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147 レヴァンと四阿で

「レヴァン? 何故ここに。護衛はどうした?」


 近くに護衛がいないわ。王太子殿下という事を忘れられては困るわね!


「近くに居ないだけさ。少し離れた所で見守っているよ。それよりも2人はどうしてこんな所に?」

「それは、こちらが聞きたいのですけれど……」


 ひしひしと圧迫感、というか 甘いのだけれど甘過ぎる空気が私にまとわりつく。

 私は、エルトの手を取って、その空気の干渉を和らげた。


「クリスティナ。平気か?」

「うん。平気……まだね」


 天与を封じられるような気配はないわ。似たような感覚はあるけれど。


「レヴァン殿下。私達は王宮で新たに与えられた職務『特殊災害対策室』の活動の為にこの地……予言の聖女、アマネ・キミツカが現れた場所の調査に参った次第でございます」


 私は白馬を降りたレヴァンに臣下の礼をしながら、王宮の敷地内にあるここに居る理由を説明したわ。


「……やめてくれ」

「え?」

「クリスティナにそのような態度をされるのは、少し……まだ戸惑う」

「はぁ」

「……君は、その。クリスティナ。後悔……いや、エルトの前でこれはおかしいね。未練……といったものはないのかい?」

「未練ですか?」


 私は首を傾げた。

 それってつまりレヴァンへの、って事なんでしょうけれど。


「まったくありませんが」

「うぐ……」


 あら。なんでへこむのかしら。私、はっきり言っただけなんだけど。

 というか、前にも断ってるじゃないの。

 あの時から、どこにも気持ちが変わる要素がないじゃない。


「クリスティナ……。容赦がないな」

「ええ? エルトが言うの?」


 微妙に困った顔をされているわね!

 おかしくないかしら? 私の恋人はエルトよね?

 レヴァンの誘惑を断るのは喜ばれるべきだわ!


「レヴァン。お前も、新たに婚約者を招いたのだろうに、何を言っているんだ? ラトビア嬢に失礼だろう」

「……それはね。複雑なんだよ? なんていうか、僕だってね。すごく……すごく振り回されてるんだ」

「うん?」


 あら。愚痴かしら。

 王太子とはいえ……まぁ、エルトがそもそもレヴァンの友人なのだものね。

 私、外した方がいいかしら?


 ああ、でも今、エルトから離れない方が良い気がするわ。

 レヴァンには悪いけど、このままでいましょう。


「ふむ。クリスティナ。レヴァンの話を聞こうか。調査的にも聞きたい事があるだろう」

「まぁ、そうね!」


 アマネについては私より詳しいでしょうし。


 そんなワケで私達は湖の近くに建てられている四阿(あずまや)に場所を移したわ。

 あ、たしかに王太子の護衛がちゃんと居るわね。



「特殊災害対策室か。うん。僕の耳にも入っているよ」

「じゃあ正式な部署なのね」

「……そこを疑ってたのかい?」


 当然でしょう。聞いた事ない新設の部署なのだもの。


「対策室が設立されたのはね。この前、第3騎士団が討伐したサラマンダー事件。クリスティナの報告にもあった『恐竜』という個体が僕達を驚愕させたからなのも大きいんだよ」

「そうなの」


 事後処理は騎士団に任せっきりだったのよね。あれ。

 重かったでしょうに、どうしたのかしら?


 ちなみに恐竜のお肉は中々に締まってていて歯応えがあるのよ!


「僕も見たけれど。あれが恐竜……恐ろしいね。エルトやクリスティナが居なければ、まともに対処できていたか怪しい」

「そうか?」

「頑張れば何とかなるわよ」


「……いや、戦ってる所まで見たワケじゃないけど、騎士達にも話は聞いているからね。自分達が出来るからって、そのレベルを他の人達に求めるのはやめてあげようね? 本当に君達2人じゃなければ、あんなものの対処はできないよ?」


 まぁ……私の場合は、天与ありきだものね。

 その点、エルトは鍛え上げた力でアレを倒したのだから凄いと思うわ!


