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65 推しキャラクター

「クリスティナは転生者なのかしら?」


 ありがちなパターンよね。悪役令嬢に転生とかさ。


「あれ、でも。『ゲンダイって国』って何? そこは普通に日本でいいんじゃ?」


 もしかして外国人の転生者とか?

 そして同じゲームをプレイしていた?


 でも、そうだとしたら大人しく王都を追放された理由は?


「……途中で前世の記憶を思い出した系?」


 これが1番しっくり来るかな。ってそうじゃなくて。

 転生者ってだけじゃ説明が付かないのよ。


 私のお母さんの名前を知っていて! 私がゲームしている光景を見た!?

 どういうこと!?

 人の私生活を覗き見るスキルとかそういう系!?


「人の私生活」


 ……は、私も見ているようなもんなんだけどさ。

 だからってオアイコ? よりによって悪役令嬢クリスティナと?

 そんなの何に利用されるか。


「…………」


 この世界では『ヨナ』は転生者じゃなかった。

 同じように日本の知識を共有すれば落ち着けるだろうって思ったけど。


 この手のパターンで悪役令嬢も転生者の場合、それは……よっぽど悪人じゃない限りは仲直りフラグってものだ。


 でも。

 でも、そういう場合って仲直りするのは『ヒロイン』の役目。

 ルーナとクリスティナが仮に手を取り合う未来があったら。


 それは、なんていうか1番のハッピーエンドみたいな形になる気がする。

 もちろんクリスティナが大虐殺とか王国半壊なんて事をしでかさなければだけど。



「だけど私は『ヒロイン』じゃない」


 この物語の主人公(ヒロイン)はルーナ。

 私は、その物語がどう描かれたかを知っている。


 これが転生ならば、私はこのゲームの中の登場人物だ。

 ルーナとして生まれていたなら、レヴァンやエルト、カイルや『彼』との恋物語(ラブストーリー)だってありえただろう。


 でも違う。


 私は『私』として、ゲームの世界に転移してきた。

 ただの日本人でしかない君柄アマネとして。


 ミリシャは明るく笑うけれどレヴァンと仲良くしていれば怖い目をする。

 ライリーは愛称で呼ぶような親密さを赦さず、私と距離を置く。

 エルトに至っては敵視した目を私に向けてくる……。


 レヴァンとルーナは原作通りって気がするけど、レヴァンの方はクリスティナからすれば違うらしい。


「知識が役に立たない乙女ゲームも定番だけど」


 私にはヒロインのような恋物語は待っていない。

 私には悪役令嬢のような破滅は待っていない。


 ただ、ここに居るだけの部外者。

 メインキャラクター達と良い関係が結べないなら、ここに居る意味があまりにも無い。


「……せっかくゲームの世界に来たのに」


『思っていた展開とは違う』な、とそう思う。

 皆をハッピーエンドに導いた後は、仲良く笑って……それで、出来れば『彼』と……なんて。


 それも最近、王城での私の対応が悪くなっていて……難しそう。

『彼』は高貴な人だから、ルーナでもない私は、王城にでもいないと出会えないのに。


「はぁ……青の貴公子様……出て来ないかなぁ」


 ここが現実だっていうんなら。

 たとえゲームでは条件解放でしか出て来ない隠しキャラクターだとしても……出て来たっていい筈でしょう。


「……え?」


 その時、私に用意された部屋の中で、不思議な光景が見えた。


「……光る……蝶々……」


 青白い光で出来た蝶々がふわふわと舞っていたのだ。

 神秘的な光景。


 だけど、私は……その光景の意味するところを知っている。


 この蝶々の名前は……『光翼蝶(こうよくちょう)

 3人目の【天与】持ちである、彼女(・・)が現れる先触れ。


「……っ!」


 私は、いてもたっても居られず部屋から抜け出した。

 彼女が現れたなら傍に居るかもしれない。


『彼』が。そう、青の貴公子が。



「あっ……」


 そこには優雅に歩く2人の兄妹の姿。

 従者を引き連れながら、仲睦まじく微笑み合う男女。


「あら。貴方は……」


 青い髪の女性が私に気付いて足を止め、こちらに向かってくる。


「こ、こんにち……じゃなくて、えっと。ご、ごきげんよう! ルーディナ公爵令嬢様!」


 私はルーナと一緒に習った精一杯の礼をした。


「あら。やっぱり、噂は本当なのね。私とは初めて会うのに。私の事も知っていらっしゃるの。予言の聖女アマネ・キミツカ様」

「は、はい!」


 青くウェーブの掛かった綺麗な長髪にサファイアのような瞳を持つ女性。


 ルーディナ・ルフィス・リュミエット。

 ルフィス公爵家の長女。そして『彼』の妹。

光翼蝶(こうよくちょう)』の【天与】を持った3人目の女性キャラクター。


 ……公爵家は、王家の血を継いでもいる最高爵位の貴族。

 その嫡男は場合によっては王位継承権すらも持っている。


「では、貴方はお兄様の名前も知っていらっしゃるのかしら?」

「は、はい。存じております……」


 本当に……本物! 本物の、私の推しキャラクター!


「ユリアン公子! 『青の貴公子』と名高き王国一の男性です!」


 そこには本物の『彼』が立っていた。


「ふっ。王国一とは身に余る言葉だ。予言の聖女アマネ・キミツカ。ここで会えて嬉しく思う。今日、私は貴方に会いに来たのだから」

「えっ」


 わ、私に会いに……!?

 青の貴公子が!? きゃー! これよ! この展開が、


「もっと早くに会いたかった。聖女様、共に『傾国』の悪夢から救おう。──私の(・・)リュミエール王国を」


 ユリアン公子の青い瞳は、怪しいぐらいの光に満ちていたわ。

 すべてが飲み込まれてしまうみたいに、怪しく、怪しく……。



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― 新着の感想 ―
[一言] お馬鹿ー。 推しの反応に変と気がつかないのてすね。 そして推しの中身は転生者で歪んだ女性っぽく。
[一言] ユリアン公子…、多分本人か近くに転生者か転移者アリという感じですね、しかも余計な(邪悪なでも可)考えもってそう…
[一言] うーんこのお花畑 アンタの推し、多分邪悪な奴ですよ…
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