ことばあそび が無いなんて
大切なモノを失ったわたしなんて、
まるで人形のよう。
なんにもする気が起きない。空っぽな胸を埋める物がなにもない。
だって生きがいだったの。
回文のためなら死んでもいいって思ってた。リポグラムに操を捧げる気でいた。ダジャレなしに会話なんてできやしない。
いったい、いかにして生きていったらいいっていうの。
濁点をのけたら使って良しにしようか。
ううん、やめよう。ズルな気がするし。
にしても、二文字目がだいぶキツイのよ。加えて、指示代名詞が軒並み使えないのがキツイ。さらに、主格の助詞が使えぬのもキツイの。
なにをして生きようか。
勇者ものか令嬢もので気を紛らわせようかな、エッセイで物申してみようかしら。
ダメ。違うわ。
だってわたし、文字のプレイが好きなの。
制約にがんじがらめにされながら、いかに人生を描き、詠い、伝えるか。
やってみたいの。
自虐的なプレイだなんて思われるかな。いいえ、理不尽な枷に対する聖なる戦いよ。
命を賭ける価値を見い出したわ。
ていうか趣味なの。
目覚めたの。がんじがらめにされたいの。
大丈夫、わたしにだって味方がいる。文字たちが、みんな味方だから。
いま聞いてるの。全ての文字たちが訴えかけてくるわ。
なになに?
「最低字数なら、もう過ぎたぜ」
…たしかに。
(おしまい)
「こ、と、は、あ、そ、ひ」が使用禁止です(濁音込み)。




