55 お肉の歓迎
ブクマしてくださっている方へ。
度々、ジャンル変更して申し訳ありません。
現代要素やゲーム要素があっても、ローではなくハイファンタジー、という事で
ジャンルを『ハイファンタジー』へと変更しています。
今後ともよろしくお願いします。
「リンディスが恩があるって言っていた『お母様』は……セレスティアお母様なのね? ヒルディナお母様ではなく」
「……はい。その通りです」
「わかったわ!」
色々と納得できたわ!
リンディスが誤魔化してきた言葉の多くも。
「リンディスは……セレスティアお母様のことが好きだったの?」
「…………はい。主人として敬愛しておりました」
そういう意味じゃないんだけど!
まぁ、いいわ!
「私って、そんなにセレスティアお母様とそっくりなの?」
「ええ、瓜二つですよ。奥様もお美しい方でした」
「そうなのね!」
じゃあ、私が自分の赤髪を好きだったのは、本当のお母様の面影を感じたからかしら!
「お嬢」
「うん」
「……今まで話せず、申し訳ありませんでした」
「ん!」
どうして話してくれなかったのか。それは気になるわ。でも。
「リンディスが傍に居てくれるなら、それでいいわ!」
色々と理由があったのよね!
「それよりもよ!」
大事なことがあるわよね!
「そ、それよりも?」
「私が『傾国の悪女』になる理由、分かったわよ!」
「ええ……。いや、大事かもしれない内容ですけど、そんなにあっさり流します、この話を……」
「なんとなく分かってたんだもの!」
いくら何でも私の家での扱いはおかしかったものね!
むしろ納得したぐらいだわ!
「ブルームお父様とヒルディナお母様も大変ね! 私、娘じゃなかったんだもの!」
「た、大変で済ませます?」
「家族だと思われてないと感じてたら、本当に家族じゃなかったんだもの! 納得したとしか言えないわ!」
「そ、そうですかね。割り切りと切り替えが速いですね……」
「フフン!」
良い事よね!
「だからそれよりもよ! 私が悪女になる理由は、リンがブルームお父様に殺されたからなの!」
「……はいぃ?」
「婚約破棄された私が家に帰った後、リンと2人で駆け落ちしようとしてたら殺されちゃったわ!」
「……ちょっと意味が」
「だからリンディス! 貴方はお父様なんかに負けないように身体を鍛えるのよ! そうしたら破滅の未来、回避だわ!」
どう殺されたのかは分からないけど、リンディスが死ななかったらオッケーよ!
「は、はてしなく間違った解決方法な気がしますが」
「戦うのよ、リンディス! 騎士の鍛錬なんかロクにしてないお父様に負けるなんて情けないわよ! 戦って勝てば破滅を回避できるわよ!」
「いや、仮にその状況だとしたら、私がやられたのは、たぶん契約の縛りのせい……」
「せっかく騎士達が来てくれたんだもの! 今日からはリンの特訓もスタートよ!」
「人の話を聞いてない!」
フフン! これで悪女化対策は万全ね!
運命は戦って勝ち取るものなのよ!
今、屋敷に居るのは15人。
私、リンディス、ヨナ、セシリア、カイル。
侍女の女の子達が5人。
エルトの騎士が5人。
でも騎士達の内、2人はアルフィナからの手紙や報告書を持って帰る予定よ。
支援物資を受け取って紐解いて、領主の屋敷のお掃除を進めて。
ちゃんと使用人部屋の2つを使えるようにしたわ。
ベッドのシーツは、ちゃんと皆が使える分を用意してくれてたみたい。
でもお洗濯を考えると、使いまわしが必要で大変よね!
「私、野営の準備で寝てもいいわよ! シーツの予備を残しておかないと皆が大変でしょう!」
「……どこの侍女や騎士が主人を地面で寝かせて、自分はベッドで寝るんですか。寝言なら寝てからでお願いします、お嬢様」
「んん!?」
今、セシリアが凄く失礼じゃなかったかしら!?
まぁいいけどね!
「とりあえず、エルトへのお手紙と、陛下への報告書を書きたいわね!」
「そうだね、クリスティナ」
書類に向き合うなんて、ちょっと領主っぽいわね! ふふ!
