とある男のとある冒険
とある軽めの掌編小説です。
とある王国に住むトアールという男は、とある事情でとある場所を目指す旅に出た。
とある事情とあるが、とある女とある約束をトアールは交わした事あるのだ。
トアールはとある宝石を好意のある女に頼まれていた。その宝石があるととある理由でとある舞踏会である程度ある貴族と仲良くなるとのある筋の情報がある。
とある掲示板の書き込みには、その宝石は恐ろしいダンジョンにあるとある。また別の書き込みには楽なダンジョンにあるとある。こんなのごまんとある。ネットあるあるだ。
トアールはとある考えでなんとかなると思い、旅に出たのである。
旅の途中、とあるルートを通るトアールは、ある日とある宿屋でのとある戦いでとある中華風の男を家来にした。
その夜、家来がトアールに言うのである。
「あっしとあるじとでとある港町を乗っとるあるよ」
しかしトアールは、とある予感でそんなうまいことあるとは思えなかった。でもちょっと面白そうだったので。いやきっとある。と、ある意味開き直ってみた。
とある訳で細かく説明しないが、とある聖剣を手に入れてとある港町はあっさりと乗っとれたのである。
中華風の家来はことあるごとに、港町の町人どもに、
「あっしとあるじはもっとアルコールを所望あるぞ!」
とあることないこと言って町人たちを怒鳴るのである。
そんな下品な光景に嫌気がさしたあと、トアールはふとあることを思い出した。
この旅の目的は何だったかと、あるいは好いた女のことを。
もう何もかもが、自分にあるもの全てが、無くなったらいいと思った。
泣いてはいけない。
トアールはこの港町を出ないといけないと思った。
あてのない旅をしたいと思った。
何も持たない。しるべのない道を一人で行きたいと思った。
素晴らしい出会いがきっとあると。
とある場所がトアールを待っているのであると。
トアールはとある期待を胸に、
そっとあるき始めた。
( 了 )