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専門学校時代のクラスメイト

作者: 神保康弘

 私が新聞奨学生制度を利用して声優の専門学校に通っていた頃、今だ忘れられぬクラスメイト達のことを書いてみようと思う。




 まず上京前に予知夢を見た。上京一年前くらいに複数の人達と高層ビルが並ぶ街並を歩いている夢だ。私は起きた瞬間に正夢になると確信していた。そしてその夢は一年の夏頃26歳の短い金髪で細マッチョの兄ちゃんみたいなクラスメイトの呼び掛けで実現した。突然プリペイド式の私が使っている携帯に電話が来て日曜日に遊びましょう。という電話だ。


 その日の日曜日は朝に新聞配達を終え、仮眠して昼過ぎの14時だったと思う。新宿駅で待ち合わせしてクラスメイト四十人弱の内十数人が集まりボーリングやカラオケなどを楽しんで18時頃解散した。


 その細マッチョあんちゃんは一番年長で見かけによらず性格も良く、尊敬に値する人だなと思っていたのだが、秋が過ぎて年が明け三学期になると突然学校に来なくなった。


 他のクラスメイトが聞いた所色々と複雑な事情で病気になってしまって来れなくなったという。その人の特殊事情をここで明かすわけにはいかないのでそれ以上は秘密にさせて下さい。


 人には人の数だけペラペラと他人には言えない特殊事情があるとはいえ、私もとても気の毒に思えた。お見舞いにいける暇も時間も全然なかったがもう少し何かできたんじゃないかと今なら思う。





 夏休み明けの最初の授業で五十音の確認の授業があった。

 なんでそんな授業するのかと言うと田舎に帰ってまた東京に戻ると田舎訛りが復活して訛り捲ったイントネーションで授業を受ける生徒が多数出るからだ。私は田舎に帰ろうと思えば帰れたが金も無いので帰らなかった。


 その授業で四国出身の男の子がかなり訛り捲ってて笑っちゃいけないと思いつつも笑いを堪えるのが大変だった。



(ああ、この子は夏休みになったら一目散に田舎に帰っていっぱい家族とおしゃべりしたり田舎の友人達と遊んで楽しい毎日を過ごしたんだな。犬や猫もいただろう。家族が作った手料理を毎日腹いっぱい食べて充実した1ヶ月を過ごしたんだな。)と思った。


 私はホームシックになる人の気持ちがわからないが絶対この子はホームシックで寂しい思いをしたんだと思う。この子も夏から秋にかけて学校には来なくなった。大阪校あたりに行って週に一回帰る方がよかったんじゃ?


 私も東北の隣県の支部校に行く事も考えたが東北での新聞配達など寒すぎてゴメンだし金に余裕があれば月に何回か帰ろうとも思えるんだが余裕がなかった。父と母と母方の祖母に会いに行こうと思ったら全員別の所に住んでるからあっちこっち移動しなくちゃいけない。




 ある授業で一人ずつプリントを渡されて2、3行読みなさい、イントネーションやアクセントのチェックをします。という授業があった。


 しかしながらそのプリントがもうとんでもなく酷いもので、誤字脱字が何ヵ所もあり、生徒はつっかえつっかえしながらプリントを読んでアクセントどころではなかったが、先生はなぜか誤字脱字には触れずにいた。


 そして私の番になった。私は活字慣れしていたのでプリントを読みながら瞬時に脳内変換して誤字脱字がなかったようにプリントを読み上げたが、残念ながら誉められるようなことにはならず、厳しいダメ出しを食らった。


 次にプリントを読んだ女子は活字慣れしてなかったようでまたつっかえつっかえしながらプリントを読んでいて可哀想だった。



 漢字検定三級の試験もあった。


「俺、今度の漢検落ちる気満々なんだけど!」


「俺もなんだけど!」


 などとクラスメイトとおしゃべりしてる時にそんな会話になった。後者は私で、前者は神奈川から新幹線で毎日通っていて、しかもダブルスタディとかで午前は声優科、午後は歌関係の科で勉強してる子だった。


 ちなみに神奈川校もあるんだがそっちには何故か行かなかったようだ。


「一人暮らしに憧れる?」


 と私は一度聞いたことがあるんだが、あるけど風邪引いた時に家族が看病してくれるから実家住まいがいい。とのことだった。でも毎日神奈川から東京まで新幹線でダブルスタディかあ······。いやはやいい親御さんだな。父親が会社の社長さんらしいが声優としてモノにならなかったら父親の跡を継いで会社の社員になって絶対服従しなくちゃいけないんじゃないかと無駄に心配してしまった。


 漢検の結果その子は落ちて、私は運良く合格した。139点でなんとか合格。今は150点以上取らないと合格できないらしい。「曇天」《どんてん》が読めなくてその問題だけうーんうーん唸っていた記憶がある。その日は出席番号順から呼ばれて不合格だとプリント一枚渡されてもっと勉強しろ! 合格者はあまりやる気の無い声でおめでとー。こんな感じだった。



 モデルさんの真似事のような授業もあった。

 1、2、3、4で教室の真ん中まで二人ずつ歩いて5、6、7、8で振り向いて笑え! との指示でそうしたんだが、「笑顔がぎこちなーい! 今度は歯を見せて笑って!」との指示を受けた。


 私の番が来た。1、2、3、4、5、6、7、······8!


 私は笑うと八重歯が出るのだが、両掌を頬に添えてにぱっ! と変顔気味の笑顔を見せた。


その瞬間たまたま見ていた女子の一人が体をくの字に折り曲げて噴いた(笑)


「うわっキモっ! ぶっ!」と思ったそうだ。失礼なやっちゃな私のようなイケメンに。


このエピソードは後にクラス一陽キャな人気者の男の子に話しかけられて話題を振られた。最高にキモいって評判だったらしい。私はキモかわいさを表現したかったんだが。








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