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174 攫われた侯爵令嬢

 貴族令嬢の誘拐事件。

 誘拐されたのは、どうも市井の者や、神官も居るらしい。

 大規模誘拐……? そんなの良く分かったわね。


「侯爵令嬢の誘拐とは……」

「……前から、そういう事件はあったって事かしら?」


 私の脳裏に王都を追放されてすぐの頃が思い浮かんだ。

 宿に泊まった私に襲い掛かってきた連中が居たわよね。

 残さず返り討ちにしてやったけど。


「昨日今日で一斉に攫われたって話じゃないでしょう。最低でも3人が誘拐。狙われてるのは女だけなの?」

「それは、あの」

「……ああ、ごめんなさい。ルーディナ様。私達にも話を聞かせていただける?」

「構いませんわ」


 大神殿での私の立場は強くない……ワケでもないと思うけど。

 流石に普段からここに居ない私がアレコレと口を出すのは混乱の元よね。


「マリウス侯爵令嬢の失踪が判明したのは先程です。最近、市井でそういう事件が起きたという報せは第1騎士団から入りました。……ルーディナ公女の警護はしっかりと成されているかの確認でした」


 ああ、女性の誘拐事件があったと聞いたら今では真っ先に私達3人の警護が頭に浮かぶのね。

 戦闘が出来る上にベルグに囲われている私の優先順位は低いだろうけど……。


 ルーナ様は王宮務め。だとしたら心配なのはルーディナ様。

 神殿は、王家とは少し離れた機関だもの。


「今回は神官……女性の神官が居なくなった事を調査していたのです。我々の問題になりましたから。件の令嬢が目撃されたのは……決闘大会があった日の事でした」

「数日前から、そういう事件があった……?」

「……そのようですわね」

「よく私達の警護にそういう話が伝わってこなかったわね?」


 そういう事件が起きてたんなら知らせておくべきじゃないかしら?

 セシリアを見ると知らないみたいだし。


「一連の事件の関係性を調べていたところでした。その、貴族令嬢にとっては以前からの危険度と変わりはなく……どの令嬢にも警護が付いている筈で……」


 まぁ、まっとうな貴族家門であれば令嬢には護衛を付けるわね。

 マリウス家だってミリシャの扱いは同じ筈……なのだけど?


 以前、私が襲われたように治安の悪い場所では、事件が起きている……ね。

 っていうか、私だってアルフィナでマルク達に襲われてたわ。

 カイル達にも一応は襲われた事になるかしら……?


「……単独で動くだろう市井の女性や、護衛などついていない女神官が危険な目に遭う……のも許し難い事ですが。侯爵令嬢を誘拐となると穏やかではありませんね……? 彼女に付く護衛を蹴散らす程の集団という事ですか……?」


 ミリシャの誘拐ね。真っ先に邪教が思い浮かんだけれど。

 腐ってもミリシャは今、レヴァンの側妃候補なのよね……。


 国王から不適格と内々で判断されているけれど、家門が有力過ぎて扱いに困っているのが今のミリシャ。

 多少の敵性のなさ程度であれば、家格で問題ない筈だけれど……。


 予言の世界ではミリシャがレヴァンの隣に居たのだし。

 ……あの場合、私がマリウス家を皆殺しにしたワケだから矢面に立たされていたとかあるかしら……?



「侯爵令嬢だし、王太子殿下の側妃候補よ? 生半可な誘拐組織じゃないって事になるわ」

「……それが、その」


 うん?


「何かあるのかしら」

「……我々が知る限りの話です。マリウス侯爵令嬢は、あの日。決闘大会の日ですが……、公女様達の元へ向かおうとしていた様子だったそうで」

「……私達の所へ?」


 何それ? 私とルーディナ様は揃って首を傾げたわ。


「ご様子から、お三方に対して害のある言動をされるかと締め出されたそうで」

「えー……」


 あの子、ホント何してるの?


「……私は、あまり関わりがないけれど。まぁ、王太子殿下が求愛される可能性の高い場でしたからね。あの令嬢の立場からして、その場に自分も立たせるべきといった主張はされたかもしれませんが……」

「言いそうねぇ……」


 我儘だからね、あの子。

 男爵令嬢であるルーナ様に喧嘩を売りたかったのかしら?

