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21 いずれ悪女になる女

1章完結です。

「これは……!?」

「薔薇、かしら」


 光る薔薇よ。ふわりと甘い匂いが辺りを満たしたわ。


 その薔薇は触手の大半を絡め取り、或いは貫いたの。

 それだけじゃないわ。


 まるで水を火に焚べたみたいにシュウシュウと音を立てて、邪神の身体から黒い煙が立ち昇っているのよ。


 しっかりと傷を負っているみたいね。


「何これ、リン?」

「……いや、どう見てもお嬢がやっているんですが」

「ええ!?」

「驚きたいのは私の方ですよ」


 何かしらね、これ!


「とりあえずそこから離れなさい、リン!」

「え、ええ……」


 リンディスが薔薇によって動きを止められている邪神から逃れようとすると、薔薇の蔓が動いて自然と道を開けたわ?


「えっと」

「なんでかしら?」


 私は首を傾げる。

 そうしたら私の横に咲いていた薔薇の蔓も一緒になって折れ曲がったわ??


「完全にお嬢の動きや考えとシンクロしてますけど」

「なんでかしらね!」


 じゃあ、これって私の?


「【天与】……なんですか? お嬢の」

「3つ目の【天与】ってこと? 私1人に??」


 そういうの、もう少し複数人に分けた方が良いと思うわ!

 そうしたら私もお友達が出来て嬉しいし!


「さ、さすがはお嬢?」

「フフン!」

「これは流石に褒めるしかありませんね……」

「もっと普段からも褒めなさい!」


 私ってきっと凄いのね!


 ……でも【天与】って授かり物に過ぎないのよね。

 これは私自身が培った力じゃない。


 お父様やお母様、お兄様だって私が【天与】を授かっただけでは褒めたり喜んだりしてくれなかったんだもの。


 だから3つ目の【天与】を授かったところで、それが私自身の功績じゃないことは肝に銘じておかないといけない。


 エルトが実力で私に負けたワケじゃないみたいにね!


「それはそれとして、この力が私の力なら!」


 薔薇よ。とりあえず邪神をもっと拘束して見せなさい!


 私がそう願うと薔薇の蔓が蠢いて触手を雁字搦(がんじがら)めにしていくわ!


「これなら殴り易いわね!」

「えっ、殴るんですか? このまま薔薇で倒すのでは?」

「こっちの方が手っ取り早いわ!」


 光を纏った私は思い切り走り抜けて、薔薇で捕まえた邪神の中央に右拳を叩き込んであげたわよ!


 ドゴッ! という確かな衝撃!

 そのまま邪神の身体の中央部が弾け飛んだわ!


「フフン! ちゃんと殴れるなら問題ないのよね!」


 問題はここからでも邪神が回復することだわ!


「あら?」

「……回復しない?」


 そうね。それどころか結合の解けた触手の先端が薔薇に掴まれている所から溶けて、黒い煙になっていくわ?


「まさかこれが『浄化』……なんでしょうか?」

「浄化!」


 ルーナ様が出来るだろうソレを私も?


「そう言えばこの薔薇が咲く前に『守ったり浄化したりしたい』って【天与】に願ったわね!」


 じゃあ出来るようになったのかしら!

 そうならとっても便利だわ!


 アルフィナ領での魔物災害だって何とかなるかもしれないもの!


「……とにかくお嬢。可能なら……ここで、この魔物を確実に仕留めておきましょう。薔薇に命じて? 浄化までしてみてください」

「分かったわ! 薔薇よ!」


 浄化を願うと薔薇が再び輝き始めたわ!

 そして溶けていく邪神の全て。


 ……本当に浄化できているみたい!


「凄いわね!」


 じゃあこの薔薇は私が戦っている間、他の人を囲って守ったり出来るのね!

 きっとルーナ様の『聖守護』には劣るんでしょうけど……同じような事が出来るようになったわ!


「フフン!」


 霧散していく邪神を前にして、私は胸を張って勝ち誇ったの。


 ……やってやったわね!


「お見事です。お嬢。まだよく理解してませんが」

「それは私もね!」


 でも結果が良ければきっとそれでいいわ!


 それから、ひとまず邪教徒の男達の生存確認と捕縛をリンディスとしていったの。


「残念……かは、さておき。周辺に居た者達は、かなりの人数がやられたようですね」

「そう」


 同情はしないわ。自業自得だと思うもの。

 それでも何人か生き残っていた連中を『薔薇』で縛り付けておいた。


「便利ね、この薔薇の【天与】!」


 色々と使い道がありそうだわ!