「それに、ドラゴンの存在で元々信憑性はあったのだけれど、納得していなかった者がクリスティナの功績をようやく認めたよ」

「うん? 何の話?」


 私の功績、認められてなかったのかしら。


「クリスティナが陛下に恐竜の頭部を献上しただろう? アルフィナ領での功績の証拠として。あれを疑っていた者達が居たんだ。実際に倒したのか、という話をね。でも、それ以前にクリスティナは皆の目の前でドラゴンを従えていたワケだから……恐竜の討伐に疑問を抱いても、だから何だという話だった。功績そのものが目の前に生きているようなものだったし」

「へぇ……」

「まぁ、そうだろうな」

「うん。そして今回のサラマンダー事件でそんな言い掛りは捻じ伏せられた」


 あの集落の人達にとってはたまったものじゃないでしょうけれど。

 私にとっては追い風かしら?

 そもそも陛下に認められて勲章を授与した以上、誰が異を唱えていても知った事じゃないんだけれど。



「ただし、あのレベルの魔獣が、それも王都近辺で出没するなんて……というのは大問題になった。まだ国難は続いているのかと」

「そうね」

「……アマネに今回の件を聞いてみたいのだけれど、彼女、公爵家からは出て来なくてね」


 アマネは知っていたのかしら? あの恐竜が出てくる事を。

 うーん……。でも、アマネの知識的には『起きる事』と『起きない事』の区別ってつくの?


「クリスティナとアマネのやり取りも話題になったんだよ」

「私達の?」

「ああ。君がアマネの予言を否定し、そして、そもそも一連の災害の元凶だと糾弾した件だ。……君の言い分はたしかに通るよ。辻褄だって合うね。彼女がここに来てから王国に災害が起こり始めた。それはたしかに真実だ。……けど、といった具合の議論がされている」


「うん。でも、その答えなんて誰にも出せないでしょう? 私はそう感じるけれど、私が言うからこそ、ただの意趣返しにしか聞こえない筈。結局は私と彼女の派閥争い……程度の話になるわよね」


 これから先、悪評を積み重ねた方が悪役になる。

 ただそれだけの話になるわ。


「うん。ええと、何の話だったかな……。とにかく、王国の災難はまだ続いているのか、という事が改めて問題になった。元凶が誰かというのは、だいたい……嵐や魔獣の責任を個人にさせるのかと、却下したけどね」

「まぁ、王太子殿下が冷静で助かるわ」


 そんなものの責任を取らされちゃたまったものじゃないからね。


 ……でも私、魔獣災害の責任を取らされて死刑になる可能性があるのよねー。

 そうならないように考えておかなくちゃ。



「そんな状況だからね。そこで神殿の意見を取り入れ、そもそも今この時期に三女神の天与を持つ者が3人揃ったことが、王国が災害に立ち向かう為の女神の啓示であり、救いなのではないか、という話が出てきた」

「……まぁ、結果的にそうかしら? ルーナ様も私も問題の対処に当たる事になったものね」


「ああ。ルーナの各地への浄化の旅や、クリスティナが凶悪な魔獣を倒し、ドラゴンすら従えていること。それらが大きい。女神の巫女達が居る限り、王国が見捨てられる事はない、と」


 まぁまぁ。ただの天与持ちも巫女の箔がつくと随分だわ。

 地道な活動を続けてこられたルーナ様の功績は大きいわね!



「……それで? 何を悩んで、この場所に来たんだ、レヴァン」

「いや、悩んでいるというか」

「悩んでいないの? 私達、あなたがこのタイミングでここに来た理由を知りたいのよ」

「……うん?」


 レヴァンが首を傾げるわ。


「どういうことだい?」


 私とエルトは顔を見合わせて頷き合う。

 まぁ、レヴァンに隠す意味はない……というか、誰に隠す必要もないんだけど。


「偶然じゃないと思っているの。レヴァン、貴方がここに来た事がね。アマネの予言と災害についてと同じような話なのだけれど。……私、最近、違和感を感じるのよ」

「違和感?」

「ええ。私の周りに……私を狙う空気があるの。そうすると、私の近くにエルトだけじゃなくてレヴァンや青いのが、やって来るのよ」

「うん???」


 フフン! 完璧な説明ね!


