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40 魔物の解体

「追って来ている?」

「……いいや。だが念の為、もっと離れよう」

「ええ!」


 ひとまず魔物達の戦いの初戦は勝利したわね!


「川沿いまで行けるかい?」

「問題ありません」


 森を抜けて、馬車を川沿いの道へ向けて走らせる。

 今回は収穫があるわよ!


「どうするの? カイル」

「うん。まぁ、普通に獣を狩ったと思えば……血抜きとかの処理をしないとね」

「狼肉ね!」


 美味しいのかしら!


「クリスティナの浄化薔薇も大事だよ」

「うん?」

「いや、ほら。魔物の肉だからね」

「浄化しないとね!」


 どこまで効果があるのかしら?


「殺した時点で瘴気は霧散するのか、それとも濃くなるのか」

「色々と研究しがいがあるわね!」


 ふふふ! でもね。


「とにかく、皆無事で良かったわ!」


 私達は、そのまま川沿いまで辿り着いたわよ。

 薔薇で掴んで手に入れたのは角付き狼5匹分。

 それをカイルとセシリアが率先して処理してくれたわ。


 もちろん私は浄化薔薇を咲かせて、その死体から瘴気を払ったの。

 血抜きをして、腸を取り出したり内臓を処理して。


「お嬢は見なくて良いんですよ」

「どうして?」

「どうしてって……令嬢が見るものじゃないですし」

「でも私も食べるわよ?」

「いや、それはそうですが」


 私は首を傾げたわ。こういうの見る機会って中々無いからね!


「カイル達は凄いわね!」

「……まぁ、血になれるには手っ取り早いし、これが合法だからね」

「経験豊かなのね!」

「……物は言いようですね」

「うん?」

「クリスティナはそういう人だよ、セシリア」

「……存じています」


 何かしらね!


「お肉、食べられそう?」

「うん。この狼達は変異型だね。という事は、その『大地の傷』とやらを浄化できれば、悪影響を抑えられるかもしれない」

「そう!」


 でも、それがもし山奥にあるとしたら。

 狼の群れや他の魔物の襲撃を躱しながら、確証もなく、見たことも無い『大地の傷』を探して山を駆け回らないといけなくなるわ。


「……あんまり現実的な戦略じゃないわね!」

「はい。ですが魔物の襲来が来る方角が固定なら……、こちらの領域を拡大しながら調査する形でも?」


 薔薇の壁を作って安全地帯を確立。

 そうして徐々に調査領域を広げていくべき……かしらね?


「ただの獣の群れと変わらないなら、やりようはある。大規模な襲撃となれば分からないが」

「どこまでが聖女の予言かの問題ね」


 ここから領主の屋敷までは距離がある。

 角付き狼の群れに襲われた場所からはもっと。


「この近くに防壁を作ってみる?」

「……いえ。一旦、近隣の集落跡まで下がって、そこに拠点を設営しましょう。それから」

「うん」

「集落跡に残されている物資を掻き集めます」

「物資?」

「はい。バートン卿が持っている槍のように錆びた農具も溶かせば利用出来ますから。ヨナが居てくれれば」

「ヨナ! 凄いわね、貴方!」

「う、うん。ありがとうお姉ちゃん」


 ふふふ。皆、優秀だわ!


「利用できるものは少なくても、それを補えるだけの力がある。良いね。クリスティナ。僕達には希望があるよ」

「フフン! みんな、よくやってくれてるわ! 褒めるわよ!」


 それはそうと、お肉よね!


「皮を剥いで……狼の毛皮は利用しよう。角が丈夫なら、これも武器にできるね」

「はい、兄さん」


 少ない道具でもカイル達は上手く活かしてくれているわね!


「余った? 内臓とかはどうするの?」

「それは毒に……じゃなくて。肥料に……出来るかな?」

「処理場が欲しいところですね」


 今、毒って言ったわね!


「微妙に職業病が出ている気がして来ました」

「そうね!」


 カイルの本業はお医者さんなんだけどね!


 解体作業を済ませて近くの村まで、取り分けた狼の……素材? を運び込んだわ。

 肥料として貯めれそうなモノはまとめて処理して、それからお肉の加工ね。


「薔薇よ!」


 開放的な集落に薔薇の囲いを作っていく。

 今夜の寝泊まりが出来るようにしないとね!


「お嬢。あまり無理はなさらないでください」

「してないわ!」

「では、張り切り過ぎないように。今回の一件で気を立てた魔物が山から降りてくるかもしれません」

「ん!」


 そういうこともあるのかしら?


「お嬢の体力は常に余裕があるように心掛けてください。ギリギリまで働くとかはナシですよ。お嬢の力は我々の生命線ですからね」

「……わかったわ!」


 リンディス達が居てくれて良かったわよね。


「私、皆に感謝しなくちゃいけないわ」

「はい?」

「だって本当なら私1人でこのアルフィナに来ていたんだもの。そうしたら、まず何をすれば良いかも分からなかったわ!」


 でも今はやるべき事や、出来る事がちゃんとしていて分かりやすいわよね!


「……はい。お嬢の力は類稀(たぐいまれ)なモノですが、やはり単身での派遣は解せない話です。そもそも我々がこうして無事にここに辿り着けているのなら、従者や騎士団をお嬢に付けていたって何の問題もなかった筈」


 そういえばそうね!


「やっぱり聖女の嫌がらせなのかしら!」

「無論、信頼できる騎士団や従者であれば、という前提になるのですが」

「……どうかな。わざわざ暗殺を企てていたり。少なくともクリスティナの生家のマリウス家からの支援は無い方がマシだったと思うよ」

「……そうね!」


 ミリシャと聖女がカイルの家に暗殺を頼んだのよね。


「……或いは、それが原因で起こる惨事の予言だったのでしょうか?」

「うん?」

「いえ、その。つまり暗殺……と言いますか。お嬢を騎士団の手で亡き者にしようと試みた結果、そうするとお嬢に返り討ちに遭います、という予言です」


 えっと。


「じゃあ、私に従者や騎士団が付いてたら魔物や災害が原因じゃなくて、『私が』全滅させたかもっていう予言?」

「……はい」


 うーん。だから、つまり。


「……失礼ね!」


 それって私が『悪女』なのかしら!

 命を狙われても返り討ちにするなって事なの?

 ……あの聖女なら言いそうね!


「クリスティナの私兵みたいな僕らや、信頼出来る人達なら付いて来ても問題なかったっていう事だね」


 私兵はおかしいと思うけど。


「私兵じゃなくて仲間ね!」

「うん。そうだね。はは」

「フフン!」


 まぁいいわ! 考えても仕方ないもの。


「とにかく今夜はお肉を食べるわよ!」


 皆に栄養を摂って貰わないとね!


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