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56 側妃ルート

「ねぇ、リンディスー」

「はいはい、何でしょう」


 倒した熊の魔物をカイルの指導と騎士の手を借りて解体。

 それから皆で食べれるお肉に処理よ。

 火はヨナが熾してくれるから助かるわね!

 魔物の瘴気は私が浄化するわ!


「もしかして私ってマリウス家の侯爵位の正統な継承者だったりする?」

「……ですから、そういう危ない話を皆の前で」

「何よ。別にいいじゃないの」


 私の本当の母、セレスティアお母様はブルーム侯爵の姉。

 なら、お母様とその娘の私は場合によってはマリウス家の爵位を継ぐ存在になったかもしれない。


「……セレスティア様の代ならばともかく、流石に今のお嬢の立場では正統な継承者とは言えませんね」

「そう」

「ただ、ご身分が明るみになった上で、お嬢が上げる功績によっては……マリウスの爵位と領地をブルーム侯と争う立場になりかねません」


 それは面倒ね!


「じゃあ、やっぱり、そうね」

「お嬢?」

「私、今の内にマリウス家とは縁を切っておこうと思うの」

「え……」


 セレスティアお母様もマリウスだったのなら少し寂しくはあるけど。

 でも、私には結局、お母様の記憶は無いもの。


「私が勝手に決められる事でもないけど。『王命』を受けている今の私は、陛下にアルフィナの現状や【天与】についてを報告しなければいけないわ。そして私が掴んだ『傾国』と呼ばれる理由には、マリウスの家での立場や家族とのしがらみが関わっている」


 そう、だから。


「……お家騒動と、その先の『傾国』の未来を避ける為に先に縁を切っておくべきだと陛下に進言なさる、と?」

「そうよ」


 そうすれば陛下の采配でマリウスの家とは縁を切れるかもしれないわ!


「でも、もう少し『予言』の内容を把握してからね」


 私の【天与】が見せているのは、たぶん『過去』のアマネの異世界での生活。

 そして、そこで彼女が見ていた『魔法の黒い板』に映し出される予言の内容よ。


 あの黒い板が、レヴァン殿下の言ってた『オトメゲム』というものなのよね。


 ぜんぜん見た目は予言書に見えないけど。

 でも、ちゃんと異界の文字で私達の言葉が浮かんだりしているし。


 それに私達の声まで再現されてるのよ?

 ただ、少し『現実』の人々の声とは違う気がするわ。

 あとは、その時の状況を示す文字も浮かんだりする。

 小説みたいな雰囲気の文章よね!


 気になるのは、未来の光景を映す際になぜか常に楽器を演奏しているところね。

 たまに音楽が途切れる事もあるみたいだけど。

 なんで常に演奏しているのかしら?

 何かあの音楽に意味があるのかしら?



「また夜中に『予言』を見ておくわ!」

「……しっかりと休んだ方が良いのでは」

「大丈夫よ! 身体は横にしているし、夢を見ているみたいなものなの。実際、夢と変わりないわ!」


 まぁ、とりあえずまだまだ情報が足りないわよね!

 アマネがアルフィナ領の災害について知るのは、いつなのかしら?


 もう、その光景の時間までとっとと意識を飛ばしたいわね。



 そうして予言を見る為にベッドで横になり、目を閉じる。

 ……しばらくすると私の意識は、また『別の時間』へと飛ばされていたわ!



◇◆◇



「……クリスティナ。君には『側妃』になって貰いたいんだ」


 んん? またレヴァン殿下?


「側妃、ですか……」


 場所は広間じゃないわね。殿下用の応接室だわ?

