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二話

 はてさて、俺こと御仏真也であることを認識して数日。この世界がそもそも本当にゲームと同じ世界であるかという調査をしていた。

マギウスジェネレーション、このゲームは現代風ファンタジーな世界観だ。故に魔法と科学が存在しながらダンジョンはあるしモンスターはいても街の中に入ればスマホはあるし車は走っているしというある意味で矛盾しているところはある。

 そして俺が住むこの日本によく似た秋津州皇国だが、魔法研究における最先端を往きそこに立てられた学園都市には世界各地から学生を始めとして人材が集まってくる。

主人公達はそこで三年間を過ごし恋と魔法とエロとダンジョンとその他諸々……というわけである。


 この世界において労働者としての意味とは違う所謂ゲーム的な意味での職業が存在する、主人公が持つことになる勇者は勿論のこと、主な物としては主に剣を使うナイト、シーフ、ウィザード、ヒーラー、徒手空拳で戦うウォーリアがあり主人公はこの中から選ぶ事が出来る、このクラスが攻略の難易度に大きく左右するといっていい。取得できるスキルも変わってくるし育成方針だって当然変わる。上位クラスの一つである勇者はオンリーワンなものでチートといってもいいので此処では割愛する。

 

 問題は俺のクラスだ。シーフというクラスはダンジョンにおける水先案内人のようなものだ。道中の罠の解除から宝箱の開封、モンスターの探知まであらゆる事が出来る、火力という意味では他のクラスに劣るが少なくとも一周目は終盤まで通してお世話になる。ただし、シーフのヒロインは普通にいるしなんだったら主人公が選んだ方が優秀……という当たり前といえば当たり前だがなんとも悲しい現実が待っているのだ。

 この日本によく似た皇国では遠い昔シーフの事を忍者と呼んでいたという伝説もある程度には認識されているが定かではない。とにかく彼は、いや俺は忍者に憧れシーフという職を目指しむしろ現在の忍者になりきるというちょっと痛いところはあるが友情に厚い良い奴、というポジションだ。ともあれ、今の俺は学生寮で暮らすことが決まっているということでそれまでは近くのホテルで宿をとっていた。このあたり、細かく触れられていなかったが俺は入学するまでは一人で暮らしていたようだ。


「所持金は主人公の初期資金より少し上くらい……ダンジョンに潜るにしても、先立つ物がいることには変わりないな」 


 魔力を放出するだけなら道具はいらないが魔法として形にするにはやはりなにかしらの媒介が必要になる。それがいわゆるマジックアイテムと呼称されるもので、ゲームでは基本的には武器や防具、アクセサリーをそう分類していた。シーフが使う武器は短剣がメインだがヒロインの一人にクノイチっぽいキャラがいるせいか当然のように忍者刀やクナイがある。

 俺もそのおこぼれを頂戴して、というよりも男性では主人公以外で唯一装備できる枠となっているのだ。学園で使うためのマジックアイテムの購入許可書は既に入学の書類と共に送られてきている、今のうちに購入しておけば序盤は有利に進められるはずだ、そして何より隠しダンジョンで装備も確保できるようにしなければならない。第一の死亡フラグは中ボスだ、普通に鍛えれいれば主人公とヒロインならまず負けないが俺は怪しい。むろん鍛えてレベルを……ステータスがゲームのように確認できればいいのだが数値化する方法は今のところない。


 ともかく俺は私服にデイバックを片手に街の中を歩く事にした、入学してしまえば学園の売店で概ねすませることは出来るがそれもまだ先の話だし、何より俺は主人公でもない上この世界に馴染みきれていない節があるので気をつけなければならない。


うっかり=死になりかねない現状を回避するには入念な計画と準備が必要なのだから。

とはいえ俺の出来ることは現状限られているのは確か、よって今はーーー



「まずはあれか」


 目指した先は町外れに位置する場所にある奉日本たかもと神社だ。ここにはヒロインの一人もいるし所謂アクセサリーの売買も行っているのでゲームでは幾度となくお世話になることになる。今回の目的はそれとはまた別の話ではあるが。

某エロゲー販売店の特典をインストールすることで出現する拡張マップに出現する隠しアイテムの一つで、主人公とヒロインの専用武器以外では上位に属するといってもいい性能で、これを装備すると耐性異常の他に専用スキルまで取得することができる。使い勝手の良さから終盤までお世話になるユーザーも多かっただろう。そもそもこの世界においてそういったイレギュラーな物が存在しているだろうか?という疑問は尽きなかったがこれがばかりは現地での調査をするしかないし、これ以後のテストケースとしてもぴったりなのだ。彼にはーーー主人公には申し訳が立たないがこれも俺が生き残る為である、彼は彼で勝手に成長するであろうことは確かなのだから許してくれるだろう。


「祠は、この先か」


 本来は行き止まりでモンスターも出現せずただの平道が続くのみの森の中を抜けていくと小さな祠がある。


「さあて、上手くいってくれよ」

 

 観音開きの扉を開けると視界がパッと包まれる、反射的に腕で多い顔を塞ぐと辺りの光景が変わっていた。

上も下もまっ白でなにも無い空間にポツンと置かれた岩石、そしてそこには一本の剣がささっていた。どうやらここまでは成功だ、と口の中で小さくつぶやくと近づく。


『システムへのアクセスを確認……パスコードの音声入力を要請』


 柄頭に手を伸ばした瞬間、脳内に無機質な女性の声が響いたのがわかった。


「我、戦士の資格を持ちしものなり。我は勇気を持って魔を討つ剣なり」


 この下りはゲームではコピペ出来るにせよ周回の度にやらされるので覚えていたのが幸いだった。



『パスコード確認……認証取得、貴方を資格者と認め所有権を譲渡します』


 すっと剣が抜けた瞬間目を開けていられないほどの強い光があたりを照らす。

反射的に手で顔を覆い光が収まるまで待っていると光が収束し巨大な獅子の顔の形をした球体になっていくのが見えた


『よくぞ我が封印を説いた、褒美としてスキルを与えよう』


 先程とはうってかわって雄々しく野太い声と共に体に光が降り注ぎ力が漲って来るのがわかりガッツポーズをとる。今得たスキルは“変化術“、エルプシャフトと呼ばれる課金アイテムでありクラヤミチェンジャーの専用特殊スキルである、汎用性が高く重宝する。まあ後半からは主人公やヒロインはパワーアップするので万能とまでは行かないが。この剣は記念品である、アイテムとして売れば高額になるのだが……この世界でやると色々問題になりそうなのでとりあえず手元に置いて置くことにする


「さあて、と……ここからが問題だ」


 この腕輪上のアイテムクラヤミチェンジャーはは本来使えない属性のスロットも開放してくれる便利アイテムだ、本来俺が使える魔法の属性は少ないがこれにより下位ではあるが既にこの時点から使えるようになったのだ。俺の立ち位置からいえばやれることは限られてくる、ゲームと同じ要素が存在しているとはいえ現実となってしまっているのだから全てが同じとは行かないだろう、俺がそうであるように生身の人間が相手ともなればテキストやスチルではわからないイレギュラーなことがあるかもしれない。

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