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153 パーティーの誘い

 特対での私の活動は、地道に続けていったわ。

 行く先々で問題を引き起こすものの、私には他に打つ手がない。


 そもそも事前に手紙で警告は出している。それでも私に会うというから出向いている。


 例の件で処断されなかった事で……『特殊捜査権』とやらの適用範囲と判断されたみたい。

 まぁ、私に他にどうしろという話なのだけれど。

 うーん。社交界でボロッボロに評価されてそうね!


 しばらくしてから第3騎士団は、ラーライラが引き連れて伯爵領に帰る事になったわ。

 でも、疲弊した王国を狙って東西で紛争が起きているらしいから、そのまま支援に向かう事になっている。


 ……私とエルトもそれについて行くべきだったのだけど。

 陛下直轄組織を放り出せなくて見送る形になったわ。

 邸宅に残ったのは最低限の警護。


 王都付近の現象を抑えたら、私達も腰を落ち着けられそうなのだけれど。


 やっぱり憑依者なんてそう簡単に現れるワケがない。

 そう思っていたわ。でも。


「……パーティーの招待状?」

「ああ。第2王女レミーナ様の主催らしい」

「……レミーナ様の」


 エルト狙いなのよねぇ、彼女。そのお陰で私、目を付けられているのよ。

 とはいえ、今や私も王族籍。突っぱねられなくはない。子爵だけどね!


「いつもは、こういう誘いは断っている。偶にしか行かないし……。ライリーと連れ立っていた」

「仲がいいわね」


 ちなみに私はあんまり慣れてないわよ!


「レミーナ様主催ではあるが、主賓としてレヴァンとラトビア嬢が招かれる。実質、彼らの披露パーティーと言えるだろう」

「まぁ」


 なら祝福しに行きたいところだけど。


「……もう、色々な意味で私達が行くと台無しにならない?」

「そうだな……」


 地道に評判を落とし続けてると思うのよねー。

 だからこそ良いのかしら? 社交活動に伸ばせる手がなかったのが痛いかもしれないわ。


「ただ、クリスティナ」

「なぁに?」


 私は首を傾げたわ。


「そういった場に出る事で捜査は進むかもしれない。避けていただろう?」

「それは」


 面倒くさいのもあるわ。楽しい思い出ないものね。

 でも、たしかにそういう場にこそ現れるかも、と言われたら。


 事件が起きるからこそ、というものがある。

 前にやったように囮作戦よ。私は狙われてるらしいし。守ってばかりでは得るものも得られないわよね。


「そうね。たしかにそう。じゃあ、パーティーへ」

「ああ。一緒に行こう」

「……エルトが一緒に行きたかっただけじゃない?」

「否定はしないな。キミへまたドレスを贈る良い機会だ」


 もー……。


 とにかく私達はパーティーへ行く事にしたわ。

 私の悪名が轟いている事でしょう。


 行けば敵だらけな事を想定しておいて……。

 どういう動きをしてくるかよね。


「……あえて1人で行動してみる? ほら、前の時はエルトがずっと傍に居てくれたじゃない?」

「それは……、危険だと思うが」

「ふふ。私が危険?」

「天与も不調な時があるだろう」


 そう言いながらエルトは私の長い髪の毛を手に取ってキスをしたわ。


 パーティーに参加する旨を手紙で伝え、ドレスを新調して貰った。

 ベルグシュタット家の派閥の令嬢にも声を掛け、最低限の味方を確保しておく。


 それこそラーライラも連れて行きたかったところだけど、ないものねだりしても仕方ないわ。

 王宮に赴いた際、ルーナ様にも憑依の見破り方について相談するついでに声を掛けておいた。


 まぁ、聞いていた通り、レヴァンと参加する予定だとか。

 んー。んー……?



「えっと。あんまり突きたくないんだけど、ルーナ様」

「はい、クリスティナ様」

「……レヴァン殿下とルーナ様の2人でダンスパーティーに参加されるのね? レミーナ王女様主催のダンスパーティーへ」

「はい。そうなります、ね」

「…………ミリシャは?」


 男爵令嬢だけど、民の人気者で女神の巫女、救国の乙女ルーナ様。

 国内有数の名家なマリウス侯爵家の令嬢のミリシャ。


 今、この2人のどちらかが王妃となり、どちらかが側妃となる線が濃厚だわ。

 それは私よりも、社交を頻繁にしている令嬢達の方が詳しい事でしょう。


 そんな中でレヴァンと一緒にルーナ様が王女主催のダンスパーティーへ。


 ……誰が見たってルーナ様が王妃になると思われる筈。

 ミリシャにとっては致命的な出来事になる。


 このままでは側妃として……上位貴族としての教養や後ろ盾で影からルーナ様とレヴァンを支える女となるだろう。


 あの子がそんな事に満足するとは思えないんだけど……。


「……荒れそうね」

「やっぱりですか?」

「うん……。ミリシャには気を付けてね。マリウス家自体にも」

「はい。そうします」


 それとも大人しく側妃になってから動くかしら……?

 常に油断ならない関係になりそうなのだけれど。


 セシリアを護衛として貸し出す?

 でも、ずっとというワケにはいかないでしょう。

 レヴァンや王家が考えるべき事かもしれないけど……うーん。


「後見人は決まったのかしら?」

「いいえ、それはまだ……」

「そう……。難しい事だものね」


 国内で伯爵家以上の家門にルーナ様を養子に取らせる。

 もちろん、元の男爵家との縁が完全に切れるワケじゃあないわ。


 側妃候補のミリシャのマリウス家とそうは劣らず、対抗できる家門が望ましい。


「……やっぱり荒れそうねぇ」

「うぅ……他人事」

「他人事だもの」

「クリスティナ様!」


 完全に他人事にはならないんだけどね。

 ……どうなる事かしら。


 そうして。


 ダンスパーティー当日を迎えたわ。

 こういう時に限って予言の天与は発動しない。


 ……何事もなく過ごせたらいいわね!


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