80 番外編 よくある乙女ゲー世界のイベント
ただいまコロナでダウン中です。
毎日投稿切れちゃったのが悲しい。
ちょっとパラレル番外編でお茶を濁します。
~蛮族学園の出会い編~
「私、特待生のアマネって言います!」
「ん?」
「……特待生?」
婚約者であるレヴァン殿下と、その友人のエルト。
それにエルトの妹のラーライラと歩いていたら、そんな風に名乗りを上げる子が現れたわ。
「特待生のアマネさん?」
「うわ、クリスティナ……!」
うわって何よ! 初対面で失礼ね!
特待生っていうとアレね。
平民から見込みのある者を選んで、学園への入学をさせる制度よ。
入学金や授業料なんかを免除して貰えるわ。
そういうのがないと高いものね、学園の費用って。
「うわぁ、レヴァン様もエルト様も格好いい!」
「……何この子?」
「さぁ?」
ラーライラが何故か守るようにエルトより前に出てるわね。
「特待生か。頑張ってね。僕達は生徒会の仕事があるからもう行くよ」
「あ、待って、レヴァン様!」
「!?」
その黒髪の特待生は、あろう事かレヴァン殿下の腕に絡みついてきたの。
婚約者の私の前でよ。
ピキリと私達の空気が凍ったわ。
その光景を見ていた周囲の生徒達もよ。
「レヴァン様。えへ! 私ぃ、レヴァン様と仲良くしたいなぁ〜ってぇ!」
何かしら、この喋り方は。
ちょっと気持ち悪いわね。
可愛い子ぶってる感じがするわ。
あんまり彼女に合ってないわね!
「……そ、そうか。うん。それは良いのだけど」
レヴァンは、そっと優しくアマネの手を振り解いたわ。
「すまない。僕には婚約者が居てね。婚約者以外の異性とこういう風に触れ合うのは良くないんだ」
「ええ!? そうなんですかぁ? でも、この歳で婚約者なんて……!」
貴族だし、王子殿下だし、わりと普通なのよね!
家の後ろ盾とか考えると早い方が良いくらいだし。
「レヴァン様!」
アマネは尚もしつこく彼の両手を掴んで祈るような形で握り締めたわ。
そして上目遣いでウルウルした目をレヴァンに向ける。
「私、レヴァン様のこと凄く格好いいなぁって」
んー。婚約者の私が居る前で、こんなに明らかな誘惑をするなんて。
ここで牽制できないと私の立場がなくなるのよね。
……仕方ないわ。私がここでガツンとやってやらなくちゃ。
「アマネ様? その手をお離しになってくださる?」
フフン! 王妃候補スマイルと仕草よ!
口調まで完璧ね! リンディス見てる!?
見てないわね! 学園にいないもの!
「レヴァンは私の婚約者なのよ。さっきも言ったように、婚約者が居る彼を誘惑するなんて良くない事よ」
「あら、クリスティナ様。でもそれって親が決めた結婚ですよね?」
「え? ええ、そうね」
それが何かしら。
「……そんなのレヴァン様が可哀想だって思いません?」
「はい?」
「侯爵家が王家に取り入りたいからって、好きでもない貴方と結婚させられるなんて……レヴァン様、可哀想」
ちょっと。何言ってるのかしら、この子。
いくらある程度の無礼講が罷り通る学園内だからって面と向かってマリウス家に平民が喧嘩を売るだなんて!
「……貴方、自分が何を言ってるのかわかってらっしゃる?」
「ええ! 私はレヴァン様の本当のお気持ちを分かって差し上げられるわ! あんたと違ってね、クリスティナ!」
あらあら。この子ったらレヴァンを誘惑したいんじゃなくて私に喧嘩を売りたかったの?
何を後ろ盾にすれば、そんな大胆な事を……。
……まさか、マリウス家が私の件で後ろ盾になってくれる事がないって知ってるの?
リカルドお兄様やミリシャが同様の侮辱を受けたならマリウス侯爵家が黙ってはいないでしょう。
でもこういった件でブルームお父様が私の味方をしてくださる事はないわ。
つまり私はこの件を個人で解決しなければならない。
しかも、ここまで侮辱されたから無視もし難いわ!
