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71 アルフィナ戦線

「打って出るわよ!」


 私は、屋敷の正面階段に少し上って皆に声を掛けたわ!


「人手が増えたから働いて貰うわね!」

「ええと」

「彼らを魔物との戦いに連れて行くのかい、クリスティナ」


 野盗達は、まだ騎士達が1人ずつ尋問して身元を確認しているところね!


「彼らは囮にするわ!」

「囮って」


 薔薇で穴を掘ったり壁を作ったりして、防衛態勢は今日まで整えてきたの。

 あまり手が回ってなかったけど今までは上手くいっていたわね!


「薔薇の罠がある場所に立って貰って魔物を誘き寄せてから逃げるだけでいいわ!」


 その後は騎士達がトドメを刺せば楽よね!


「準備していた防衛罠類の運用係にするのか……」

「それなら出来なくはありませんね」

「あとは住む家の確保ね!」


 領主の屋敷の部屋は余っているけれど、騎士達や侍女と同じ扱いは彼らにできないわ。

 かといって手頃な牢屋があるワケでもない。


「放置すれば逃げ出すんじゃないですか?」

「首輪は付けておくわよ」


 薔薇の首輪ね!


「雨が降ってない間は薔薇の檻に閉じ込めておいてもいいけど」

「わー、ひどい……」

「ヨナはもうマルク達を赦しているの? 優しい子ね!」

「お姉ちゃんこそ赦してるんじゃないの?」

「赦してないわね!」


 ここは、きっぱり言っておかないとね!


「私が命を狙われたならともかく、ヨナやフィリンを傷付けようとしたんだから! マルクはヨナに謝ったけど他の連中はまだでしょう? フィリンにだって謝ってないじゃない。だから赦してないわね! マルクだって心からの反省とは言い難いわよ!」


 いつかの襲撃者みたいに警備隊に突き出すにしても、ちゃんと罪に問えるか怪しかったし。

 マルクみたいに二度も私を襲おうとしたり、危ない連中だから放置は出来なかった。


「あ、僕達が狙われたからか……」

「そういう基準ですか。たしかにセシリアさんとは違いますよね」


 セシリアはカイルの事があるから仕方なかったのよ!


「私だって彼らにやむなき事情があるんなら赦すわよ。先に報酬があって、それでお金の為に誰かを襲えって言われただけなら、まだ理解も示してあげるわ」


 今は、それについて騎士達に調べて貰っているところね!


 今は私の管理下に置いておくわ。

 反省せず、どうしようもなさそうだったら….本当に殺すしかないでしょうね!



「それよりナナシ(・・・)はどう? カイル」

「……大人しくしているよ。例の壁が壊れていた部屋に入っている。食事は僕かセシリアに持っていかせてくれ」

「そう! ちゃんと話し合えればいいわね!」


 予言の世界では、彼とカイルは死ぬ間際まで仲良く出来なかったけど。

 縁があるんなら、ちゃんと仲直りして欲しいわ!


「とにかく。準備を整えたら魔物の森に打って出るわよ!」


 ……予言の夢を見る程に『薔薇』の制御力は上がっていると思う。


 薔薇は私の感情を糧に成長するのよ。

 たぶん、劇的な感情の方が大きく、鋭く、強く薔薇を成長させる。


 夢の中での絶望感や、リンディスを殺された憎しみが薔薇の力を向上させているのね。


 それから現実に居る私には、ちゃんとリンディス達が傍にいる事が大きい。

 彼らを守りたいという愛が、きっと私にはあるわ。


 だから夢の憎悪パワーと現実の愛情パワーで最強なのよ! フフン!


 夢だけど首を切られた恨みも深いのよ! フフフン!



