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13 騎士との出会い

 魔物の噂をチラホラと聞くようになったわ。

 王都や学園の近くにはそう居なかった魔物だけど、こうして王都から離れてみると、それが日常という段階にまで至っているみたい。


「ねぇ、リン。あそこなら魔物狩りでお金が貰えるみたいよ!」

「……ああ。『ハンター組合ギルド』ですね。昔は魔物を狩り、土地を切り拓く事から『冒険者ギルド』なんて言われていましたが……今は街に害を為す魔物の討伐等がメインの生業となっている組合ギルドです」

「へぇ! あれがそうなのね!」


 ハンターギルドなら知ってるわね!

 毎日の糧として成立する程の量の魔物、その討伐依頼の斡旋。

 討伐そのものが目的であったり、その身体から採れる素材が目当ての場合もあるらしいわ。


 武功によって貴族となった家なんかは令嬢であってもお小遣い稼ぎに狩りに赴く事もあるとか。

 民間の騎士団、自警団に近い側面もあるらしいわね。


 これから私がアルフィナ領でする事を考えると、そういう生業の実体験が必要になるんじゃかいかしら!


 私は目を輝かせてリンディスを見る。


「……お嬢。寄り道しないんじゃなかったんですか?」

「私達、旅費に不安があるじゃない? ここで少しお金を稼いで行くべきだと思うわ。それに魔物の討伐が生活の糧として成立する仕組みを肌で知る事は、アルフィナの復興に役立つ筈よ」


 スラスラと私は言い訳を並べ立てる。

 もちろん建前よ! でも建前は大事だわ!


「……お嬢の王妃教育は、屁理屈の為にあったんですかね」


 失礼ね! 活かす場に恵まれなかっただけで色々と頑張ってきたんだからね!


「はぁ。行きますよ。やりましょう」

「流石、リンね!」


 話が早いわ!

 私達は、ギルドへ向かう事にしたの。



◇◆◇



「わぁ!」


 ここがハンターギルドなのね!

 街で見掛けた酒場みたいな雰囲気よ!


 私はキョロキョロと辺りを見回していく。

 部屋は大部屋で広めに作ってあるわ。

 中央には街と、周辺の地形の模型が設置してある。


 その上に小さな旗がいくつも刺してあって、旗には文字が書いてあるわ。

 アレはきっと戦略用の模型地図ね。

 視覚的に分かりやすく街周辺の魔物情報を見せているのよ。


 壁にある板には、まばらに文字の書かれた紙が貼ってあるわ。

 そこには、何をどうしたら、どれぐらいのお金が入るか書かれていたの。


「沢山あるわよ、リン。どれにする!?」

「いえ、これ、お嬢に適したようなものあるんですかね」

「選り好みせずにやってみるのがいいんじゃない? 『この仕事で本気で生活するとしたら』を考えてこそ、真に求める者が見えてくる筈よ。例えばコレとか」


 私は一枚の紙を剥がしたわ。


「……下水に巣食うスライム退治……。え、まさかコレを受けるつもりですか?」

「とっても臭そうね!」


 でも。


「それは誰かがやらなきゃ困る仕事じゃない? だったら民間にやって貰うよりは領主が率先して指導し、手厚い待遇で対応していくべき問題だと思うわ!」


 人がやりたがらないけど、必要な仕事なんて働き手が居なくなったら大問題よ。


「それはそうですね。ただ、こういった仕事は領主からもギルドに援助金が出されているのでは? あと、それはそれとして、お嬢にやらせたくないです」


 良い経験だと思うんだけど!

 フィオナに話すお土産話が増えるわね!


「あとまぁ……お嬢、目立ち過ぎです」

「ん?」


 リンディスが後ろを振り返るわ。

 ざわついているわね!


「この容姿で、こういった場所に入って来たら当然の反応なんですよねー……」


 なんだかリンディスが遠い目をしているわね!


「おうおう。お嬢ちゃん。ギルドに来るのは初めてかい?」

「そうよ!」

「ほら来た……」


 リンディスは何を諦めたような顔をしているのかしら。


「何だったら俺がお嬢ちゃんと一緒に行ってやるぜ。へへへ」

「お断りします!」


 私が答えるより先にリンディスが断ったわ。

 早いわね!


「ぁあん?」

「そんな下心が見え見えの相手とお嬢を一緒に出来るワケないじゃないですか」

「お前には聞いてないんだよ!」


 男がリンディスの服の胸ぐらを掴んだわ!


「おら、邪魔な男は、」

「──フンッ!!」

「ぐべらっ!?」


 当然、そいつはぶん殴ってやったわよ! フフン!


「リンは私が守ってあげるからね!」

「……なんで私がお嬢に守られるんですか。主人はお嬢ですよ? 立場が逆じゃないですか」


 だってリンディスったらよく狙われるじゃないの! だから姿を隠していたのね!


「あと、本当に人を殴る躊躇がなくなり過ぎです」


 リンディスったら、小さく文句を言うことが多くなったわね!


「おいおい! なんて事しやがるんだぁ!?」

「話しかけただけだったのによぉ!」

「うわ、面倒くさい」

「酔っ払いかしら!」

「その方がまだマシですよ。粗野なだけで陰湿な令嬢達とやりたい事は変わらなそうです。因縁を付けてお嬢を貶めるつもりですよ。きっとそうに違いありません」


 リンディスの変なところに点火したわね!


「嬢ちゃんよぉ! こいつぁ責任取ってくれなきゃいけねぇんじゃねぇかぁ!? へへへ」

「下衆が。お嬢に汚らしい目を向けるのは赦さない」


 あ、リンディスが怒ってるわね!


「貴族崩れみてぇだが、ギルドにはギルドのやり方ってもんが、」

「フンッ!!」

「ぐべぇ!?」


 また殴り飛ばしてやったわ!


「殴るのが早い! お嬢、もう少し対話も試みて下さい!」

「リンだって怒ってたから良いじゃない!」


 男達が襲い掛かってくるわね!

 勿論、全員じゃないわよ。

 最初の男の仲間だけね!


「…………これは何の騒ぎだ?」


 ギルドで暴れていたら、また外から人が入って来たわ。


 金の髪に翡翠の瞳。騎士服を纏った青年に……同じ出立ちの女性騎士ね。


「あっ、エルトお兄様! クリスティナが居たわ!」

「何?」


 どうやらその2人の目的は私みたいね!


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