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43 セシリアの指導

「カエル焼き〜、ふふふ〜」

「令嬢のテンションじゃないんですよねぇ……」


 何よ、リンディスったら。


「お嬢。カエルを見たら悲鳴を上げて怯えるぐらいが良いんですよ?」

「そんな事してたら逃げられちゃうじゃないの!」


 リンディスには、この領地での食糧の調達について考え直させなきゃいけないわ!


「ふふ。まぁ、良いじゃないか。クリスティナが元気で可愛いのだから」

「まぁ! 可愛いは褒め言葉よね! カイル!」

「勿論だよ、クリスティナ」

「フフン!」


 私は少し頬を熱くしながら胸を張ったわ。

 カイルは素直に誉めてくれるわよね!


「バートン卿。お嬢は調子に乗りやすい上にチョロいので、そういった言葉は控え目になさってください」

「何よ!」


 リンディスったら! リンディスが1番に私を誉めなきゃいけないのよ? まったくもう!

 あとチョロいって何よ!


「とにかく倒したカエルを持ち帰るわよ!」

「うん。それは良いんだけど」

「なぁに? カイル」

「どう持って帰ろうか?」

「ん!」


 森のそこかしこに倒したカエルが散らばってるわね!


「やっぱり馬車は持って来るべきじゃない?」

「馬車というか、この場合は荷車が欲しいですね」

「そうね!」


 どう運ぼうかしら! 薔薇で持ち上げるのはいいけど、その薔薇も運ばないといけないのよね!


「薔薇の蔓で包んで、それを馬車を引くのと同じように引き摺りますか?」

「そうしましょう!」


 薔薇の蔓を編み込んで袋にするわ。

 それから地面に擦れないように『下』に花を敷いて、と。


「じゃあ集めたら今日は戻るわよ!」


 しばらく倒したカエルの魔物を回収してから、私達は引き返す事にしたわ。


「…………」

「なぁに、リンディス?」

「いえ、その。見た目が」

「見た目?」


 馬で引っ張れるように蔓を伸ばした先には薔薇の蔓で出来た袋があるわ。


「穴だらけの袋にカエルの死骸を大量に詰めて……血と内臓を零しながら馬で引き摺る令嬢とは……」


 ちょっとグチャってしてて、ドロってしてるけど洗えば食べられるわよね!


「後でちゃんと洗うわよ! あと浄化薔薇も咲かせておくわね!」


 私は『袋』にも光る薔薇を咲かせたわ。


「浄化すれば良いって問題じゃないんですよねー……」


 もう! リンディスったらお小言が多いわね!


 それで戦利品をカイルの指示に従いながら川で洗って処理したわ。

 作業は薔薇を操ってやるから、そんなに汚れないわよ。


「可食部分はそれなりかな。身体が大きい分だけ多いね」

「ふふふ! 今日はご馳走ね!」


 ヨナやセシリアは喜ぶかしら!


「セシリアさんは、こういうのは平気なんですか、バートン卿」

「もちろん」

「そうですか。あとはヨナですかね。逞しいと良いんですが」


 お肉だもの。きっと喜んでくれるわよ!


 それで、私達は領主の屋敷に戻って来たの。

 まだ森の浅い部分だから、すぐに帰って来れる距離ね。


「……カエル肉ですか。では調理をします」


 食用薔薇で野菜を摂って、お肉も食べて。

 セシリアは今ある材料を使ってスープも作ってくれたわ!


「ふふふ、美味しいわね!」

「うん! お姉ちゃん!」


 ヨナもやっぱり喜んでくれたわよ!

 ……なんだか、とっても良い感じ。


「これが家族で一緒に食べるご飯なのね」


 テーブルを用意しての食卓じゃなくて、庭で焚き火をしながらの食事だけど。

 ちょっとした幸せよね!


「…………」

「…………」

「…………」

「……お嬢」

「うん? なぁに?」


 あら。リンディス以外の3人が驚いたようにこっちを見ているわ?


「お姉ちゃんって貴族のお嬢様じゃないの?」

「そうよ? 侯爵令嬢よ。フフン!」


 まぁ、正式には私が爵位を持っているワケじゃないのよね!


