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23 新しい同行者

 私とリンディスは邪教徒達のアジトで『触手の邪神』を倒した後、そこに捕まっていた女の子達と少年ヨナを助け出したわ。


「ひとまずここにあるものを使って体力を落としている女性陣の療養を。毒などはないよう、しっかり診ますが早めに街に連れて行きたいですね」

「ええ、そうね」


 12人居る女の子達を連れて街を目指す必要があるわ。


「貴方達、家はどこかしら? いつ頃、どこから連れて来られたの?」


 連れてこられた場所や身分はかなりバラ付いてるみたい。

 これじゃ家に帰るのも大変ね。

 それに身寄りのない子までいるみたいなの。


「あの……お姉様」

「うん?」


 私かしら。私よね。


「どうしたの? 平気?」

「……私は大丈夫、です。その。この男達はどうするんですか?」

「どうって」


 私はリンディスに目を向けたわ。

 ちなみに私のすぐ傍にヨナが居るわよ。


 私の服を可愛らしく摘んでいるの。

 3つぐらい年下の男の子。まだまだ可愛い盛りというヤツね!

 背丈も私より小さいわ!


 銀色の髪とアメジストの瞳でとっても綺麗な顔立ちの子よ!


 フフン! なんだか弟が出来たみたいね!


「……縛ったまま街に連れて行くか。厳重にここに捕まえたまま、騎士団などに報告して後を任せるかですね」


 うんうん。と私は頷いたわ。


「じゃあ……蹴っていいですか?」

「うん?」


 蹴るの? この男達を?


「いやそれは、」

「いいわよ! 存分に蹴りなさい!」


 きっとこいつらにムカついてるのよね!


「ありがとうございます、お姉様!」

「反撃できないようにしておくわね!」

「はい! ありがとうございます! 皆!」


 それから元気な女の子達は『ふざけるんじゃないわよ!』『よくも!』と口々に怒鳴りながら縛った男達を蹴り続けたわ!


 彼女達が足を怪我しないかが心配ね!


「ああ、容赦ない。はぁ……。まぁ自業自得ですので庇いはしませんが。女性陣が結託してくれているのは、むしろ有難いですね」


 牢屋に捕まっていたけど彼女達は囚人じゃなくて被害者だからね!

 そこまで警戒しなくていいわよ!


「ひぃ……」


 でもヨナはその光景を見ながら私の背中に隠れたわ。


「ヨナも蹴る?」

「い、いい、です」

「そう? 蹴っておいたら気が楽になるわよ!」

「お嬢は何を薦めているんですか……」


 リンディスが溜息を吐きながら事態を見守っているわ。


「彼女達を連れ去る為に馬車などを使ったかもしれません。奪いましょうか。馬があれば、それも奪ってひとまずは彼女達と街を目指しましょう」

「そうね!」


 ヨナがぎゅっと私の服を掴んで頼ってくるわ。

 フフン! 可愛いわね!


「ヨナ。私は、私も魔族です。リンディスと申します」


 リンディスがヨナに向かって挨拶をする。


「あ……は、はい」

「落ち着いて。我々はキミを傷付けるつもりはありませんから。……かつて私は、この国に奴隷扱いで連れて来られました。ですので、その。両親と呼べる人はこの国には居なかったりします。……貴方はどうでしょうか? 行く当てはありますか? あるのなら私が責任を持って貴方を親元へ送り届けましょう」


 奴隷? リンディスが?

 初耳ね! そんなの私がすぐに買い取るんだから!


「……、……ない。僕も、そんなの」

「やはり。……お嬢。この子は」

「一緒に連れて行けばいいのね!」

「え?」


 身寄りが無いなら、きっとリンディスが傍に居た方がこの子も落ち着く筈よ!

 並んで立てば兄弟に見えるもの。


「感謝します、お嬢」

「フフン! 旅は道連れというヤツね!」


 ヨナを連れて行く事にしたわ!


 それから私達はアジトで見つけた馬車に女の子達を乗せる。

 数が多くて窮屈だけど、1人も残していけないからね!


 リンディスが馬車の運転をする御者になり、私は元から連れて来ていた馬にヨナを乗せたわ。

 2人乗りね!


「あっ」

「ふふ。馬に乗るのは初めてかしら?」

「そ、そうです、し、その」

「うん?」


 危ないから後ろに乗せるんじゃなくて私の前に乗せて、両手でヨナを抱えるようにして手綱を持ったわ。


「…………!」

「ふふ」


 赤くなっていて可愛いわね!

 でも体調が悪いなら無理はさせられないわね!



◇◆◇



「リンディス。あの村の夫婦は?」


 私の寝込みを襲った疑惑があるけど。


「しっかり介抱しておきましたよ」

「介抱?」

「はい。村に戻った際、お嬢は居ないし、あの夫婦は変な場所で眠らされているし……。あの邪教徒達は、門の壊れた村に忍び込んで薬か何かでお嬢ごと眠らせたみたいですね」


 ふぅん? そうなのかしら。


「本当に? あの男達、私に男は触れてないみたいな事言ってたけど」

「そうなんですか?」


 でも覆面服を着ていた彼らに女は居なかったわよね。


 ……あそこで私に変な気遣いをするような男達じゃないと思うんだけど。


「嘘を吐かれたんでしょうか。馬も剣も無事でしたし、夫婦は無関係だろうと思い込みも」

「確かめておくわね!」


 私達は山を降りて、例の村に寄る事にした。


 ……結論から言えば夫婦もグルだったみたいね。


 でも、男達ほどの教徒でもなくて、生活に困った上で協力していた……みたい。

 私を運んだのは妻の方だったようよ。


 とても残念だけれど……。でもまぁ馬と銀の剣を盗まずにリンディスに返したみたいだし。

 少しの間でもお世話になったから強く言及しないでおいてあげるわ!