 それとも、私があの席に座っていた事に文句を言いたかったのかしら?


 何にせよ、気分の悪い事にならなくて良かったという気持ちがあるけれど。


「つまり、その。かなり件の令嬢は単独行動をされていたご様子だったのです。その上で締め出されたので、護衛の姿なども見受けられなかったと……」

「……そこを狙われた、と」

「はい……」


 会場近くで誘拐事件が発生した?

 よくもまぁ……。


「……マリウス家は動いていないのか? 令嬢が攫われたのだ」

「そこまでは……」


 まぁ、神殿側の調査にも限界があるわよね。

 あとは王家との連携という話になりそう。


「神殿では、ルーディナ様の護衛は強化していただけるの?」

「それはもちろん!」

「……そう。ルーディナ様。私、この件について王宮で確認を取ろうと思うのだけれど。王国で起こる不穏な事態には動く権利もあると思うし」


 特対案件の可能性もあるからね!

 ……考えてみれば私って今、凄く自由よね!


「……そうですね。ぜひ陛下にお伝えください。王太子殿下にも」

「そうさせていただくわ。……護衛の態勢が整ってから移動するわね」


 調査に乗り出したいところだけれど、どう考えてもルーディナ様の護衛は重要問題。

 私の立場や身分によってはエルトにも彼女についていて貰うぐらいだけど……。


「……お嬢様。私が伯爵家に伝えに戻りましょうか? 卿が傍にいらっしゃるならば護衛としては十分でしょうから」

「まだいいわ。襲われたのは私じゃないし。関係があるかも分からないでしょう? 嫌な予感がするからルーディナ様の安全を見届けたいだけ」

「……かしこまりました」


 エルトも一緒に居るしね。不安はないわ。


「……マリウス家狙いで私もターゲットになるとか、あると思う?」

「狙いが侯爵家ならば、あまり可能性は高くないと思うが……懸念点はあるな」

「懸念点?」

「キミから聞くマリウス令嬢の印象論に過ぎないのだが……。仮に誘拐犯の狙いが令嬢本人ではなく侯爵家の何かであった場合。……彼女がキミを『売る』という可能性はあるかと」


 私を売る?


「連中の知りたい何かを聞かれた際、それを知っているのはクリスティナお姉様だけだ、などだ」

「……うわー……」


 なんかあまりにも想像し易いわね!?


 自分の身に起きる不幸は、全部とりあえず私に被せようとするミリシャ!

 ……陛下まで心根を見抜いていたみたいだし。


 そういう所のせいで正妃候補から外されたって、ちゃんと誰か言ってあげないのかしら。

 陛下は言いにくいでしょうね。マリウス家の後ろ盾を欲しがっていたし。

 天与持ちがこんな事になるのなら、最初から神殿を後ろ盾にしていたでしょう。


 ……王家とマリウス家で争いになるかしら?


「……それにしても、この事が広まったらミリシャの今後も困るでしょうに」


「神殿にそのような配慮はございませんよ。殊更に広める事もしませんが……。今回の件に関してはこちらも神官が攫われていますから。正確な情報を共有せざるをえません。クリスティナ様に至っては、部外者とは言い難いですし、神殿としては貴方も守りたいと考えているでしょう。……まぁ、神殿騎士は不要でしょうが」


「まぁ、私達も悪戯に広めはしないけど」


 しばらくして、神殿騎士アレンと共に何人かがやって来た。


「……皆さん。直接に私が狙われたのではありませんが……悪質な者達が近くに潜んでいる事が明らかになりました。私の警護も有難いですが……今回、神官の女性が攫われています。誘拐犯の目的が女性という大雑把なものなのかは分かりません。ですが、私だけでなく神官達も標的の可能性があると考え、今後の行動をして欲しいと思います」


 大神殿は広く作られている。

 神殿騎士という武力もあり、神官……と一口で言うけれど、様々な仕事に従事する者達も居る。


 三女神教は国教で、各地に神殿が設置されているのは私とエルトの婚約締結の旅の通り。


 ……やっぱり標的が標的だけに邪教関連の気もするわね。



「……では、ルーディナ様。ルーディナ様の護衛も揃った様子だから私は王宮へ向かいます」

「はい。クリスティナ様。……またお話しましょう?」

「ええ、もちろん」


 収穫と言える程のものはなかった。

 ルフィス公爵家はやっぱり怪しいけれど。


 ……リンディスやナナシに潜入して貰う?

