明日も生きていくために
[序章 朝]
「いつもご協力ありがとうございます!!」
コンビニの募金箱にお釣の10円玉をいれた時、店員さんにそう声をかけられた。お礼を大声で言われるのは少し恥ずかしいと思いながら、軽く会釈をする。ちなみに駅の中にある、このコンビニで毎日昼食を買いそのお釣を募金するのが日課になっている。そのため店員さんは「いつも」をつけたのだろうと勝手に解釈した。もしかしたらマニュアルかもしれないが。ただいつもこの時間にいる店員さんなので恐らく前者であると祈りたい。
改札口を出て、階段を駆け降りる。ロータリに植えられている、桜を見て今年は散ってしまうのが早いと感じた。人の波に逆らい、オフィス街とは真逆の方向に歩きだす。大通りを少し進むと、滑り台と鉄棒のみの簡易的な公園がある。公園の横に細い道があり、その通りを左に曲がると小さなアパートにたどり着く。このアパートの1階、右奥の部屋103号室の鍵を開ける。小さいながらここが私の職場である。
職場といっても社員は私ひとりだ。いや職場という言い方は正しくないかもしれない。正確には会社としての届け出はしていないのだから。私はこの一室でカウンセラーをしている。何の資格も持っていないので偽物の[なんちゃってカウンセラー]だ。今日はどのような患者が来るのだろうかと[先生]としての顔をつくりつつ部屋の扉をあけた。