「……暮らしが貧しいと、あんな怪しい奴等にも手を貸すしかなくなるのね、リン」

「まぁ……そうですね。正しさや善意だけではお腹は膨れませんから」

「そう」


 私は山の向こうの空を見上げたわ。

 アルフィナ領があるのは向こうの方ね。


「……少しアルフィナに向かうのを急ぎましょうか」

「はい。お嬢。今のお嬢ならアルフィナの災害にも対処できる希望があります」

「そうね!」


 ルーナ様がいずれ訪れるかもしれないけど。

 私にも『浄化』の薔薇が使えるようになったんだもの!


 村を越え、街に着き、領主との交渉に赴いたわ。

 女の子達の身元の引き受けと、家への帰還の援助。そして捕まえている男達の対処ね。


 幸いと言うべきか、領主と男達に繋がりがあったワケではないみたい。


 一応は『そういう事』もあるかと、リンディスに隠れて調査して貰ったから人道的な対応を期待できそうよ。


「私はクリスティナ・マリウス・リュミエット。……いずれ伝わるかもしれませんので正直に話しておきますが、レヴァン王子殿下の『元』婚約者です」

「クリスティナ様……。はい、はい。名前は知っております。しかし元ですか?」

「王子には婚約破棄されてしまったの」

「え、ええ?」


 まだここには伝わってないのね!


「予言の聖女に色々言われてしまいまして。聖女の言葉を信じて婚約破棄まで言われたから……王子殿下と聖女を殴ってやったわ!」

「お、王子と聖女を?」


 フフン! と胸を張る私。


「お嬢。言葉遣い」

「……はい。ですから今、不敬罪で王都追放の身ですのよ」

「そ、それは……ええと。痴話喧嘩の範疇にはならないので? 婚約者だったのですし、他に女も? 抱えられていたとおっしゃるなら、怒られても当然のような……」


 痴話喧嘩? うーん。そうなのかしら。


「そんな言葉が出る辺り、貴方の家ではきっと夫婦仲が良いのね!」

「あ、あはは。いやまぁ、はい。良いと思いますよ」

「ですから……まぁ気にされないのであれば良いか」


 どうやらここの領主は人柄の良い人みたいね!

 ちなみに爵位は子爵だそうよ。

 だからマリウス侯爵の娘の私に敬意を払ってくれるみたいね。


「被害に遭われた女性達は責任を持って私の家が面倒を見ましょう。行く当てのない子はウチの侍女として雇っても構いません。もちろん本人が望めばですが」

「ええ。そうしていただけると助かります」


 いきなり12人もの人間を養うのは、かなり大変だと思うけど、快く取り合ってくれたわ。


 リンディスも女性達を迎える人々を観察して、納得してくれたみたい。

 うん。問題はなさそうね!


「……私もあれぐらいの人数なら、パッと養えると言えるぐらいになりたいわね」


 その為には屋敷や金銭、人を養えるだけの侍女……沢山、沢山必要なものがあるわ。


 簡単に手に入るものではないわね。

 マリウス侯爵家を継ぐのはリカルドお兄様だし。


 リカルドお兄様が爵位を継いだら、きっと今の私には何も残らないでしょうね。


「アルフィナの領主は国外へと逃亡した筈で、まだ代理の者がアルフィナに向かったかは不明瞭です。代理が居なかった場合は、王命で派遣されたお嬢にかなりの裁量権が委ねられる筈ですが……」

「そうね。でも、領地の裁量があっても……まずそこに人が暮らしていてこそよ」

「……はい」


 アルフィナ領。今どんな状況なのかしら。


「リン、ヨナ。じゃあ、行くわよ!」

「はい、お嬢」


 ところでだけど。


「ひとまず『馬車』を手に入れたわね!」

「……ええ、そうですね。あまり由来のよろしくない馬車ですが」


 男達のアジトから女の子達を運んで来た馬車。

 この領に接収される予定だったけど譲って貰ったのよ。馬も一緒にね!


 それから当面の食糧まで譲って貰ったの!

 ここの領主のヘルゼン子爵様には頭が上がらないわね!


「ヨナ」

「う、うん」


 私にずっと付いて来ているヨナに視線を向けたわ。


「ヘルゼン子爵様は、良い人みたいだから。貴方が望むならここで落ち着かせて貰う事も出来るわよ」

「……、……それは」

「……お嬢。他のお嬢様達はともかく彼については私が面倒を見たいです」

「リンが?」

「はい。連中の資料によれば彼は魔術の素養が高いらしい。ですが今の彼は魔術を未習得であり、未熟です。……この国で生きていくなら手に職を付けておきませんと」


 リンディスのヨナに向ける目は慈愛のそれだったわ。


「リンが魔術を教えてあげるの?」

「はい。しっかりと魔術を学び、教養を身に付ければ、将来だって彼が自由に選べます。この先、私のように生涯仕えたいと思う相手だって出来るやもしれません。そのサポートをしてあげたいのです」

「そう! ……でもヨナがどうしたいかが1番大事よ! しばらくリンが面倒を見るのがベストだとしてもね!」


 だから私はまたヨナと視線を合わせたわ。


「ぼ、僕は……お姉ちゃんに付いて行きたい、です」

「じゃあ決まりね!」


 こうして私は、新しい馬と馬車。そして魔族と人族のハーフの少年・ヨナを一緒に連れて行く事になったのよ!



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