(寸劇)愛飢夫の愛さがし
ただの寸劇です。
「初めてのパングラム」を先に見てくれると楽しさ倍増。
愛とは、全ての始まり。
愛から生まれ、愛と共に生きる男。
彼は愛 飢夫。
そんな飢夫から愛をとり上げるとは、なんとも惨いことをする。
いつも隣にいた最愛の人、柿クケ子をダンディなイケオジ、館ツテ斗にNTRてからというもの、彼は愛に飢える日々を送った。
飢夫にとって愛はなくてはならぬものなのだ。作りかけのパングラムを放り出して、彼は愛を探し求めた。
それまでは当たり前にあったもの。一度失ってしまえば、どこにあるのか見当もつかない。
悲壮な姿でさまよう飢夫をからかう輩は後をたたない。
シス&セソという金髪青眼の陽気な双子を適当にあしらい、飢夫は愛を探した。
愛を目の敵にしているバイキン〇ンを飢夫パンチで吹っ飛ばして、愛を探した。
栗村とかいう、うるさいだけで設定のあやふやな女子にイジられ、佐倉とかいう素っ裸で歌っている女に目を奪われつつも、飢夫は愛を探し続けた。
そして、ついに見つけた。
街で声をかけてきた気のいい男について行き、入った雑居ビルの三階のドアの奥に、その女性はいた。
渡された名刺には「美夢芽」とあった。
彼女はセーラー服を着ていた。サイズが小さいため少し苦しそうなので心配になった。
――こんな世界があったのか。
飢夫は真実の愛を見つけた。
美夢芽が、喉がかわいたと言うので、ラ・リルレ・ロという酒を飲ましてやった。すると彼女はさらに体を寄せ、飢夫の膝に手をおいた。飢夫は思うのだった。これって、
いけるのでは……
美夢芽、美夢芽、
僕に愛をくれないか。
そうだ、
来週の誕生日には君の欲しい時計をプレゼントしよう。
「お客様」
「何?」
空気の読めない黒服の男が背後から声をかけてきた。
「お会計です」
「ぬ?」
「まさかお金。ねの?」
「……」
「……」
「ゆん!!」
(了)
ゆん!!




