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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その39 代償

作者: 天城冴

前政府の御用学者として知られ、テレビなどで学者として出演していたヨツウラ・ハリは暗い部屋で、娘の影に…

ピタピタ

頬を叩く冷たい感触で、ヨツウラ・ハリは目覚めた。

「あ、ここは」

暗がりのなかにぼうっと小さな白い影が浮かび上がる。

“ママ”

「あ、貴女だったの、…ちゃん」

視界がまだはっきりしない。しかし、声でわかる、自分の娘だ。なのに、

“ママ、しっかりして”

娘に言われても、なぜか娘の名が思い出せない。

「ごめんね…ちゃん、ママは」

“嘘つきだから、ムクイを受けたんだよね”

「え?」

“ママはエライ人にオベッカ使って、学者さんのフリして、みんなをダマしたんだよね”

「な、何をいうの?」

娘の咎めるような声にハリは思わずひるんだ。

“セイジカにすり寄って、人がいっぱい死んでるのもトーゼンって言ったんだよね”

「そ、それは」

“テレビでいってたよね、ニホンの死者は限定できるって、じゃあ、死んだ人はトーゼンってことお?”

あざけるような声にハリは

「あ、アンタ、私の娘じゃないわね!」

“アハハハ、ずるしたから、娘にもズルさせたから、こうなったのよ”

「む、娘を返しなさい!」

“キャハハ、ズルして特製ワクチン打ったあ、娘に打たせたあ。打ってなきゃあ、限定された死者だったんだよねー、娘もアンタもお”

「な、何を言うの!わ、私は有識者で、せ、政府にも」

“ギャハハ、白状したよ、政府の御用学者。ゴマすりして、いい思いして、ワクチンも先に打ったから、死んだ人をひどく言えるんだよねえ、この似非学者、アンタなんて間接的ヒトゴロシだよ”

「なんですって!」

思わず、影の肩を掴んで強くゆすった。

ゴロンと

首が落ちた。

“ママ、イタイ”

「きゃああ!…ちゃん!」

“アハハハ、びっくりしたあ?コロシタ娘がもう一回死んだとおもったあ?”

「こ、ころした?」

“アンタがねえ、娘が化け物になったってえ、いってさあ、覚えてない?”

「あ、ああ」

思わず手を耳で塞ごうとしたが

ズボ

右手の人差し指が頬にのめりこんだ。

「キャー!」

“ハハハ、アンタも化け物みたいな顔だよお、ハリさん。テレビじゃ、すました顔で、誰も認めてない独りよがりのご高説とやらをのたまってたのにねえ”

「ア、アアアアア!」

“キャハハハハ”

高笑いする声がいつまでも闇に響く。


「あー、またヨツウラ・ハリが暴れてるよ」

「あー、あの前政府の太鼓持ち女でしたっけ。オレ、テレビとかみないし、ニュースとかもネットでちょこっとしか読まないから知らなかったけど、ニホンで死んだ人がこの程度は当然みたいなこと言ったって、いくら学者でもヒデー女って思いましたよ」

「ま、自称だよ。前ニホン政府の息のかかった、くそ狭い学会モドキでしか論文書いてないそうだし、本物の学者連中は名前も知らねえんじゃねえの。でも、自称でもマスコミだのがお膳立てして、もてはやしてりゃ、それっぽく見えるだろ。政府のお墨付きもあるしな」

「ニホン人劣化したからこうなったとか、今の国連政府の連中に言われると、時々ムッときますけど、ああいう連中が前の政府のときにいっぱいいりゃ、そういわれても仕方がないって思っちゃいますよ。だって国民が死んでも国際イベント開くとか、そんさい、いや総裁選とかで変な時に議会解散、なのにマスコミ連中もああいう連中も政府をかばうなんておかしいですよ」

「そ、前の政府がおかしかったから、滅茶苦茶になって国連さんがきたんだろうが。ま、アメリカとかはアフガニスタンとかほかの国から引き揚げたものの軍が行くとこないし、ちょうどよかったのかもな。俺らもウイルスに怯えずに、看護の仕事ができるし、よかったよ、マジで」

「しょっちゅう検査してるし、予防薬もらってますからね。にしても腹立つな、あいつら内緒でワクチン先に打ってたんでしょ、しかもオレらが打たせてもらえなかった特別製」

「そうらしいな。ま、そのせいで、あんなになったんだから、自業自得というか、天罰というか」

「やっぱ効かなかったんですか、ほかのワクチンも絶対じゃないっていわれてたけど」

「いや、ある意味効きすぎて、な。ウイルスは防げたけど、菌はだめだった」

「菌?」

「真菌とかいう、カビの一種だそうだ。普通は脳が侵されて、すぐ死んじまうんだそうだが、あのワクチンのせいで、脳みそが完全におかしくなっちまっても生きてんだよ」

「げ、じゃ、マジキチになっても、生きてるってんですか。あんなことやっちまっても」

「そ、おかしくなって、子供も旦那も母親もやっちまってもな。生き残ったのは嫌ってる姑だけなんて皮肉だよな。見舞いにもきやしねえ、当たり前だが。ま、家族みんなやっちまって、おまけにくっちまったハシゲンの野郎よりましだろうが」

「あれ、ひどかったですよねえ。あのマンション、怖くて住民ゼロ。さすがのC国人も買えないって、廃墟になったって。オーサカはそういう話ばっかりですよね、メイジの党とか、ヨシゲン劇場とかマスコミの連中とかが、おかしくなって、っていう。今じゃ笑いの町じゃなくて怪奇の町って感じで」

「それも報いってやつだろ、あんなアホな奴らに騙された。ダマしたアホ自身がワクチン効きすぎて、おかしくなって、こういうケーサツ病院みたいなとこに閉じ込められてんだから因果応報だろうけど」

「ホントは国連とかの施設なんでしょ、ニホン国民に対する犯罪の容疑者っていうかそういう人収容する」

「正式名称はえっと、ま、国家的犯罪者収容病院ってことになんのかねえ。治療が済んだら裁判で証言したりすんだろうけど、治る見込みないしな。注射打って抑えるしかないって女医さんもいってたし」

「有名な脳神経学者さんでもダメなんですか。菌があるからかな」

「滅菌はしたらしいけど、脳の神経が破壊されたのは元にもどせないんだってさ、今の治療じゃ。ウイルスにも菌にも生き延びたけど、これじゃあねえ」

「おかしくなって、家族を自分でやっちまって、それでもまだ生きてるなんて、それこそ」

「生きる意味があるかという人生、それがアイツらの代償だろ、ズルして自分たちだけいい思いしようとしたんだから」

「そうですね、あ、おとなしくなった。正気に戻ったのかな」

「ほんと、たまに戻るな。もっとも戻っても、なあ」

ああああ、と低いすすり泣きが聞こえてきた。薄暗い独房で自らの現実の悲惨さをかみしめながら、現実と悪夢とどちらがマシなのかハリは壊れた頭で考えていた。


どこぞの国では冷凍ワクチンを冷蔵してダメにするわ、異物購入の不良品を仕入れてしまうわ、政府寄りのお方は死者想定内とか、言うこと滅茶苦茶ですが大丈夫なんでしょうか。ワクチン頼みはトップが交代しても同じようですが、そのワクチンすら危うく、ほかの手がない政府とその太鼓持ちなどにみなさんいつまで我慢しつづけるんですかねえ。

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