 そこにはレヴァン殿下と私が座っているの。


「……君を嫌いになったワケではないんだ。だけど、その」

「顔を上げて下さい、王子殿下」


 私はレヴァンに優しく声を掛けた。


「……正式な王妃に据えたい方がいらっしゃるのですね? お相手は、やはりあのラトビア男爵のご令嬢……ですか」

「……ああ」


 殿下は、俯いてから。

 顔を上げて私の目をまっすぐと見つめた。


「僕は彼女を、ルーナを愛している」


 そう、はっきりと言われたわ。


「だから、彼女に王妃になって貰いたい。そして……君には、側妃として彼女を支えて貰いたいんだ」


 側妃。側妃かぁ。

 これまで学んだことの全てが無駄になるワケじゃないわ。


 私だって、まぁ王妃に向いているとは言えないし。

 ルーナ様に表に立って貰って、私はそのサポートをすればいい。


 ……悪くはないような気がしたわ。



「……わかりました。レヴァン殿下。私は、それでも構いませんわ」

「本当か!?」


 殿下の顔がパァッと明るくなった。


「はい。ですが、その……。マリウスの家や、陛下にはちゃんと話を通さなければ」

「分かっている! 全て僕が話を付けるよ! まず君に話をするべきだと思ったんだ」


 うん。うーん?

 大丈夫かしら? 何か引っ掛かるわよ。


「あ、殿下」

「うん? どうしたんだい、クリスティナ」

「えっと、その。お相手のラトビア令嬢にも、ちゃんと話を通されました? もしや、レヴァン殿下お一人のお考えでは……?」


 何か抜けてる気がするのよね!

 意外とレヴァンってそういうところあるんだから!


「あ、ああ。そ、そうだな。それは……」

「それは?」

「……これから話す……」


 言ってないのね!?


「はぁ、殿下……。勇み足をなさらないでください。本人の確認を、と思われるならラトビア令嬢にもキチンとお話を。このままでは、ビックリさせてしまいますわ」

「そ、そうだな……。うん。そうしよう」


 ふふふ。

 困ったレヴァンも可愛いわね。

 私達は幼い頃に結ばれた関係だったせいか、なんだか今の関係は……友人とか。

 或いはそう。『弟』がいたら、こんな感じなのかな? って。


 レヴァン王子を見て思ったわ。


「王子殿下や、ラトビア令嬢……ルーナ様が困っている時は私も力になりますからね」


 フフン! これでも何年も王妃教育を頑張って来たんだから!

 ちょっとした先輩よ。

 だから私でもルーナ様に教えられる事があると思うわ!


「さ、さっそくルーナに話をしに行きたいんだが……」

「ええ! では、私はこれで失礼しますわ」


 私はにこやかに微笑んで、殿下と別れた。


 侍女もなく、もう見慣れてしまった王城を歩いて行く。



「…………」


 微笑んだまま。私の顔は変わらない。

 側妃。殿下に捨てられたワケではない。


 でも。



 ──チクリ。


 ……何かの棘が、胸の内側に刺さったの。


「……、あはは」


 よく分からないけれど。走り出したかった。

 何かが耐えられなくて。


 おかしいわね。何かしら。


「胸が、痛いわ」


 胸の奥が痛む。ギシリと何かに心臓を掴まれたよう。

 左目も痛くて。


「痛い」


 左目からだけ涙が溢れた。

 痛い。私は咄嗟に手で左目を押さえて。


「……あら?」


 瞼を押さえた左目には、血が付いていたの。



ここまで読んで頂きありがとうございます。


3月の間は、この小説『蛮族令嬢クリスティナ』でYouTubeでの「なろうデスゲーム(幽焼けギルド様)」企画なるものに参加していました。


3月中のみのポイントで他者と競い合う、という感じのイベントですね。

正式なコンテストとかではないです。

結果はまだですが、中間報告の時点で敗北は確定してましたね。


でも中々に楽しめた企画でした。

どうやったらポイント取れるか? と考えながら作品作りする経験が初めてなので、それが面白かったです。

ちなみに私の最終ポイントは2674ptでした。

これも支援して下さった皆様のお陰です。

ありがとうございます。

あと、くれくれ煩くてすみませんでした。

ポイント入るのとか、ブクマ・感想は普通に嬉しいです。ありがとうございます。


あとはもう、クリスティナの思うままに作品を動かしていく感じになりますね。

ここからは完結まで頑張っていきたいと思います。


それでは。

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