のことで、私達は騒ぐ前から失敗していたと言うことです。
お互いに足を引っ張る結果となってしまいました。
ラストは、沈殿と色の変化を確認すると言うもの。
こちらは、お互い慎重に行ったため、無事成功することが出来ました。
こうして全ての実験が終了。
准教授は「白衣が燃えるなどの事故が起こることがなく無事に終わることが出来て何よりです」と締めくくって講義は終わりました。
どうやら、他の班ではもう少しでガスバーナーの火が白衣に燃え移りそうになったところがあったようですが。(怪我したら大変ですし、何より火事が起こらなくて良かったです。白衣もまあまあ高いですしね)
また、私のペアは塩酸を落とした液に少し指が当たったらしく、「当たったけど洗った方が良いかな」とのほほんと尋ねてきたため、私はさっさと洗えと怒りながら洗わせました。(こんな風には怒ってはいませんけどね)
どうして洗わないと言う選択肢があるのと思いましたが、まあ怪我もしてなかったので何よりでした。
ちょっとだけ忠告しますと、塩酸などの試薬に少しでも皮膚に当たった場合は問答無用で洗ってください。
私の友人の話によると、高校の実験の際にテーブルに落ちていた1滴の液に指が当たったらしいのですが、水滴だと思って何もしなかったそうです。
すると、数分後、ジワジワと指がヒリヒリしてきたらしく、あれは希塩酸だったのだと気づき、すぐさま洗ったらしいです。
そのお陰で、暫くの間はヒリヒリしたものの、友人は痕も残ることもなかったと言うことでした。
しかし、たった塩酸を薄めた希塩酸の1滴でさえもヒリヒリするほどの痛みを伴うことを知り、改めて恐ろしさを認識しました。
そのため、実験などで塩酸などの試薬を扱う場合は十分ご注意ください。
話は戻しますが、取り敢えず私は"白衣を着て実験する"と言う夢を約10年をかけて実現しました。
正直に申しますと、全部成功したかったのですけどね。
それでも、実験自体は楽しかったですし、失敗したことによって、他のペアではしない失敗した原因の考察もすることができ、ある意味ラッキーだったのかもしれません。(ペアがどう感じたのかは知りません)
次回からはちゃんと確認してからやろうと戒めも出来ましたし、まだ初めで失敗して良かったのかもと思いました。
准教授達からも怒られることもありませんでしたしね。
10年思い続けて叶った夢と言うのは、やはり喜びの大きさが違いますね。
本当に嬉しかったです。
これから学年が上がるにつれてもっと実験が増えるので、大変楽しみです。
(コースによっては、1週間期限のレポートが毎週3つほどと大変になるらしいのですけどね。また、英語の論文も読まなければならないとか…………とほほ)
次の夢はまだ決まっていませんが、また何か夢を見つけてそれに向かって叶えられると良いなと思いました。
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