 ……ダメよね。連中は隠蔽魔術に対抗できる魔族を抱えていそうだわ。


 どちらかと言えばリンディスもナナシもこちら側に居て貰って潜入者に対抗して貰う方がいい。


 エルト・セシリアと共に王宮へ向かう。

 誰に伝えるべき? 陛下かしら。ルーナ様? レヴァンには……どうかしら。

 側妃候補なのよね。レヴァンとルーナ様に教えるのって……でも黙っているのもおかしいわよね。


「……陛下の耳に入れたい話があるのだけれど。緊急度は高いと思うわ。先触れをお願いしてくれるかしら?」

「かしこまりました」


 王宮の人間にそう依頼する。

 一応、特対が陛下直属の組織枠っていう事で、こういう時の風通しは良いのよね。


 しばらく特対の部屋で待つ。書類整理が発生するのよねー。

 支援金を何に使ったのかを正確に残して公表できるようにもしないとだし。


 横領扱いされたら溜まったものじゃないからね。


「クリスティナ様。ベルグシュタット卿も。陛下がお呼びです。どうぞ」


 エルトも呼ばれたわね。けっこう珍しいんじゃない?


「クリスティナ」

「うん」


 彼に手を引かれて部屋を出る。セシリアには部屋に残って貰ったわ。



◇◆◇



「来たか、クリスティナ」


 応接室には陛下だけでなくレヴァンも居たわ?


「国王陛下、王太子殿下」


 私達は一緒に礼を取る。


「緊急の話だと聞いたが……よもやミリシャ嬢の件だろうか」

「……ご存じでしたか、陛下」

「うむ……。どこで聞いた?」


 私達は手ぶりで席へ案内された。テーブルを挟んで、陛下と向かい合う。

 レヴァンは横付けされた椅子へ座ったわ。

 エルトは立ったまま、私の後ろに控える。


「神殿でルーディナ様と話をしていたところ、神殿に一報が入り、事件を知るに至りました。ルーディナ様の警護が万全になったのを見届けてから陛下にご報告する為、ここに」

「そうか……」


 誘拐されたのが決闘大会の日であるならば、既に数日経過している。


「……発覚が遅れた様子ですが……」

「まぁ、そうだな」

「ミリシャには、王家から護衛や監視はなかったのですか?」

「うむ……。監視は、当日は外れていた」

「侯爵家の護衛は……ミリシャには付いている筈ですが」

「当人が外していたらしい。その後も聞いただろうか? あの日、ミリシャ嬢はお前達の所へ行こうとしたと」

「……それは聞きましたが」


「……3人の誰に会おうとしたかは分からない。が、その様子から巫女達3人に害があると判断され遠ざけられた」

「はい」

「……その後の行動は当人の暴走もあったのだろうな。護衛はなし、監視は……ルーナ嬢の周りに付いていた。今はまだミリシャ嬢とレヴァンは婚約関係でもないからな……」


 ああ、正式にルーナ様がレヴァンの婚約者になっているのだものね。

 となると王家からの監視も……?


 少なくとも義務はないものね。


「……ミリシャ嬢の安否も気に掛かる所だが……」

「はい」


 誘拐されたのはミリシャだけじゃないと聞いている。

 被害者を救う為には手早い行動をするべきだけれど……。


「マリウス家とは完全に敵対する事になりそうだ」

「……はい?」


 何の話?


