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六話

ダンジョン、とはこの世界においてとても重要な要素である、魔力に満ちた空間であり防御機構としてモンスターが湧き、そのモンスターの死骸や飽和した魔力からアイテムが生まれるとされている。ダンジョンの中核にはボスと名付けられたダンジョンを構成するコアをもったモンスターがいて、これを倒すことでダンジョンが安全なスポットと化する、こうしたダンジョンにモンスターやアイテムを配置したのが学生を始めとした初心者向けの物として用意されている。


「というわけで、一人来ているわけだが……」


 ここは初心者用ダンジョンというわけではなく特典で用意された経験値稼ぎ用として用意された場所で一般には知られていないらしくそれとなく学園の資料を漁ってみたが出てこなかったので間違いないだろう。

ここに来た一つ目的は勿論経験値稼ぎもあるのだが、もう一つある。

主人公とヒロインを除けば一部のキャラにしかできない隠しスキルツリー、それが変幻の術だ。ドレスともいわれるそれは全体のステータスにバフがかかるだけでなく専用のスキルを取得することができ、これを取得できるキャラを当然ながらパーティーに優先していれることととなる。俺はといえばその術を本来なら覚えられない、本来ならだ。


「宵闇の裂け目とはよくいったもんだ……こんなところにあるなんて普通は気づかないよな」


 真っ暗で明かり一つないダンジョンの中をランタンにつけた火を片手に歩いていると行き止まりにたどり着いた。明かりがなければそれこそ只の岩の壁にしか見えないがそれは違う。


「で、ここにいるはずだよな、よっこいせっと……」


 壁の中央部分……よく見れば窪みがありそこにクラヤミチェンジャーを巻いた左腕の手のひらを押し付けるとゴゴゴ……という地鳴りと共に壁が左右に開き暗がりの中に空洞が発生した。ここにいるとある隠しボスを倒すことが今回の目的だ。


「グォォォオ…グォォォオ……」


 扉の先にはドクロの顔と明らかに経年劣化している鎧兜を装備した人型のモンスターが突っ立っていた。これこそが、隠しボスにカテゴリーされた”禍津人(マガツビト)”の一体だ。こいつらはレアエネミーで普通に遭遇するモンスターよりもレベルが高くかつランダムに出現することから序盤に遭遇しないようにするのも攻略のコツの一つだった。しかしその中でも確定で出現するタイプが居る、それがこいつ“スケルトンナイト”だ。

隠しアイテムである黒の宝珠を持ちクラヤミチェンジャーと組み合わせることでユニークスキルを入手することができ、これは一部の層には異様な程人気がある、理由はわかるし主人公にはもっと強いスキルがある故必ずしも入手する必要はないが……俺という存在がひとつ上のレベルとなり目的を果たす為には確実に必要なのだ。


「オ、オオォォ……!」


「さあて、弱点もその通りであってくれよ!」


 レアエネミーは基本的に強く簡単には倒せないが、こいつには弱点がある。勿論、対策は必要だが。俺は腕につけられたクラヤミチェンジャーに指を押し込むと黒い風が竜巻のように発生し身を包むと、学生服を包み込むように魔力の粒子がブランク色のピッチリとしたスーツのような形となり最後に顔を覆う。真価を発揮すれば世界観をぶち壊しかねない物の、だが……やはり今は不完全な姿での变化となってしまった。


「だが、この姿でも俺の忍術は通じる!」


 この不完全变化体は本来はありえないが今はこの際よしとする、いわばレベル1程度の俺でも10ぐらいまでの力を一時的に得られるのだから。本来の力からは程遠いがこれも目的の為だ。


「忍法!火炎粉砕撃!」


筋力強化(マッスルアップ)火炎属性付与(ファイアエンチャント)!→ファイアナックル!』


 拳に込めた魔力が炎に変わり、それに答えるようにクラヤミチェンジャーの補助詠唱音声が流れる、これにより本来のステータスよりも高い威力の攻撃を放つことができるのだ……その分消費も激しいが。大きく剣を振りかぶるスケルトンナイトの懐に飛び込み一撃を叩き込んだ。


「ゥ、グオォオオ?!」 


 強烈な一撃によりのけ反るスケルトンナイト、こいつが初期に使える属性である火と雷の属性技が弱点というある意味サービス的な物を備えていているというのを覚えていたのが功を奏した。倒れたところを見計らい数度同じことを繰り返すととうとう倒れて消滅した。


「いよしっ!」


 ゲームでならファンファーレが流れるところだが勿論そんなことはなく粒子状に消滅していくスケルトンナイトの痕にはビー玉ぐらいの大きさのコアがコトンと落ちた。これこそがクラヤミチェンジャーの真価を発揮するために必要なものの一つだ。これにより完全な力を得ることができる、もっともそれに加え経験値を稼ぐ必要もあるが……ステータスを見ることができない以上こればかりは地道にやるしかない。


「このコアで……完全体に」


 半透明のコア、これこそがブラッドコアという変身体……クラヤミの騎士を構成する物質だ。これを入れ替えることで様々な属性を使いこなせるようになるのだが……今は割愛する、まず試験運用だ。


「クラヤミ変化!」


 ピッチリとしたスーツに無機質な何の装飾も無かったその鎧に髑髏を思わせるシルバーの肩足、胸、についていき頭部を縁取るようにフェイス部分の口当てから上も禍々しい顔つきへと変化していくのがわかった。

だが、これでもまだ彼女を救うには足りない。他のコアも入手し多くの属性を身に着けなければならない、これは基本形態にすぎないからだ、それまでは仲間にも知られることなく成長していかなければならない。バレてしまえば多くのトラブルに巻き込まれるだろう、それは主人公たる未来の役目だし俺はあくまで影から忍として助ける立場なのだ、と最近では体に精神が引っ張られているような気がしてきたので気をつけていきたいと思う。


その後俺はいくつか術を試しつつダンジョン内を力試しを兼ねてうろつきいくつかのアイテム回収をして回った。ゲームとは違いステータスは勿論経験値がどのくらいかなんて確認できない為たかがポーションや状態異常解消系のアイテムといえどバカには出来ないからだ。特にスクロールと呼ばれる巻物状の消費アイテム、これに書かれた魔法も中々馬鹿にできないし何より忍者っぽいのて確保しておく。

こうして俺はまた一つ準備を進めた、ルナに憑依している存在との対峙も大事だが今はレイラの信用を得て後に備えることにした。こうして俺はダンジョンをまた1つクリアして見た目だけでも強くなったのであった。

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