「ン」を絶対に使ってはいけない 『そ〇〇〇!〇〇〇〇〇〇』
[あらすじ]
「〇ー〇パーンチ!」「バイバイ〇ー〇…」 こうして町の平和が取り戻され……とは全く別のワールドのお話。このワールドでは「ン」を絶対に使ってはいけないのです。果たして〝彼〟はしっかりと〝アイツ〟をやっつけることができるのでしょうか?
「うわあ~! 誰か助けてえ~!」
泣きながら逃げ回るかわいそうなKaba子。
それを追いかけるのは、UFOに乗り込みイジワルな笑いを浮かべた黒い悪者です。あの憎らしいダミ声でさけびます。
「は~ひふ~へほ~! オレ様にそのウマそうなお菓子をよこすのだ!」
「うわあ~! これはお友達にあげるお菓子だからダメだよぉ。助けてぇ~!」
しつこく黒い悪者がKaba子を追いかけ回していた、
その時です、
バッッコォォォォォ! ・・・ドカッ
待ってました!
黒い悪者をUFOごと蹴り飛ばし、
空からさっそうと現れたのは、我らのヒーローです。
悪者に怒ってこう言います。
「やめないか!〝人に有害な微生物男〟!」
黒い悪者はほっぺをさすりながら立ち上がって、我らのヒーローをにらみつけました。とても怒っています。ダミ声をさらにダミらせて我らのヒーローにこう言います。
「やっぱり来たな!〝砂糖小豆詰めて小麦粉捏ねて焼いた食べ物男〟!」
Kaba子をかばいながら、悪者の前に立ちふさがった我らのヒーロー。
「Kaba子がかわいそうじゃないか。どうしていつもイジワルばかりするのか! 人に有害な微生物男!」
「うるさいうるさい! いつもいつもオレ様のジャマばかりしてくれるな! 砂糖小豆詰めて小麦粉捏ねて焼いた食べ物男!」
するといきなり、
「アタシがすけだちするザァス!」
現れたのは、お顔が陶器でできた食器の若者です。両手に持ったお箸を悪者に向かって構えます。
我らのヒーローが彼にこう言います。
「ありがとう!〝白飯の上に具材を衣に包み油で揚げたものを乗せた料理男〟!」
我らのヒーローは食器の若者の登場に喜び、何かが100倍です。
それを見た黒い悪者はとてもイライラしています。
「くっそぉ、こうなったら…。砂糖小豆詰めて小麦粉捏ねて焼いた食べ物男も、白飯の上に具材を衣に包み油で揚げたものを乗せた料理男もまとめて相手してやるう!」
食器の若者はお箸で食器を叩くお行儀の悪い踊りを始めました。
それに勇気づけられた我らのヒーローが勢いよく黒い悪者に飛びかかります。
あの必殺技です!
「砂糖小豆詰めて小麦粉捏ねて焼いた食べ物・殴り!」
ボカァァァァァァ!!
ばっちり決まりました。
我らのヒーローの強力な一撃をまともにくらった悪者は、ひとたまりもなく吹っ飛ばされました。
「さよならさよなら人に有害な微生物…………」
ヒュゥゥゥゥゥ ・・キラッ
悪者は遠くの山の向こうへと飛ばされて行ってしまいました。
やりました。
やっぱり我らのヒーロー、頼りになります。
悪者を追い払い、我らのヒーローは悠々と地上に降り立ちました。
「大丈夫かい、Kaba子」
「はい! ありがとう!……えっとぉ」
我らのヒーローに声をかけてもらったKaba子が、なぜかモジモジとしています。
Kaba子はどうしたのでしょう。
「あの……えっと……えーっと……君の名前、忘れちゃった…………」
・・・
こうして今日も町に平和が訪れたのでありました。
ありがとう! 我らのヒーロー、砂糖小豆詰めて小麦粉捏ねて焼いた食べ物男!
・・・
一方その頃、
四角い小麦粉捏ねて焼いた食べ物男は、言い寄ってくる橙色の女性を、いったいどう呼べばよいのかと、ほとほと悩み果てていたのでありました……
(おしまい)
この作品は、紹介作品a.【言葉あそび短編集】(N5226HK)―「『〇〇〇〇〇〇』に捧ぐ。」のリスペクト作品です。