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27 盗賊とメイド

 薔薇の売り上げは好調。

 元手が掛からない花だし、黒字ね!


 それなりのお金が入ったからヨナの為の買い物をするわ。


「でも」

「これから一緒に行くんだから。貴方の物を買うのは普通のことよ」

「……うん」


 身寄りのないヨナ。

 私もそうだけどリンディスが特に気に掛けてくれているわ。


「お嬢の持ち物もしっかり増やしましょう」

「んー」


 リンディスったら買い物する度にこれなんだもの。


「年頃の娘として惨めな思いなど欠片もさせません。させてなるものか」

「なんで私よりリンの方が本気なの?」

「お嬢が豊かになるだけで、お嬢の敵が悔しい思いをするのですよ」

「ふぅん……?」


 そう言われても困るわね!


「薔薇で土を掘り返せば畑を耕したり、罠を作ったりも出来そうね」

「……農作業の広範囲のケアと、魔物対策ですか。お嬢の負担が大きい気がしますが」

「そうね。私1人の力で立て直しても長続きしないわ」


 人には自分達の生活ってものがあるからね。

 私1人で全てを解決しても、きっと良くないのよ。


 ああだこうだとリンディスとアルフィナに付いてからのアイデアを話し合う。

 こんな時間だけでも……楽しい時間だったわ!


「誰か! 誰か助けて下さい!」

「ん?」

「あら?」


 悲鳴だわ!


「行くわよ!」

「ちょっ、早いっ、お嬢! 1人で行かないで下さい!」

「すぐ付いて来なさい!」

「こっちは馬車を引いてるんですからね!」


 だから馬だけで身軽な私が先に行くんじゃないの!

 声のした方へと馬を走らせると、そこは複数人の男に追われてる……メイドが居たわ!


「……メイド?」


 なんでかしら!


「そこの貴方達! 待ちなさい!」


 私はとりあえず全員を止まらせるわ。

 言って止まるような連中じゃないみたいだけど。

 男達は……全員、仲間のようね。


 メイド以外も追われてる男が居るワケじゃなさそう。

 身なりは普通……かしら? 貴族には見えないわね!


「じゃあ、こうね!」


 薔薇を男達とメイドの間に咲かせ、壁を作るわ!


「なっ!?」

「なんだ!?」

「えっ……」


 驚いて固まるその場の全員。


「なんで追ってるの? なんで追われてるの? さっき悲鳴を上げてたわよね!」

「た、助けてください!」


 とはメイドから。

 私は彼女に頷いてから薔薇の壁の向こうの男達に目を向けたわ。


「で? 貴方達から言う事はある?」


 一応聞いておくわね!

 この前の捕まっていた女の子達みたいに、被害を受けた側が報復してる最中だったんなら悪いもの!


 フフン! 私も状況を分析できるようになって来たわ!


「何だぁ、てめぇは!」

「その女は俺達が狙ってんだよ!」


 狙ってる?


「男が5人掛かりで? なんで狙ってるの?」

「てめぇには関係ねぇ!」


 随分と余裕がないわね!

 フフン! 私の余裕を見習って欲しいわね!


「じゃあ」


 とりあえず殴っても問題なさそうね!

 誰も彼女が悪いみたいな言い分は持ってないみたいだし!


「はぁっ!」


 私は馬から飛び上がる。

 そして薔薇の蔓を伸ばして上側にある太い木の枝に捕まって、薔薇の壁を飛び越えたわ!


「なん……」

「やぁっ!」

「ぐおっ!?」


 そして勢いのまま男達の1人を蹴り飛ばしたわ!


「フフン!」


 綺麗に着地を決めた私は胸を張ったわ!


「貴方達に勝ち目はないわよ! よっぽどの事情でもないんだったら大人しく引きなさい!」

「このっ……」

「はっ! よくもまぁ女1人で俺達の前に立ったなぁ!?」

「お前ら、この女も一緒に攫っちまうぞ!」


 攫う? 攫うって言ったわね!

 じゃあこいつら悪者ね! 王国の治安が悪化しているわね!


「フンッ!」

「ぐげっ」


 容赦しなくていいみたいだから、全員ぶっ倒すわよ!

 尋問は後でリンディスに任せるわ!


「てめ、」

「フンッ!」

「おごぉっ!」


 襲い掛かって来た体格のいい男も一撃で仕留めていくわ!

 今更怖気付いても、もう遅いわよ!



◇◆◇



「……で、暴漢達を仕留めたと」

「フフン!」

「僕達が駆けつけてくる間に?」

「そうよ!」

「攻撃性が増してるんですよねぇ……。【天与】って人格に影響とかあるんですかね」


 何か失礼ね! 私は元からこういう性格よ!


「あ、あの」


 薔薇で拘束した男達を前にして、メイドが声を掛けて来たわ。


「助けてくれてありがとうございました!」


 頭を下げるメイドの女性。


「フフン!」


 私は胸を張ったわ。


「あの。差し支えなければ何故襲われていたのか聞いてもよろしいですか?」

「それが、その。私にも分からなくて……」

「わからない?」


 通りすがりの強姦魔かしら。


「今日はもう本当に最悪の日です……はぁ」

「襲われた理由は分からないそうですが、何やら事情がおありのようですね?」

「はい! そうなんですよ! 聞いて下さいますか!?」


 あら。なんだか愚痴りたい気分なのね!

 とても分かるわ!


「私、仕えていた家で……耐えられない扱いを受けていて。ご主人様は女遊びばかり……それでとうとう手を出されそうになって。つい」

「つい?」

「……ご主人様を殴ってしまって。それで……屋敷を追い出されてしまいました。私物を取りに行く事も出来ず、このままの姿で」


 あら。じゃあ私と似たようなものね!

 親近感が湧くわね! ふふ!


「それで行く宛もないまま、トボトボと歩いていたら街を出てしまい、森の街道を歩いていた所で」

「襲われて逃げていたと」

「はい……」

「大変だったわね。でも」


 私は王妃候補スマイルでメイドの肩を抱き寄せたわ。


「もう大丈夫よ。貴方を傷付ける人はもう近寄らせないから」

「────」


 いい匂いがするわね。

 お風呂には入った後だったのかしら。


「あ、あの……! お嬢様は……貴族様

のようですが」

「ん?」

「お嬢、胸元、胸元」


 黄金のペンダントの【貴族の証明】がまた胸元から出ていたわ。

 まぁ馬の上から飛んだりしたものね!


「私を雇っていただけませんか!?」

「……雇う?」


 侍女、メイドを?


「わ、私はこの通りの格好で、その手の仕事もこなして来ました。ですが、もうこの服以外に持ち物もなく……。他に仕事はありません。ですが」

「ですが?」

「……もう男の主人には仕えたくありません……」

「んー」


 そうね。そういう事情ならいいけど。


「雇うのはいいわ! でも、しばらくの食べ物の面倒を見てあげるぐらいしか出来ないと思うわよ!」

「本当ですか!?」


 パァッと瞳を輝かせるメイド。

 この子は黒い髪に黒い瞳をしていて……なんだか幼い頃に遊んだ男の子を思い出したわ!


「ありがとうございます! お嬢様!」

「フフン! 構わないわ!」

「……はぁ。では女性ですので、お嬢が馬車で少し面倒を見て上げてください。私はこの男達を適切に処理しておきます」

「お願いね! ……油断して襲われたりしたらダメよ!」

「はい、かしこまりました、お嬢」


 良く分からないけどメイドも仲間になったわよ!


 まぁ、しばらく保護した後で、何か都合のいい仕事でも見つけてあげられると良いわね!



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