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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

忍者のかくれんぼ

作者: 拙者

拙者物の怪に追われている故、箪笥に隠れておる。

当然恐怖であるが、拙者は忍者ゆえ平静。

元より敵城の調査に来た見、危険は承知。

今も期を見て箪笥より出でて逃げ帰る事を考えておる。


拙者は忍者である、いくら不可思議な物の怪がコノ城にいるとはいえども恐れてはならぬ。

そのため僅かに箪笥の戸を開ける、遠くに物の怪らしき影を見る。

出るのは能わず、恐れてならぬとはいえどもあな恐ろしや。

戸を再び閉める。


物の怪の姿は大そう不気味也。

影は鹿に似ておるものの、瞳が4つと草食う獣にそぐわぬ牙を持つ。

拙者優秀な忍者ゆえ、ヤツは戦ってはならぬ相手と見受ける。

あやつは人如き茶々の子さいさいに殺められると、忍者故解る。


少し身を震わせる。

暗闇の中では恐ろしさが増え、すぐ傍にあの物の怪がいるような気にすらなる。

だというに拙者、狭き場所で身を強張らせ、心を疲弊しようとも、まるで出る気にならぬ!

いかにしてかの物の怪を打倒さんと案を巡らすも、恐れゆえか良い案は出ぬのだ。


しかし、拙者は忍者ゆえ落ち着く術なら持ち合わせている。

九つの印を結び、息を穏やかに吸い、そして吐く。

外来の者がいうトコロの”まいんどふるねす”で落ち着いた。


ゆえに、よき考えも浮かぶ。

今はまるで拙者が幼子の頃によくしていたかくれんぼではないだろうか。

かくれんぼだ。

となれば、かくれんぼに活かした策謀もまた、良質な術で有るまいか?


呼吸を穏やかにし、微塵も体を動かさぬよう微細な注意を払う。

あの稚戯と同じく、精神的勝負なのだ。

見つからぬよう気配を消し続け恐怖に耐え続ける、極限まで。


あの物の怪が近くにいる事は間違いの無い事であろうが、稚戯の思い出が拙者の精神を安定させた。

拙者は忍者、恐れを知らず、任務を達成する忍者。

そして幾度もかくれんぼに勝利をおさめた、かくれんぼ“ますたあ”。


そうしていると一度、眠りこけた。


それゆえある程度時間が経ったと思い、箪笥の戸を少し開けてみる。

物の怪はおらぬ、恐る恐る箪笥から抜け出せば、

目に見える程傍に物の怪はおらぬようである。

しかし城の廊下や部屋のあちこちに死体や血痕が点々としており、あの物の怪がここで多くを殺めていて、未だ城の中にいるとは愚か者でもわかるであろう。

拙者も死体として転がっていたやもしれぬ。



ふと、遠くより悲鳴が聞こえる。おそらく物の怪に……

女子の悲鳴ゆえ、高尚な武士なら助けにゆくかもしれぬが拙者は忍者。

むしろこれを好機ととらえるのだ。

遠くで物の怪に女子が殺された、という事は拙者の傍に物の怪はおらぬ。

今こそ脱出の好機‼‼


走り、飛び、この城の屋根裏に上がった。

このような城に長居などしたくない、拙者は急いだ。逃げる事だけを考えるべきだからだ。

屋根裏の穴より拙者は城の外へ飛び出し、出口をむかって跳び、走り、そして跳び、掴み、塀に辿り着いた。

そうして拙者は城からの脱出を成し遂げたのだ。


いつの間にやら朝ぼらけの山を走り、敵城より離れた頃ふと後ろを見やる。

7里程遠くの敵城の窓から、かの物の怪がこちらを恨めしそうに睨んでおった。






あの物の怪がなんだったのか拙者にはわからぬ

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