「……そう。出逢ったばかりの貴方にレヴァン殿下の何を理解出来るのかは知らないけれど。そこまで言うなら……彼の婚約者として、しっかり注意しておくわね」
私は2人に近付いて、アマネの腕を取ったわ。
「きゃーっ! 痛いわ! クリスティナ! こんなに暴力を振るうなんて!」
……なんか腕を取っただけで大げさに転んで倒れたんだけど!?
何がしたいの、この子!
「く、クリスティナ? やり過ぎは良くないからね?」
「レヴァン? やり過ぎも何も彼女、勝手に」
「レヴァン様! ひどい! こんなの酷いですっ! そこまで暴力的に振るわれる事、私してないのに!」
はぁ!? なんで被害者ぶってるのかしら、この女!
「……何なの?」
「ぐす。クリスティナ……また私の事を虐めるのね」
またって何かしら!?
「え、またって」
「……前にも何かあったのか、この女と」
「クリスティナ、貴方、人付き合いの相手は選びなさいよ」
知らないんだけど!?
「ニヤ……」
なんかムカつく感じにアマネに笑われたわ!?
え、これ、私が悪い流れなのかしら!?
「そうなんです、レヴァン様、エルト様! 私、前にもクリスティナに虐められてっ……!」
「えー……?」
そんなあからさまな嘘を吐く理由、何?
この子、ミリシャの新手の意地悪の回し者かしら……。
どう対処するのが正解か。
レヴァン殿下の婚約者として。
リュミエール王国を担う未来の王妃として。
むむむ。
「アマネ様、立てるかしら?」
「レヴァン様ぁ、お手をお貸しくださいい」
「いや、その」
「はぁ……」
仕方ないわね。
ミリシャの仕込みかもしれないし。
ここは私が対処しておくしかないわ。
「アマネ様」
私は彼女の手を取り、無理矢理に立ち上がらせる。
「きゃあっ! 痛い! ま、また暴力を振るうの、クリスティナ! いつもみたいに!」
よく分からないけど、何かの証拠を捏造されているのかもしれない。
こうまでアマネが言うのだもの。
だったら、こうね!
「──フンッ!!」
バギィッ! とグーでアマネを殴り付けたわ!
「ふげば!?」
「ちょっ、クリスティナ!?」
「はぁッ!」
すかさず鳩尾に膝蹴りよ!
ドゴッ! というクリティカルな手応え!
「げぼぉ!?」
「はぁあああ!!」
倒れ込んだままアマネに! 馬乗りになって!
顔を!
殴って! 殴って! 殴り付けるわ!
「ふぎゃ、ぐびっ、げあっ!」
戦場には男も女もないのよ! だから顔を殴るわ!
「──フンッ!」
「げぶっ!」
トドメの一撃はボディブローよ!
後から効いてくるからね!
フフン! もっと光る拳とかでやってみたかったわ!
「……勝ったわー! 婚約者として、王妃候補として、殿下にたかる悪い虫を優雅に撃退して見せたわよー! 見てたかしら、ラーライラ! 褒めて!」
「褒めないわよ?」
何でよ! 勝ったのに!
「く、クリスティナ、いや、それのどこが王妃の優雅なのかな……。内政・外交問題待ったなしだよ……?」
「あら」
せっかく婚約者として振る舞ったのに!
「クリスティナ。貴方、先に手袋を投げつけるのを忘れているわ」
「あっ!」
忘れてたわ!
「……不意打ちなど魔物との戦いでは日常茶飯事。気を抜く相手が悪いものだが、対人の決闘ならば、やはり作法に乗っ取るべきだったな。だが手際は見事だったぞ、クリスティナ。相手の意識をしっかりと刈り取っている」
「えへへ、ありがとう、エルト!」
「お兄様、クリスティナを甘やかさないで下さい!」
ちょっとした間違いね! 次からは手袋を投げつけてから、それに気を取られた敵の隙を攻撃するわ!
「何もかも違う……」
苦労している婚約者のレヴァンと一緒に私達は楽しく学園生活をエンジョイするわよ!
フフン!
フィクションです!




