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170/210

170 3位決定戦

「フフン!」


 私は胸を張ったわ!


「……ご満悦ですね、お嬢様」

「当然ね!」


 これでエルトは2位以上が決定! もう何の心配も要らないわね!

 なんだったらレヴァンに勝ちを譲ってあげてもいいわよ!


「……お嬢様。今、大変にベルグシュタット卿の誇りを蔑ろにする考えを持ちませんでしたか? よもや、レヴァン殿下にもう勝ちを譲っていいなどと」

「思ったわね!」

「思わないでください」


 えー……? でも、ここまで来れば優勝して貰っていいわよね!


「レヴァン殿下のお相手は……あら? あの方の身に着けているのは?」


 ルーディナ様が後ろに控えた神官に目を向ける。

 何かしら?


「……神殿騎士ですね」


 神殿騎士。第一から第三騎士団とは別の、大神殿に仕える騎士ね。


「ここまで勝ち上がるだなんて、中々に頑張っていらっしゃるわね。お兄様やベルグシュタット卿とぶつからない組み合わせだったのもあるのでしょうけれど……。

 ルーナ様。クリスティナ様。彼の事、知っていますか? 予言の天与や、アマネ様に窺った事など」


 うーん?


「知らないわね」

「はい。聞いた事はありません」

「……そう。……彼の勝敗に関わらず、私の近衛に付けて下さるかしら? ……ああ、もちろん、彼に他の予定や婚約者がいらっしゃるようなら自重致しますわ」


 ルーディナ様が神官達に指示しているわねー。

 なんで事前に私達に確認取るのかしら?


「あの、ルフィス公子が腕……指を怪我されたみたいですが……」

「……そうね。あれだけ大きな事を言っていた癖に、レヴァン殿下と見える前に負けるなんて。……本当に……」


 ルーディナ様が、何とも言えない表情を浮かべる。

 苦しそう、憎たらしい、もどかしい……よく分からないわ。


 そうしてレヴァンと神殿騎士の戦いが始まった。

 神殿騎士は黒髪に茶色がかった黒い瞳の、とても素朴な青年……に見えたわね。


 うん……。邪悪な感じもしないし。

 戦い方も正々堂々としたもの。真面目そうね。


 レヴァンの戦い方と似ているわ。優等生って感じね。

 こう見るとレヴァンも剣の腕が優秀っていうのは本当なのねー。


 うーん……ホントに知らなかったわ。

 まぁ、こういう機会でもないと知る術がなかったのでしょうけど。


 エルトと青いのの決闘と違い、少し決着は長引いたわね。

 さっきの戦い、確かに力や速さではエルトが押されていたと思う。


 素の強さは確かにアレの方が上。けっして鍛錬を怠っていたというワケでもなさそう。


 でも……、たぶんあいつには経験が足りなかったのよね。

 天与が封じられなければ私の手で殴り飛ばしてやるんだけど。


 エルトが倒してくれたからスッキリとした気分よ!


「あっ!」


 そして2人の戦いに決着がつく。

 勝ったのは……レヴァンよ。


「レヴァン殿下! おめでとうございます!」


 ルーナ様が声援を送る。


「うん。それでいいわ」


 ルーディナ様は何かを納得? してるわね。神殿騎士が気になってるのかしら?


「決勝の組み合わせが決まったけど、3位も決めるのよね? 順番はどうなってるの?」

「……先に3位決定戦ですね。最終戦が決勝戦という形式になります」


 エルトとレヴァンの友人対決ね!


「……すみません、よろしいですか?」


 ん? 私達3人が座るところに人がやってきたわ。


「ラトビア令嬢。その」

「私ですか?」

「はい……。ええと、ですね。ユリアン公子が利き手を怪我されていまして」

「はい。それは見ていました」


 何かしら。


「……ですので……そのラトビア令嬢に、治療を請け負っていただきたく」

「はぁ?」

「え?」

「…………」


 え、怪我したからルーナ様の天与で治療して欲しいって?

 ここまでトーナメント式で戦って騎士の誰が、そんな事言ったのよ。


 それを……自分だけ怪我したから治してーって?

 どこまで評価下げれば気が済むのかしら、あの男。


 イラっとしたけど、私は押し黙る。

 もしもの時は、ルーナ様の足止めをしようかしら?


 でも判断をするのはルーナ様であるべきだわ。



「……、お断りします。たとえ公爵令息であっても、このような王家主催の大会で、他の騎士がその待遇を受けていないのです。私は1人の、それも婚約者でもない方に肩入れするような事は致しません。……何をお考えでそのような事を尋ねてきたのですか?」


 ルーナ様が断ったわね! 流石だわ!


「それは……」

「貴方達、ルーナ様はどうあっても今、王太子殿下の正式な婚約者。だから準王族の待遇よ。公爵家が彼女の天与を身勝手に利用せんとするなら、三女神の巫女の1人として私も黙っていないわよ」


 私とルーナ様は青いの嫌いだからね!


「……はい。分かりました。申し訳ございません」


 あら。あっけなく引き下がったわね。

 私達は、公爵家の使いっぽい者達を見送ったわ。


「……すみません、ルーディナ様。お兄様の治療をお断りしてしまって。私も死にかけているとか、大怪我であれば治したいと思うのですが……」

「…………構わないわよ。正しい判断だと思うわ。よく自分で答えを出して言えたわね」


 ルーディナ様。青いのの事、どう思ってるのかしら?

 今の一件でルーナ様を説得しなかった事、公爵家で何か言われたりする?


 ……ルーディナ様個人と話をする必要があるわね。



 そして3位決定戦が始まる。


 エルトに利き手の親指を折られたユリアン公子は、それでも大会に出てきた。

 酷く歪んだ顔をしている。


 対して落ち着いた様子の神殿騎士。

 胸を借りよう、という気持ちが見える。


 清々しい印象ね。青いのと対峙しているせいで余計に好感度が高いわ。

 青いのは、右手に包帯を巻いて剣を無理矢理に持っている様子だわ。


 ……実力的にアレでも勝敗は分からないかしら?

 神殿騎士の勝利をお祈りしておきましょう。


「始めっ!」


 2人が打ち合う。


「っ……!」


 右手の怪我は、この決闘のレベルになると致命的な差になる。

 精神的にも落ち着いてなさそうね。


 ルーナ様に治療を断られて怒ってるかもしれない。

 思い通りにいかない時って何でも思い通りにいかなくなるものよ。


「あっ……! なっ」

「はぁあッ!」


 正統派に優秀そうな神殿騎士。

 先の戦いの余裕を失くして冷静さを失っている青いの。


 ……そして。



「ぐぅっ!」


 剣を打ち据える事に耐え切れず、押され、敗れる。


「勝者! アレン・ディクート!」


 青いの、負けちゃったわね。ふふふ。

 3位にも入れなかった。うん。私としては満足の結果だわ。


 エルトと当たらず、先にレヴァンと当たってたら、たぶん順当な順位になっていたのでしょう。



「ふふ」


 そこで、ルーディナ様が笑みを漏らした。

 あら。……意外ね? 兄でも遠慮がなくなったのかしらね……?


 これで残すところはエルトとレヴァンの決勝戦だけよ。


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