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103 戦う2人②

 馬車が停まり、御者が逃げていくらしい。

 逃げるって事はグルかしら?


「どうするの?」

「とっとと馬車から出た方が俺の場合は剣が振りやすいな」

「うん」

「だが、この緊迫感を味わいながらクリスティナと共に過ごすのも悪くない」

「エルト。冗談で言ってるの?」


 流石に危ないと思うわよ!


「まぁな。クリスティナ。初めに入ってきた男の武器は俺が打ち払おう。後は……馬車の外へ殴り飛ばすのが一番注意を引けるぞ」

「そう! じゃあ、そうするわ!」


 フフン! 周りから見たら吹っ飛んでいく相手に目を奪われるっていう寸法ね!

 彼らは私を生け捕りにしたがるだろうから火矢を放ってくる事は……たぶんないわ!


「来たぞ、クリスティナ」

「ええ!」


 私の手に淡い光が集まっていき、力が溢れてくる。


「おい! お前達、外へ出て来い!」


 と、荒々しい男の声。窓の外にも見えるわね。

 なんかニヤついてるからムカつくわね!


「開けた方がいいの?」

「エスコートしたいと言うのだから連中に任せてやるといい」

「ふふふ」


 馬車の外を敵に囲まれてるのだけど、これはこれで楽しいわね!


「しかし、クリスティナ。生け捕りにするつもりらしいがどうするつもりだ?」

「薔薇の蔓で縛り付けるわ!」


 私は男達が痺れを切らして馬車の扉を開けるのをエルトと一緒に待つ事にする。


「こういう場合って馬車の中に立て籠もってる方が良いの?」

「戦う者が外に居て、そうでない者が居た場合は馬車の中で待っていて貰った方が楽だな。通常は騎士を何人か外に付けて移動する。敵の数が多くて対処不可能であれば侍女などが中に居る貴人……この場合はクリスティナを逃がす、というのが普通だな」

「エルトは?」

「誰かの護衛をする場合は俺は馬で外を走るよ」

「そうなのね。……ねぇ、私がベルグシュタットの家に嫁いだら、そういう仕事もあるの?」

「うん?」

「アルフィナに行く途中、言われた事があるのよね。貴族女性の護衛に付けるには私は良いんじゃないかって」


 フィオナの護衛騎士に就職とか良いわよね。


「同じことを考えた事はあるな。予言の聖女に向かって『クリスティナを護衛として推薦してやる』と脅しもしたぞ」

「何それ!」


 アマネの護衛? 私が?


「痛い目に遭うのを黙って見ていればいいのかしら?」

「いっそのこと命を救ってやるのも爽快かもしれないぞ」


 私がアマネを助ける? うーん。ミリシャだったら悔しがりそうね!


「それも面白そうね」

「そうだろう」

「ふふふ」


 と、エルトと話し合ってたら外の声が荒々しくなってきたわ。


「出て来いって言ってるだろう!」


 まぁ、うるさいわね。待ってるんだから、さっさと開けなさいよね!


「……そろそろ痺れを切らしてくるぞ」

「うん」


 荒々しい声を上げながら男達が馬車の扉を開く。

 蹴り破ってこないのは、中々に良心的ね! もっと無法者かと思ったわ!


「おい、こっちに、」

「──フン!」

「ほげっ!?」


 丁寧に開かれた扉を壊しながら男が吹っ飛んでいったわ!


「先に出る!」

「ええ!」


 殴り飛ばした男に気を取られている内に私達は馬車を出る。


 そして……。


「に、逃がすな!」


 男達に向かっていったわ!


「はっ!」

「ぐあっ!?」


 エルトはいつかの決闘みたいに相手の武器を狙って叩き落としているみたい。

 それから……峰打ちね! アレが本場の峰打ちだわ!


「──薔薇よ!」


 私は、周囲に薔薇の壁を作る。

 それから……カイル達直伝の『暗殺者が居るならココ!』スポットを潰す為に、周囲の木々の上に向かって薔薇槍を伸ばした。


「ぐっ、この!?」

「フン!」

「ぐぁっ!?」


 鎧とかは付けていなそうね。騎士とかじゃないのかしら。

 邪教の暴力団体? それとも現地の荒くれ者かしら。


「薔薇よ! 一人残らず拘束しなさい!」


 動きを止めた相手から順番に、薔薇の蔓で手足を縛りつけていく。


「なっ……!?」

「解毒薔薇よ、口の中に咲きなさい!」

「もがっ……!?」


 口の中に薔薇を敷き詰めて、さらに蔓で猿轡。

 毒を飲んで自殺とかは出来ないようにして。


「くっ……! この、」

「ん!」


 私が倒した相手の拘束に意識を集中した隙を狙って、男が襲いかかってくる。


「──悪いが。お前達に彼女に触れる権利はない」


 そんな私の隙をエルトがフォローするように剣を一閃。


「ぐぁっ!?」


 まぁ。あっという間に敵を倒していくわね!

 私は天与なんて超常の力を使っているっていうのに、エルトの方が倒した敵が多いわ!


「負けないわよ!」

「ぐぇえ!」

「ふっ……背中を預けるのも悪くない気分だろう?」

「そうね!」


 私は好きに暴れながら……彼がその援護をしてくれる。

 そして援護だけじゃなくて自分からも攻め込んで倒していくわ。


「薔薇よ!」

「なっ!?」


 エルトが向かい合った敵の手足に薔薇を巻き付けて動きを阻害する。


「ぎゃあっ!!」


 何もしなくても倒せてた気がするけど。


「ありがとう、クリスティナ」

「フフン! どういたしましてよ!」


 楽しいわね! アルフィナでの戦いはどうしたって私が一番の戦力だったから。

 こうしてサポートに周るのも悪くないわ。


「さぁ! あんた達、今日は全員、帰る事も死ぬ事も(・・・・)出来ないと思いなさい? ふふふふ……!」


 悪女スマイルで威嚇するわよ!


「ひ、ひぃ……!」

「ふふふ!」

「ははは!」

「あ、悪魔共めぇ……!」


 何人でも襲ってくるといいわ! 今日の私は調子がいいわよ! フフン!



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