「……まぁ、クリスティナの言い分はさておき。俺も驚いている。今日で彼女の言っている意味がなんとなく掴めた……気がする」

「あら。エルトにも話していたじゃないの」

「ああ。だが聞いた事と納得や理解が及ぶかはまた別だ。今回の件は感覚的に理解しやすかった。こうしてレヴァンが現れたしな」

「なるほどね」


 まぁ、聞くよりも実際に体験した方が分かりやすいわよね!


「そもそも以前からの話なのだけれど。アマネと違って、私の予言ってね。一方的に女神の加護とは言い難いと思うのよ。大なり小なり、邪教の思惑で歪んでいるというか。私の何もかもを助けて、守ってくれる感じじゃあないの。『敵の攻撃』をあえて見過ごされているような、そんな感じね。その代わり、抗う力、戦う力は宿してくれているの」


 私は三女神の中で敵の攻撃を受け止め、そして敵を打ち倒す役割ってところね!


「邪教は私が狙い易いんだと思う。落とし易そうに見えるのか。それとも彼らにとって最も邪魔なのが私なのか。それは分からないけれど。修道院の時なんて匂わせただけで襲ってきたものだし。それで私に狙いが定められたのだと思う。この前からね。たぶんアマネも言っていたと思うんだけど……ルーナ様が本来、結ばれる? 運命の男性と私が出会わせられたり、こう……乙女チックな事が引き起こされるようになったのよ」

「…………?」


 まぁ、レヴァンが眉間に皺を寄せてエルトに助けを求めているわね!


「クリスティナ。あまり、そういう事は、なんだろう。僕達以外の前で言わないようにね? 君が変な目で見られると思うから」


 えー……。信じないのかしら! 失礼ね!


「……アマネの予言は信じたくせに」

「うぐぅ」


 ふーんだ。知らないわ、レヴァンなんて。

 どうせ私のこと信じないのよ、この人。

 はいはい。

 どうせ長年、婚約者だった私よりもポッと出てきたアマネの方が信用されますよーだ。


 私は、隣に座っているエルトの手を取って頬を膨らませたわ!



「レヴァンは特に何かを思ってここに来たワケではないんだな」

「……うん。まぁ、なんとなく思いついて、ね。ここですべてが変わってしまったから。もう一度見たくなってさ」

「そうねぇ」


 アマネが来てから何もかも変わってしまったのよね。

 今の私は、それで良かったと思うのだけれど。


「私の予言の夢の世界ではアマネが来なくても、結局似たような事になっていたからねぇ。あっ」

「うん?」


 予言で思い出したわ!


「レヴァン。ルーナ様を守ってあげてね? ええと、名前……なんだったかしら。ディグル子爵家の息子。アレがルーナ様に執着してて……場合によっては私にも冤罪をかけて陥れる人……の可能性があるから。ああ、でも確定じゃないわよ?」


 夢の世界で悪者であっても、現実もそうとは限らないからね!


「ああ、彼か……。知っているよ。……たしかにね。ルーナも怖がっているようだし、注意はしていよう」

「うんうん。ルーナ様のこと大事にしてあげてね」


 レヴァンとルーナ様の仲が良くなるのは良いことだわ!



