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五話

 マギウスジェネレーションの主人公・明日野未来あすの みらいは自称どこにでもいる普通の高校生である、彼の実家は古武術の道場をしていて剣術を収めていたり父親が考古学者でこの世界における希少金属であるオリハルコンで出来た宝玉のついた手甲をつけているがそれでも彼はありふれていると口にしてやまない。人は誰しも自分が過ごしてきた環境を基準に捉えるからたとえ人とは違ったものでもそうとは捉えられないということがある、彼がそういうタイプだ。彼は他にも古武術を嗜む割には細いしなんなら童顔で女顔だ、劇中では女装させられたりバットエンドやファンディスクでTSして掘られたりもしていた。それはさておき、その友人キャラである御仏真也に憑依してしまった俺としてはただその立場に甘んじるつもりはもちろん無いがそれはそれとして今という瞬間に知識の上だけでなく実際に友人となっておいて損はない。彼自体はいい人、という評価が一番しっくりくる。ルートによっては豹変するが……


「君はなんか随分変わった格好をしてるね、ええと……」


「お、わかるか?イカスだろ、忍者の恰好さ。そして俺の名前は御仏真也みほとけ しんやだ、お前は?」


「僕は明日野未来、こっちは幼馴染の炎堂茜」


「ちょっと未来、何を勝手に!もう、いいわ。この子の言ったとおりよ、それから邪推されるような関係じゃないからそこは誤解しないでよねっ」


 クラスでの自己紹介であ行である二人は真っ先に終わるということもあり予め顔を確認する余裕があったなと内心したり顔をする俺。本編ではむしろもっと失礼な事を口にしてふた昔は前のラノベのようにツッコミで魔法を喰らっていたりしたがそれは流石に勘弁願いたいので軽くジャブをする程度で留めることにした。


「いやぁわりぃわりぃ、仲が良さそうだと思ったが幼馴染だったとはな。それなら納得だ」


「御仏君は忍者ってそういう家系なの?」


「だったらよかったんだけどな、勿論忍者は目指してるが当面はスカウト志望ってところだな」


「なあんだ、唯のコスプレなんじゃない全く。ここの校則が緩いとはいってもせめてそのマフラーは外したらどうなのよ」


 あからさまに冷めた反応をする茜。ちなみにこの世界においても忍者は歴史上存在していたが現在はいないので一部を除けばコスプレである。


「まあそういうなよ、これだってマジックアイテムなんだぜ?」  


 霊験あらたかなとまではいかないが初期装備としてつけているこの襟巻きは僅かだがステータス上昇に貢献しているし、共通装備として扱われている為か何種類か存在し終盤まで使うことができるようになっているのだ。もっともグラフィック上で表示されるのは一部であったので本当につけたら違和感のあるキャラもいるだろうが……


「それに、目立つっていうならあっちを見てみろよ」


 くいっと親指で示した方向には同じ制服姿でありながら異彩を放つ少女がいた。金色の瞳にインテークのような髪型、レイラ・フォン・ヴァッフェシュタインは代々軍人や議員を多く輩出しているヴァッフェシュタイン家の長女で本編に置いては主人公たちの前に立ち塞がるライバルであり、その他にも多くのトラブルを抱えているが文武両道の才女であることは確かだ。血統に恵まれた容姿と才能、故に人を惹き付ける。それが彼女を傲慢にさせているはず……なのだが


「あら?トゲトゲ頭にヘンテコな格好……貴方この間の?」


「よぉ!いやぁ驚いたな、ヴァッフェンシュタインのお嬢だったなんて知らなかったからよ」


「そう、まあいいわ。じゃあせいぜいわきまえなさいよね」


 精一杯の愛想もつっけんどんな態度で返されてしまった。周りにはすでに取り巻きらしき連中がいるし猫をかぶっているのだろうか?少なくともこの間カフェであった時は親しみを感じられたのに。


「その、また後。カフェに来たら話があるから後で来なさいよ」


 挨拶程度のつもりだったし未来達の様子も気になるし、等と背中を向けかけたら耳元で囁かれた。何かあるようだが嫌われているわけでもないらしい、はてこんなイベントはあったろうか?本来は主人公にイチャモンをつけて決闘をして一騒動起きたのだが……

 