「……王家を疑っているそうだよ、マリウス家は」

「え?」

「……クリスティナとの婚約破棄、追放。それだけでなくルーナを婚約者に据えたから……。邪魔者となったミリシャ嬢を消そうとしているのではないか、と。どこまで侯爵家を見縊れば気が済むのか、とね」


 うーん……。


「実際、陛下達が犯人ではないのですか? ミリシャが邪魔になった王家が、と言われたら筋は通ると思いますが」

「し、しないよ、そんな事は!」

「……陛下は?」

「クリスティナに疑われるとは……いや、当然か……」


 陛下がちょっとショック受けてそうだけど。

 結果論で良い方向に転んだとはいえ、マリウス家が私の事を普通に娘だと認識していたなら、とんでもない話だからね。


「我々の仕業ではないよ……。無論、王妃もだ。そう弁明して信じられるかは別だが……」

「……まぁ、マリウス家が強硬してミリシャを正妃に、と言ってきていたなら別ですが……陛下達にそこまでする必要性はありませんか。大々的にはルーナ様がレヴァンに選ばれたと示されましたものね」


 となると王家犯人説は潰れるわね。


「……どうしても何もかもを邪教に結び付けてしまうのですけれど」

「うむ。それは我々もだ。しかし、令嬢の今後に差し障る故、捜索は秘密裏に行われなければならない」

「それはそうですね」


 貴族令嬢が攫われた、というのは本人に非がなくてもよろしくないわ。

 速やかに無事に保護した上で元気な姿を見せつけて、噂を立てる者に対処を、という流れになる。


「しかし、聞く限りでの話だが。マリウス侯爵令嬢を誘拐して何とする? 女神の巫女達の誰かを攫うというならば、件の邪教の疑いを強めるが……」


 そこはそうなのよね。ミリシャを攫ってどうするのっていう。


「市井の女性や、女神官も攫われているらしいです。たまたまミリシャが攫いやすい状態だっただけとも取れますが……」


 あとは。


「ところで王妃様やレミーナ様、それにルーナ様はご無事ですか?」


 高位令嬢狙いというのなら、どこまで手が伸びるか分からないわよ。


「王妃もレミーナも無事だ。護衛が居るし、王宮からも出ていない。……ただ」

「……ルーナ様は?」

「……騎士団の護衛を連れてラトビア男爵の屋敷へ向かっているんだ」

「え?」


 ルーナ様の実家? どうして、このタイミングで。


「正式な婚約だけじゃなく、改めて求愛し、受け入れて貰えた。王妃教育も問題なさそうで……ルーナは聡明だよ。だから、もうルーナが僕の婚約者である事は動かないだろう。……だから、両親とも色々と話をしておきたいと」


 ああ、そういう……。ルーナ様のご要望なのね。

 護衛はしっかりつけていると。


「……相応の人員は動かしたのですよね? 不安であれば私達もルーナ様を追いましょうか」

「いや……。ちゃんと護衛は付けている。困った顔をさせたが、ルーナも受け入れた。そもそもラトビア男爵家にも人を回しているから……」


 ルーナ様のご実家ですものね。

 あまりラトビア男爵家の事は知らないけれど、救国の乙女としても有名になったルーナ様の故郷。


 ……色々と賑わっていそうだわ?


「んー……」


 今知っている情報だとそれぐらい?

 近しい人の安否をまず確認してから調査ね。

 ……調査。私もした方が良いかしら。


「……無差別に『女』を狙っている可能性があります。私の見た目はもう有名かもしれませんが……変装して無防備な場所を動けば、誘拐犯を釣れるかも……?」


 私だったら返り討ちに出来るし!


「いや、それは……」


 レヴァンがエルトの方に視線を向ける。

 婚約者だものね! 許可が要るわね!


「……クリスティナに囮役をさせるにも、相手の情報が少な過ぎる段階だろう。もっと無差別に女性が攫われていて、今もそれが続いているならば話は分かる。だが現状、囮をするにしても、どこで、どのように動けば目を付けられるのか皆目見当がついていない状況だ。……無意味とは言わないが、今取る手段かは疑問だな」


 一応、囮作戦もアリではあるけど今それしても無意味じゃない? って事ね。



「クリスティナ……、ああ、えっと。アルフィナ子爵」

「ん。何でしょうか、王太子殿下」


 レヴァンが私の呼び方を言い直したわねー。


「君の……予言の天与で何か分からないだろうか」

「予言? ああ……」


 あんまりそういう使い方ってしないんだけど。いっつも勝手に映像が見えるもの。


「……アマネ嬢にも話は聞けるかと打診している。公爵家からの返事はまだないが」

「……構いませんけど、陛下。殿下。あまり予言に頼った政治判断をされるのは控えていただきたく思いますわ。緊急時の判断力が鈍りますわよ」


 答えを聞く事になれて考える事を止めるのは王家には許されないわよ。


「うむ……。それは……そうだな……」

「まぁ、一応はやってみますけど」

「やるのか」

「やります」


 でも私のが視る予言って今、意味はあるのかしら?