「エルト、クリスティナ。邪教はたしかに存在するみたいだけれど……。悪戯に、証拠もなく裁く事はできない。それは理解してくれているかな? 特に……貴族のような者が相手だとね」

「ええ」


 クシェルナ様は感謝されたけど、ああいう状態の疑いを、そうでない者に掛けられるのは迷惑でしょうね。

 あと私が一番うさんくさく思っている公爵家も。


 王国にはルフィス公爵家以外の公爵は居ない。

 身分的に言えば、王族に次ぐ立場なのよね。


 手っ取り早くあの青いのをぶん殴って解決すれば良いんだけど。

 難しいのよね。天与に溺れて下手に手を出そうとすると、無力化されるし。


 爵位は下でもマリウス家であれば、その資本力で拮抗できるかもしれないわ。


「ん?」

「どうしたんだい?」

「レヴァンって、そう言えばどうしてルーナ様なの?」

「えっと」

「私はお断りしたからないとして、ルーディナ様を婚約者に、とはならなかったの? 彼女も有力貴族なのだし」


 女神の天与持ちだし。


「……ルフィス令嬢も候補には上がっていた。だけど……女神の巫女である君との婚約を破棄し、今度は後釜のように据えたミリシャ嬢とも決別。そうして公爵令嬢を婚約者に、となると……」

「……実の娘ではなかったクリスティナならばともかく、あの女についての扱いならばマリウス侯も怒るかもしれないな」

「簡単に想像できるわねー」


 王家がマリウス家と縁を結びたかったのは間違いないのよ。

 天与がなければレヴァンの婚約者は私でもミリシャでも良かったぐらい。


 でも天与持ちは……ましてや女神の巫女ともなれば王家は無視できない。

 信仰的に王家の権威をこれでもかと保障してくれるのよね。


 ルーディナ様は神殿に身を捧げる素振りを見せている。

 私はエルトと婚約。


 なら王国民からは『救国の乙女』と名高いルーナ様しか選択肢はない……かしら。


 そうして、そうなると……。


「男爵令嬢のルーナ様では王の後ろ盾としては弱い。元々、マリウス家との縁は持ちたかった。それで」

「……うん。今の形になっている。まだマリウス令嬢との関係は、候補止まりだけれどね」

「あら、そうなの」


 うわー……。それはそれで。


「……大丈夫なの? それ。王家としてはミリシャを、マリウス家を蔑ろにしているようなものだけれど」

「だから……振り回されているんだよ。王太子の婚約者は元から政略とはいえ、まだ公爵令嬢を推す声もある。それに……」


 と、そこでレヴァンが言葉を切って私に視線を送ってきた。


「フフン! 私はベルグシュタット伯爵夫人になるか、アルフィナ子爵としてエルトを婿に貰うのよ!」


 私は胸を張って得意気に声を上げたわ!


「……うん」

「レヴァン。クリスティナは渡さないぞ。諦めてくれ」

「はぁ……」


 まぁまぁ。はっきりしないわね!


「レヴァンはルーナ様を守る事。あの子爵令息や……あとミリシャからもね! ……正直、その状況であの子が大人しくしている気がしないのよねぇ」

「……そうか」


 私にというよりもルーナ様に対して何か起こしそうでイヤだわ。


「…………クリスティナ。エルトも。ルーナに関しての注意は有難く受け取る。僕も警戒していよう。そのお返し、ではないけれど。僕からも注意を促しておきたく思う」

「うん?」


 なにかしら。


「……まずクリスティナの評価についてだけど」

「私の評価」

「うん。君は……かなりの美女だと思う」

「おい、レヴァン」


 ええ……、だから口説かれても困るんだけど!


「ま、真面目な話だから!」

「……ホントぉ?」

「……本当か?」

「うん。真面目な話だ」


 私とエルトの、レヴァンを見る目が冷たくなっていくわよ!


「ふぅ。気を取り直して。これは僕個人の評価と違って、世間的な、客観的な評価としてだ。クリスティナは、かなり美しい令嬢だ。今までは僕の、王太子の婚約者だったから下手な貴族はクリスティナにどうこうしなかった」


 うん?