 閑話休題、クラス発表、自己紹介等初日のオリエンテーションを終え放課後俺は指定された場所−−−カフェコンフォールに来ていた。


「呼び出して悪かったわね、とりあえず座んなさい」


「それじゃ失礼して、と……今日はバイトしてないんだな」


「そーよ、また暫くしたら入るけどね」


  以前見たウェイトレスの格好ではなくセーラー服−−−胸元が強調されるようなデザインに目がついてしまう。乳袋もどうやら意図的に作ろうとしなくてもそうなるようだしここは現実とは違う世界なのだなと妙なところで実感してしまう。などと考えながら胸元に視線を向けている事にはっとなり顔を上げるとそこには恐ろしい顔をしたレイラがいた。


「どこ見てるのよ」


「こりゃ失敬。で、ええと」

 

「はぁ、もう……あんた、教習用ダンジョンのパーティーはもう決まってる?」


 学生向けに安全が確認されたダンジョンに罠やモンスターを放ちそこで実体験をするという授業の一環である。もっともダンジョンは生き物のようなものなので定期的に教師や選別された生徒が巡回にいって不適格に成長したモンスター等を狩っているらしい。あくまで設定の範囲だが現実となった今では命の危機に関わる。


「昨日の今日だからなぁ、まだ決まってないぜ。お嬢は選ぶのに困らない立場だと思ってたが」


 彼女は原作では取り巻きを連れて主人公達の前に立ちふさがった。名有りよりもモブと行動を共にしている事が多かったがそこらのネームドよりも強く地味に厄介だった。周回プレイで引き継いだステータスの前では無力だったが。


「あんた、ただの平民かと思ったら意外にコネもあるのね。学院長からね、あんたともうひとりの面倒を少しの間見てくれって頼まれたのよ」


「へ?」


 思わぬ内容に口をぽかんと開けてしまう俺、おそらく旗から見たらさぞ滑稽な表情をしているだろう。


「もういいわよ、入ってきなさい」


「御仏様!」


 パチン、とレイラが指を鳴らすと様子を伺っていたのかどこからともなく飛び出してきたルナに抱きつかれた。あまりの事態に頭の処理が追いつかない、この二人の接点はほぼない。ましてやこんなに早く学院長が仲介して組むだなんてイベントは当然ない。


「ま、あんたたちは知り合いみたいだし?受けない理由はないわよね」


 抱きつかれてあたふたとしている俺をとても面白くなさそうな表情で見てくるレイラ。


「参ったな……でもレイラはいいのかよ?そっちも色々あるんじゃないのか」


「まぁ、ヴァッフェシュタイン様もしかしてご都合が?お義母様ったらまた無理難題を……」


 ほんの社交辞令のつもりがルナの方が反応してしまい不安げにレイラの顔を見つめた。


「違うわよ、私にも利益はあるわ。私としてもあの学院長と縁を持っておくのは家の為にもなるし……だからそんな心配そうな顔をしなくてもいいの」


 「それで、あの御仏様は……賛成してくださいます?」


 気がつくと二人の視線がこちらに集中していた、かたや目を潤ませ上目遣い、かたやここで断ったらわかっているんでしょうねという意を含んだにらみつけるな目つき、美少女二人に囲まれるのはやぶさかではないがこういうのは本来の主人公である未来の役目ではないのか……?いや、ここはもはや良く似た世界の現実だ、そんな考えは二人に対しても失礼だ。


「ここで反対したら俺が悪者みたいじゃないか、当然受けるに決まってるだろ」


「素直じゃないわね、まぁいいわ。言っておくけど組む以上は相応の働きしても裏生んだから覚悟しておきなさい。そっちの……」


「あ、失礼しました。私はルナ、ルナ・リッター・ズィズィーエと申します。普段は侍女見習いをしていますが生徒としては槍を使います」


「言うまでもないだろうけど私はレイラ・フォン・ヴァッフェシュタイン、武器はうちに伝わる大鎌を使うわ。クラスは前衛の雷魔法使いよ」


 パーティー的に前衛のみというなんとも偏った編成だ、回復魔法が貴重というわけではなく傾向として神職向きな術が多いせいかもしれない、作中のヒロインにもシスター的な子がいたのも事実だ。


「俺は見ての通り忍者だ。でだ、お嬢よ。初心者用ダンジョンに潜るにしても準備はできてるのか?」


「当然でしょ?任せておきなさい、あんた達は自分たちの準備を済ませておきなさい。いくら練習用ダンジョンとはいえ無様な様は許さないわよ?」


 お嬢の自信がどこから湧いてくるのかは謎だがここはゲームではない、相応の装備や準備をしてくるだろうと期待して俺とルナはそれぞれ売店等で装備を揃えようと相談して用意することになるのであった。

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