「……クリスティナには兄妹が2人居た筈だけど」

「ええ! リカルドお兄様と妹のミリシャね!」


 元気にしているのかしら?

 きっとミリシャは大喜びでしょうね。

 憧れだったレヴァン殿下と婚約できる事になったのだもの。


「リンディス殿」

「……まぁ。流石に暗殺を依頼するまでとは思ってなかったんですよ」

「そうかい」

「うん?」


 何の話?


「……ご兄妹とは食卓を囲まれた事はなかったのですか? お嬢様」

「うん? 無いわよ!」

「……何故」


 何故って。


「王妃教育のマナーがあるから?」

「マナー?」

「そう。王妃になる以上は、そういう食事に慣れないといけないからって家庭教師やお父様、お母様も言っていたわ。だから、だいたい食堂に行っても1人で食事だったし。勉強の時間が1日に沢山だったから、外に出るよりお部屋で食べるのがメインだったわね!」


 だから、ちょっとした憧れよね!

 こうして皆で食べるご飯って!

 夢が叶ったみたいな気分よ!


「でも部屋で食べてるとリンディスがいつも姿を隠して忍び込んで来たの! ふふふ! 声だけリンディス!」

「……そうですね」

「そうか。……うん」

「……人の家の事はとやかく言えませんよ、兄さん」

「そうだね、セシリア」

「僕も、皆で食べるご飯、嬉しいよ、お姉ちゃん」

「ふふふ! ヨナは良い子だわ!」


 この4人は、どんな魔物からも守らないといけないわよね!

 その為なら多少の無茶はして見せるわよ!


 それから、翌朝ね!


「……お嬢様。次の魔物の駆除が終わりましたら、他領へ行って魔物の素材や薔薇を売りましょう。それから必要品の買い出しです」

「ええ!」


 何が今の私達に必要かしら?

 予算があるから買う物は選ばないといけないわよね!


「それに際して多少の手解きを」

「手解き?」


 私は首を傾げたわ。


「はい。……街に行くとお嬢様は絡まれます。絶対に」

「絶対なの?」

「絶対です」


 そうかしら? ハンターギルド以外でも絡まれるのかしら?


「その際ですが、いくつかのあしらい方のパターンを覚えておいて下さい」

「絡まれたらぶん殴るわよ!」

「……勿論、それもパターンのひとつです」

「フフン!」


 そうよね!


「パターンに組み込まないで欲しいんですけどねー……」


 リンディスが小声でまた何か言ってるわね!


「良いでしょうか。これはお嬢様が貴族の居る場所に出た際にも使えるあしらい方です」

「うんうん」

「……女を貶す手合いは、どうせ汚れてるだの何だのと(のたま)ってきます」


 うんうん。


「お嬢様にもそうやって言い寄って来る男がいることでしょう」

「あ、そのタイプは殴っても良いですよ、お嬢」

「分かったわ!」


 リンディスも納得なのね!


「……殴るのと組み合わせてください」


 うん。


「こう手を掴まれた状態で……このように動いて」

「うんうん」

「……優雅に相手に尻餅をつかせます」

「うん」


 カイルが私を椅子に押さえつけたような動きね!


「尻餅をつく事自体が男性にとっては屈辱的な筈ですが……その後にすかさず、股間の下辺りの地面を踏み抜いて下さい」

「うん」


 それから?


「それからお嬢様の【天与】で手を光らせて……何かその場にある硬い塊を薔薇で掴んで持って来て下さい」


 うん?


「硬い物であれば良いでしょう。その後、地面に落としてから……お嬢様の【天与】を足に宿らせ、踏み潰して砕いて下さい」


 うんうん。


「そして一言。『踏まれて興奮する殿方も居るそうなのだけれど、貴方が私の趣味に付き合ってくださるの?』……と。見下すような目付きで冷ややかに」

「分かったわ! 今度やってみるわね!」

「……はい。楽しみにしております、お嬢様」


 ふふふ! セシリアは色々と考えているのね!


「一体これは何の授業なんですかね……」


 リンディスがまた小言を言っているわ!

 いつも大変ね!

 困った事があれば、ちゃんと言って良いんだからね!



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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっとセシリアさん、何教えてるんですかねw
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