表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ジョニーの詩

大人になれて良かった

挿絵(By みてみん)

子供の頃、毎日のように思っていた

『早く大人になりたい』と


大人になれば

どんな事でもできる


自分のお金で好きなものを好きなだけ買える

自分で自動車を運転して、行きたい所に行ける

お酒も飲めるし、タバコも吸える

ファッションも

旅行も

自分の好きなことが自由にできる


仕事は何が良いだろう

マンガが好きだから『漫画家』かな?

『小説家』になって賞を取るのもいいな

『スポーツ選手』や『アイドル』になればみんなの人気者だ

『お巡りさん』や『消防士さん』になって人助けするのもいいだろう

『映画俳優』や『声優』もいいなぁ

『映画監督』にもなりたいなぁ

将来はよりどりみどりだった


自分が大人になる頃には、世の中はどうなっているだろう

宇宙旅行が誰でも気軽にできるようになっているかもしれない

ア〇ムやドラ〇もんみたいなロボットが街中を歩いているかもしれない

車が空を飛んで、タイムトラベルができるようになっているかもしれない


まだ見ぬ遠い未来に想いを馳せ

夢と希望に溢れていた子供時代…………




念願叶って大人になって

今は逆に『子供に戻りたい』と思っている


大人になって初めて気づいた

大人というのは意外と不自由だ


汗水流して働いて稼いだお金の大半は税金として取られていく

自動車は中古でも何十万円もするし、運転するには免許を取らないといけない

お酒とタバコは思っていたより美味しくないし、あんまり取りすぎると病気になる

センスの無いファッションは笑われるし、

仕事が忙しくて旅行に行く余裕も無い


仕事だってそうだ

何度も何度も履歴書を書いて

何度も何度も面接を受けて

何度も何度も求人を探して……

結局思っていたのとは全く違う仕事についている


自分の周囲だけじゃない

世の中もそうだ

宇宙旅行はよほどのお金持ちでもなければおいそれと行けるものではない

ロボットはようやく家庭用が広まり始めたばかり

車はまだ地上を走っているし

タイムトラベルなど夢のまた夢


子供時代に夢見ていた『バラ色の未来』とは程遠い

さしずめ『灰色の現実』を大人になった僕らは生きている




けれど

灰色の現実にも楽しみが一つも無い訳ではない


少ない給料をやりくりすれば自分の好きなものを買える

自分で自動車を運転しなくても電車やバスを乗り継げば行きたい所に行ける

週に一度は自分の好物を食べれば幸せになれる

センスの無いファッションも『コスプレ』と言い張れば様になるし、

泊まり掛けの旅行は無理でも、日帰りのお出かけなら有給を使わずに遊びに行ける


仕事も同じだ

どんなに日の目を見ない汚い仕事でも

真面目にがんばれば給料に加算されるし、

周囲から『ありがとう』と言われる

自分が役に立っていると思えば励みになるし、自信もついてくる

例えプロの漫画家や小説家、アイドルや映画監督になれなくても

『趣味』で作ったマンガや小説や動画をインターネットで発表すれば

何百万人もの人が見てくれる


世の中だってそう捨てたものでもない

最新のCGとVR技術、もしくはプロジェクションマッピングを使えば、自分の部屋に居ながら宇宙旅行どころかファンタジーな異世界にも行ける

ロボットに使われる人工知能に関する技術は進歩を続け、

人間と当たり前にコミュニケーションが取れる物が出来ている

空飛ぶ車も

タイムマシンも

世界中の科学者が研究と開発を続けている



子供の頃、僕らは『バラ色の未来』を夢見て『早く大人になりたい』と思っていた


念願叶って大人になれた僕らは『灰色の現実』に絶望して『子供に戻りたい』と思ってしまう


けれど

少し立ち止まって前を向けば


『灰色の現実』の中にも鮮やかな彩りがある事に気づく


だから今

僕はこう思う

『大人になれて良かった』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