(洒)「この悪役令嬢! 貴様との婚約を破棄する!」
異世界恋愛小説の練習です。どうかお付き合いください。
コトアソ王立学園の卒業パーティは実に華やかで、若々しい活気に満ちていた。
楽しげな音楽と気品が漂う大ホールに集まるのは、ほどなく成人の儀を迎える王族や貴族、あるいは資産家階級の少年少女らだ。
そのパーティの最中だった。
どんな時でも皆の注目を集めてやまない第二王子のハキシマスがなにやら物々しく檀上に登った。今から重要な発表をすると告げると、会場の誰よりも派手な衣装を召した公爵令嬢のカマイマセーヌを激しい剣幕で指差したのだ。
「この悪役令嬢! 貴様との婚約を破棄する!」
叫ぶ第二王子。しかし、
当の公爵令嬢はあきれた様子で王子をちらりと見たが、その手を休めることなく自分の作業を続けていた。
公爵令嬢自らトングを取って網の上に焼きあがったA5ランクの国産牛肉を、彼女を慕う友人らに振舞っている最中だったからだ。美味しそうに焼けたヒレ肉を受け取った友人は涙を流して感激し、お礼のためにビュッフェテーブルから揚げ物を皿一杯に取って来て公爵令嬢に手渡した。
それを見た王子はさらに険しい表情になって声を荒げる。
「この肉焼く令嬢! 貴様のトンカツを破棄する!」
公爵令嬢は目をパチクリ、パチクリとして何か様子がおかしい。
第二王子は自分の言葉に令嬢がショックを受けていると思い、得意気になった。
目をパチクリする令嬢を心配した友人は洗眼キットをバッグから取り出して彼女に渡した。令嬢は充血した眼からコンタクトレンズを取り外し、専用カップを目に当てて瞳を洗眼剤に浸した。
ただの眼の不調だったと分かり、王子は肩を震わせて憤った。
「この角膜令嬢! 貴様のコンタクトを破棄する!」
公爵令嬢は不愉快な気分になって、これまでの身の上の不運を嘆いた。となりに居た友人は何かしてやれないかと、令嬢の手を取って手相を見た。そして名前のつづりと生年月日を聞き出すと、令嬢の場合は一昨年から本年までの三年間は不運が続く定めにあると教えてやるのだ。ただ、それも次の立春までだから辛抱するようにとアドバイスをすると、令嬢は胸を撫で下ろした。
その会話の一部始終を聞いた王子は全てを理解したらしく高らかに笑い声をあげて言った。
「この後厄令嬢! 貴様の本厄は昨年だ!」
公爵令嬢はしみったれた雰囲気を変えようと、友人3人を引き連れて四角いテーブルを囲んで座った。そして、近くに居た担任の教師に麻雀牌を持って来させると、ジャラジャラと牌をかき混ぜ始めた。慣れた手つきで牌の山を積み、サイを振ってゲーム開始だ。
令嬢は一巡目に動いた。上家の友人が捨てた『二萬』をチーする。その後さらに二度も鳴いて、その次の友人の捨てた牌でロン上がりだ。喰いタンのみの1000点だった。
そんな令嬢の打ち筋がつまらなくて王子の怒りは頂点に達した。
「この鳴く役令嬢! 貴様の雀卓を破棄する!」
一局目であがった公爵令嬢はたいそう機嫌を良くして、リキュールの入った酒瓶をラッパ飲みしだした。なんと酒瓶を一気にカラにするやいなや、背中から床にぶっ倒れて気を失ってしまったではないか。一緒に麻雀を打っていた友人らは、ゴミ手であがっておいて調子に乗っていた公爵令嬢に「ざまぁw」とあざけり笑うだけであった。
仰向けになって倒れている令嬢を誰も介抱しないのを第二王子は気の毒に思い、走って令嬢の元へと駆けつけて行く。急性アルコール中毒は命に係わる。王子は令嬢の体を起こし、彼女の手首に指を当てた。
「この脈拍正常! すぐさま混成酒を吐きなさい!」
第二王子は公爵令嬢の肩を抱いて立ち上がらせ、多目的トイレへと連れて行った。
王子の介抱により少しずつ意識を取り戻した令嬢はおもむろにドレスを脱ぎ始めるのだ。露わになったほんのり桃色に染まる肌を王子に押し付けると彼のシャツのボタンを外していくのである。王子は困惑してオロオロとするも、令嬢が為すに任せるのであった。
令嬢が不意にボタンを外す手を止めた。そしてドレスのポケットから小粒の錠剤を取り出し、それを王子に見せてから彼の耳元でささやく。
(今日は危険日だから念のため飲んでおくわよ、だって……お前を愛することはないから……)
王子は顔を真っ赤にして異常に興奮した。
「この肉欲令嬢! 貴様の避妊薬を破棄する!」
こうして熱い卒業パーティの夜は更けていくのであった――
(おしまい)
ユーザー企画(下にバナーリンク貼ってます)に参加して来まして、この連載のネタから2作品投稿しています。
『最強の呪文 ~~』パングラム入りファンタジー小説
『神話の暗黒魔導士 ~~』ぎなた読みタイトルのファンタジー小説
よかったら読んでください。
でですね。
この企画は異世界恋愛作品が多くて、勉強のためというのも込みで、まとまった数を読みました。挑戦したいジャンルでもあるので、今回このページで練習をしてみました。流行りの型とか展開とか、人物像、社会とか身分とか。合ってんのかなw、ってw。どうなんだろう?って思っちゃって。
よろしければ、ちょっと教えて欲しいです。