「解けないんですかね。……けっこう丈夫そうだな。刃物なしではこの薔薇を千切るのはキツそうだ」

「便利ね!」

「そうですね。これは色々とやれる事が増えたと思います。この薔薇の使い道を研究していけばアルフィナの問題もお嬢が解決できる……」


 フフン! なんだか幸先いいじゃないの!


「お嬢。この男達を更に薔薇で囲えますか? 助けが来ても容易に逃げられないように」

「やってみるわ!」


 そして淡い光と共に薔薇が咲き誇り、また辺りに甘い香りが漂った。


 出来るわね!


「……ここはこれで良いでしょう。お嬢、捕まっている人々を助けに行きましょう」

「ええ!」


 私とリンディスは男達をその場に残してアジトに向かったわ!


 ふふ。潜入調査ね! なんだかワクワクするわ!


 それでアジトに潜入した私達はバッタバッタと男達を殴り倒して薔薇で縛り付けていったの。


「……潜入とは……?」


 案内役のリンディスがまた遠い目をしているわね!


「フンッ!」

「ぐぁあっ!」


 うん! これで、だいたい邪神教の連中は片付いたんじゃないかしら!?


「──御免」

「うぐっ」


 リンディスも私に注意を向けて油断した男を背後から倒していくわね。


「ここの階段の下ね!」

「はい、お嬢」


 階段を降りていく私達。

 薔薇はどこからでも生やす事が出来るみたいね。

 でも土の無い所に定着させるのは難しそう。


 色々と研究しないといけないわね!


「鍵は……」

「フンッ!」


 私は女の子達が捕まってる牢屋の鍵を殴って破壊したわ!


「……ですよねー」

「フフン! 貴方達、助けに来たわよ!」


 私達が現れた事に驚いているみたいね!


「前回見た限りでは、衰弱している女性が隣の牢に」

「分かったわ!」


 とりあえず牢の鍵を端から壊していく。

 4つある内の1つにリンディスは入って行ったわ。


「失礼。レディー」


 介抱してあげてるわね。

 あとは……1番奥の牢屋にも少年が捕まっているのよね。


「フンッ!」


 私は光る拳で奥の牢屋の扉を壊して入って行く。


 そこに居たのは私より年下でリンディスみたいな銀髪をした利発そうな男の子だった。


 ただし、瞳も銀色なリンディスと違って、その子の瞳の色は紫。アメジストのような淡い紫色だったわ。


 銀色の髪にアメジストの瞳。

 そして整った顔立ちね。


「助けに来たわよ!」

「……え……」


 私の姿に驚いた表情を浮かべる男の子。


「……お姉ちゃん、誰?」

「私? 私はクリスティナよ。貴方を助けに来たの。貴方の名前は何かしら?」


 私は衰弱している男の子の身体を抱き上げてあげる。

 薔薇も使えばこうするのも、より楽チンね!


「僕の……名前は……『ヨナ』……です」

「ヨナね! いい名前だわ!」

「ありが……とう。……お姉ちゃん、は……」

「クリスティナでいいわよ!」


 私はヨナに微笑み掛けた。ふふ。


「わ……。お姉ちゃん、綺麗、だね……」

「フフン! そうでしょう! 私はフィオナが認める美人なのよ!」

「ふぃお……?」

「気にしなくていいわ!」


 まぁ、気になるでしょうけれど!


「クリスティナお姉ちゃんは……何者、なの?」

「ん?」


 何者?


「身体が、光ってる。凄い、力を……感じる、から」

「ふぅん。分かるの? そういうの」


 この子ってリンディスが言うには魔王になる運命なんだっけ? 違ったかしら?


「私はねー。そうね。貴方は魔王になるらしいから」

「ま、おう……?」


 ヨナは可愛らしく首を傾げたわ。

 なんだか小動物みたいで愛らしいわね!


 リンディスが助けたかったのは綺麗な若い女の子達じゃなくて、きっとこの子なのよね。


 だって同じ銀髪だし!


「貴方ももしかして『魔族』なの?」

「…………は、はい……」


 何かしら? 魔族と尋ねただけなのに萎縮しちゃったわね。


「まぁ気にする事はないわ! リンディスだって魔族なんだからね!」

「え……誰?」


 フフン! あとはそうね。

 私が何者か、かしら。


「私は、うん。私はね」


 魔王となるらしいヨナに向かい、胸を張って答えるわ。


「──いずれ悪女(・・・・・)になる女(・・・・)よ!」


 未来の魔王が相手なんだから、これぐらいの箔は付けて名乗っておかないとね!



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[良い点] 第2章のクリスティナの活躍もお待ちしてまーす!
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