 騎士達による野盗達の尋問は一通り終わったわ。

 家がどうのと言っていた男は、特に家族を残して来たワケでもなかったみたい。


 別に家族が居たらその人達も害するとか、そんな話はさせてない。

 虚偽については罰すると明言している。

 個別の尋問にした事で口裏合わせが出来ないようにしたから……ある程度、正確な話は聞けたと思うわ。


 皆、だいたい天涯孤独ね。



「ハンター? 今まで狩りで生きてたの?」


 弱い魔物狩りなら任せたいところね。


「農家経験あり。もしかして元はアルフィナ住人だったりしない? 違う? そう、残念」


 概ね、根無草のその日暮らし。

 ゴロツキ、チンピラ、そういったところね。


「んー……。アンタ達。しばらくは『奴隷』身分だけど。畑の管理や『村』の衛兵、そういった『職』があれば他人を傷付けずに過ごせるの?」


 未来の展望もなく腐ってたから女を襲いたくなったとか。


「え?」

「その気があるなら、これからの暮らしの環境は整えていってあげるわ。今の私達は魔物との戦いの最前線基地……みたいな場所に居る『軍』みたいなものなの」


 陛下からのお返事はまだで私も領主ではないけど。

 ここでの災害を乗り越えれば希望はあるでしょう。


 最近は魔物も増えて来たから、街に素材を売りに行く分とは別に『討伐の証拠』も貯めていけているわ。


 倒した魔物がどんなもので、どんな大きさで、どれぐらいの数が居たのか。

 そういった報告書を作って、証拠となる素材を保管しているの。


 目撃者がいないから手柄を正確に報告できない問題の解決の為ね!



「魔物達をたくさん倒して、手柄を上げて、このアルフィナを私の領地としてぶん取る予定よ! フフン! その野望が叶うまで私に尽くしたならアンタ達の罪も赦して、それから畑だってあげていいわ!」


 元居た住民達との折り合いが、どこまで付けれるかは分からないけど。

 それはこれからの私達次第ね!


「畑……」

「そうよ! ああ、でも。まだ信用してないから」

「え」


 繋がりを切らないままの薔薇の蔓を。


「──薔薇の首輪」


 男達の首回りに咲かせたわ。

 そして『悪女』の顔をして男達を見た。


「アンタ達がヨナや侍女達に手を出すようなら、その薔薇で首を締め上げて殺すわ。これは私の思いのままに、いつでも出来る。それを忘れないでちょうだい」

「ひっ……」


 こういうのは飴と鞭というのよね!

 薔薇の鞭も持ってるし、叩いておこうかしら!


「誰かを人質にしようものなら、私はその子を見捨ててでも、まずアンタ達を殺す。それはあの時、理解して貰えたわね?」

「は、はい……」


 あとは、そうね。

 セシリアに伝授された『色気』も含めた怖さの演出ね!


「ねぇ、マルク?」

「な、なんでしょう」

「私、こう見えて『乙女』なのだけれど」

「えっ……」


 私は、座らせている男の顎に指をかけて顔を上げさせたわ。


「私が弱かったら、貴方が私の初めての相手になったかもしれないのね」

「うっ、」


 ゴクンと息を呑んで赤面するマルク。


「もし、そうなっていたら……」


 間を溜めて。


「──アンタの『男』を握り潰して、生きたまま魔物に食わせていたわ」


 ここで殺気を放って凄む。

 そして爪を少し立てて痛みを与える。


「ひっ、ぅ」

「もちろん、これからは、そうならないわよね? だって貴方はもう反省しているのだもの」

「は、はい……!」

「ふふっ!」


 ここで悪女スマイルよ!


「ひぃ……」

「じゃあ、貴方達は騎士に従って。安心しなさい? ただ魔物に食われてこいだなんて無益な指示は出さないから」


 人手はいつでも不足しているからね!



◇◆◇



 というワケでアルフィナ領、西北の『魔物の森』攻略戦の開始よ!


 指揮官は私。

 他の騎馬兵はリンディス、カイル、ヨナ。

 そしてエルトの騎士の3人。

 歩兵は、今回で従えた野盗達の10人よ。


 セシリアとフィリン達侍女5人、ついでに軟禁中のナナシは領主の屋敷で待機ね!



「目標は『大地の傷』と呼ばれている空間の亀裂の発見! そこで浄化薔薇を咲かせる事での魔物災害の根絶よ!」


 魔物(おにく)が出なくなるのは残念だけど、災害が起きなくなるのは良い事よね!


 さぁ、行くわよ!


良ければブクマ・評価お願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 奴隷扱い。見事に蛮族でw
[良い点] 限りなく現実に近い夢の中で何度も絶望と憎悪と死の恐怖を抱きながらも、本当の現実では負の感情に屈する事無く、明るく前向きでちょっとだけ狡猾な美しき脳筋令嬢ほんとすこ
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