「僕との婚約が破棄され、君が王都を追放になった後。その当時の王国は嵐の災害や、魔獣災害によって混乱していた時期だった。ある意味、君のことに構っている余裕が、どこの領地にもなかったと言えるし、それに」

「それに?」


「ルーナという新たな天与を授かった女性の噂も各地に広まっていた事だろう。あと……なんというか。予言の聖女アマネが僕の傍に居た、という事もあった」

「うん……」


 何が言いたいのかしら。


「ルーナは男爵令嬢だった。彼女を取り込みたいと考えた者は、彼女に婚姻を申し込んだ事だろう。……災害の対策をしながらね」

「ええ」

「僕の傍には有名になった予言の聖女が居る事から……、各地の者達はこう考えた。『レヴァン王子は聖女と婚姻する為に、クリスティナ嬢との婚約を破棄したのだろう』と」


 うーん。まぁ、関係ないところから見たらそう思うのかしら?


「王国そのものの余裕のなさ。予言の聖女。ルーナの台頭。『瑕疵』のないルーナを妻に迎えれば神殿の覚えも王家の覚えも良くなるかもしれない、という打算が生まれた事だろう……。注目すべき者が分散されたから、余裕がないから、誰もが大人しくしていた……のだけれど」

「うんうん」


「……邪な願望を抱いた者は、きっとクリスティナを迎えたかっただろうな、と」

「うん?」


 何が、どう?


「エルトが間接的に守る事になったのもあるだろうけれど。……クリスティナが1人、王都を追放されてアルフィナ領へ行った際、君を保護したり、酷ければ誘拐でもして……と考える者はそれなりに居たのではないかと」


 えー……?


「王国は騒ぎが落ち着いて余裕が出てきたからね。うん……、エルトの妻になりたい令嬢も多いだろうし。クリスティナに対して邪な感情を抱いていた貴族も……、動くかもしれない。もう王太子の婚約者ではなくなり、侯爵家からも冷遇されているのだから」


「……陛下が直々に王族と認め、継承権も認めている女神の巫女だぞ。それに既に俺の、ベルグシュタットの婚約者として周知している筈だ。それでもか?」


「……ああ。だからそういった警戒はするように、ね。……抑えていた筈の『手に入れられる』という欲望に火をつけられた後、横から奪われたと感じれば……執着心も増すことだろう」


「もしかして心当たりがあるの?」


 エルトが言ったように、私の今の身分は割と箔がついてきたわよ。

 王都追放されてアルフィナで過ごしていた時期なら、そういう連中が迫ってきてもおかしくなかったけれど。


「うん……。夜会でクリスティナに向けられる男性……令息に限らない……達の視線がね。エルトも、もっとそういう社交に参加していれば嫌でも分かったと思う。……これからクリスティナを連れて参加する時にも、ね」

「……そうか。俺は、あまりそういう類には参加してこなかったからな……」


 エルトなんて、それこそ令嬢達が取り合いになりそうだものねー。

 婚約者がいなかったのだし。


 参加を敬遠する気持ちは分かるわ。

 私の場合は、ひたすらに大人しくして、壁の花になる作戦に徹してたわね。


 面倒事のイメージしかないのよねー……。

 フィオナ以外に友達いなかったから余計に。


「私を狙って動く連中が居るかもしれない……」


 今の状況だと、さらに邪教に唆されて……とかも起こりえるわよね。

 貴族が相手、ね。公爵家の瑕疵を見つけるのに何か役立ったりするかしら?


 ……あ、嫌なこと思い出したんだけど。


 リカルド……マリウス家の長男もエルトが言うには私を女として見てたんだっけ……。

 そういう男が他にも居たって言いたいのね?


 にしたって『妹』として育った私にそういう目を向けるのはどうかと思うけど。


「ああ。それは決して自意識過剰だとか自惚れじゃなく、君は注目を集める容姿なのだと自覚していた方がいい。……こういう話は、身内には言われるかもしれないが、社交の場での視線まで把握して言えるのは僕くらいだろうから。……僕からも注意をさせて貰うよ」


「うん。ありがとう、レヴァン。エルトと一緒によく考えてみるわ」

「……ああ。君達なら、きっとどんな問題も解決できるよ」


 そう言ってレヴァンは寂しそうに笑ったわ。


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