 レヴァンとルーナ様がああいう風に結ばれたのを見た時。


 私、『終わった』という風にも感じたのよね。

 終わったというか、フィナーレ、エンド?


 物語が閉じたような感覚よ。

 私の天与で見える光景って、もう先はないんじゃないかって思うのだけれど……。


 それでも目を閉じる。意識を集中する。

 内側に眠る女神の力。


 ここにない景色を視る力……。私の体力を根こそぎ奪う事もある天与。



 しばらく意識を集中すると……たしかに映像が浮かんだわ。

 ザリザリと白黒の線が横に複数走り、音を立てる。


 映像の向こうに居るのは……やっぱりルーナ様。

 そして、それに……誰かが近付いている?


 男ね。あれ、誰だったかしら……見覚えあるわね。不快な印象が残っているわ。

 青いのじゃない。誰……?


「あー……?」


 ルーナ様に言い寄る男達、白黒の映像、音は聞こえない。

 この状況に無関係な天与ではない筈……ルーナ様も襲われる?


 いえ、今までの事からするにルーナ様が狙われるとは限らない……。



「あー……、誰だっけ……」

「誰……?」


 ルーナ様が嫌がっている。顔を青くしている?

 嫌悪、ね。憎悪とかじゃなくて嫌悪。生理的に嫌い? あっ。


「──ベレザック・ディグル子爵令息。私は直接会った事はないけど。天与を授かる前、ルーナ様との婚姻を迫ろうとしていた男。……ルーナ様に執着心もある筈。その男が……関係……してるかも……?」


 この予言の天与って何の証拠にもならないからね。


「それに……、ええと、こいつは誰だっけ……? 見た事あるのよね……。ええと、ええと……」


 ベレザックの他に男が居る。

 そいつは、そいつは……。


「あー……! あれ、アレよ。たしかカリス・リンドン! 私が王都の近くまで戻ってきた時、クイン……ドラゴンに目を付けて渡せと偉そうに言ってきた奴! その後、こっちを監視してきたり、色々と言ってきた! あの時、締めてやったアイツだわ!」


 小物悪役がコンビを組んだ?

 うーん、大々的な犯罪とは程遠そう!


 パチリと目を開く。うぅ、予言の天与って意図的に発動しようとすると、ごっそり体力が削られるのよね。


「クリスティナ」

「……平気。でも、うん。陛下、殿下。私達、ルーナ様の実家……ラトビア男爵家に向かおうと思います。私の予言の場合、ルーナ様を中心に見えるんですけど……被害者がルーナ様とは限らない事が多いので」


 今までは大体、私の身に災いが降りかかってきたわね!


「……それは、しかし、クリスティナよ」

「予言で見えてしまった以上は確かめたく思いますわ。……まだ特殊災害対策室とも無関係とは限りませんし。私がこの件の調査に動いたとしても、それは活動の範囲内……かと思います。如何でしょう?」


 私の上司は陛下だからね!

 国王直属で『特殊捜査権』なんてものを持った組織の室長よ! フフン!



「……そうか。ではアルフィナ子爵。改めて……この件の調査を命じよう。他の者も別に動く事になるが……」

「はい。それは構いません。私は自由にやらせていただきますわ、陛下」


「ベルグシュタット卿、およびアルフィナ子爵が信用できる者達を必ず同行させる事。二次的な被害が起き、アルフィナ子爵に危害が及ぶような事は避けてくれ。子爵は王族の一員であり、また女神の巫女である。その身は王国にとって非常に重要な存在だ。……ベルグシュタット卿。任されてくれるな?」


「命に代えても彼女を守ります。陛下」


 うん。じゃあ……ミリシャ捜索部隊、結成よ!


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