今の私は領主気取りをしているだけだけど!
「騎士の子達は、どれぐらいでアルフィナを発つ予定?」
「……いえ、特に決められてはおりません。アルフィナの状況に合わせて、と申し付けられております。また今回の派遣は、王城からの指示ではなくベルグシュタット卿の独断による支援なので、特に制限もありません。すべてクリスティナ様の都合に合わせる事ができます」
「そう! ありがとう!」
急ぎではないのね!
色々と皆の意見を聞いて、まとめてからの報告の方が良さそうだわ!
「生活周りの向上もやりたいけど。アルフィナの外の人達が知りたいのは魔物災害の現状よね」
「……そうですね」
「それに私達だって領地の防衛がしっかり出来てなきゃ困るわ!」
「はい」
じゃあ、優先事項はやっぱり防衛と調査なのよね!
「まだ私の『予言』の【天与】では、アルフィナの魔物災害については視れてないの。だから地道に見回り調査と魔物討伐を続ける予定よ!」
地図を参考に『薔薇』で罠を仕掛けた場所とか、浄化薔薇の特性とかを皆に共有しておくわ。
「領地内で買い物できる場所が無いから、必要な物は領地の外に買いに行かなきゃいけないわ。前の時は、領地で栽培した『食用薔薇』と魔物素材を売ってお金にしたの。まとまったお金を作れる目途を立てて、必要な品が何かをまとめて……外に行く時は、魔物の襲撃に備えた部隊を作らないといけないわ」
まだ魔物災害の発生場所が、街の境界側じゃないとは決まってないからね!
「それと次の領地の目標は……短い期間で栽培できる作物の確保ね!」
お野菜の中には2、3カ月で収穫できる物があった筈。
アルフィナに適した作物かはまだ不明だけれど。
人数が増えたから食べる量も増えるし、食用薔薇と魔物肉だけでは厳しくなるかもしれない。
せっかく私の元に来てくれた子達だもの。
絶対にひもじい思いはさせないわよ!
「じゃあ……まず、私は魔物狩りに行くわ!」
新しい仲間や家族にお肉をご馳走するわよ!
「……どこの未開部族の歓迎方法なんですかねー……」
「なによ!」
アルフィナでは、お肉が最高のおもてなしなのよ!
そう決めたわ!
◇◆◇
「声、ですか?」
「ええ!」
とりあえず、馬に乗れる私、リンディス、カイルと。
報告の為にアルフィナを発つ予定の騎士2人と一緒に狩りに出掛けたわ!
「女神に選ばれた聖女を穢せ、血に塗れさせろ、陥れろーって、気持ち悪く纏わりつくような声よ。ルーナ様を狙っているくせに、やたらと私の周りにネバーって引っ付いてきたわ! 血に塗れているのは私だけでルーナ様は光の中でピンピンしてたけどね!」
おまぬけな『すとーかー』だわ!
「女神に選ばれた聖女……陥れて、血に塗れさせようと……」
「そうよ!」
「ひょっとして、その悪しき声が穢れさせたい『聖女』というのは、予言のアマネやラトビア嬢ではなくて、お嬢──」
あっ! 魔物が出て来たわ!
それも……熊よ! 小柄だけど熊!
「──フンッ!」
薔薇で四肢を絡めとって身動きを封じてから、馬を飛び降りて駆け抜け、そして熊に殴りかかったわ!
「フンッ! はぁ! やぁ!」
噛まれないように口の中にも薔薇を咲かせて!
手足も薔薇の蔓で雁字搦めにして!
あとは『怪力』でひたすら殴る!
殴って! 殴って! 殴って! ぶん殴るわ!
「──フンッ!」
『ゴッ……』
リンディス達が怪我をする前に……完全に仕留め切ったわよ!
他には仲間も居ないわ!
「大きいお肉よーっ!!」
これなら新しく来てくれた皆にもご馳走を振る舞えるわね!
「あ。違いますね、これ。聖女の『せ』の字もない」
「リンディス! やったわよ!」
「……うわぁ。ベルグシュタット卿の支援もこれまでですかねぇ……」
フフン! 私は満足して胸を張ったわよ!
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