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侯爵令嬢は瞳を隠す  作者: 鈴木琉世
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1.リコリタ王国

 この世界には火・水・風・土の四大エレメントを中心とした妖精が存在しており、ここリコリタ王国は現国王、アレックス・リコリタの治世より水の妖精の加護を受けている。


 元来、リコリタ王国は1年を通して温暖な気候であり、農耕が盛んに行われている。また海に面した領地に港を開き、海外との交易を盛んに行っていたため、人、物、情報が交わり合い、大きな財力を持つ豊かな国であった。

 しかし海や山に面した領地を持つ豊かな国ということで他国からの侵略の標的になりやすいことが最大の悩みの種であり、侵略戦争に備える日々を送っていた。


 ところが現王、アレックスが婚姻する際、突然水の妖精が現れ、祝いとしてリコリタ王国は水の妖精の加護を授けられることになった。


通常、人は妖精の姿を見ることはできないが、水の妖精がリコリタ王国へ加護を与えると契約を結んだ際、王家に与えた王笏を持つ者のみ妖精の姿を見ることができると伝えられている。


また、特定の妖精の加護を受けた国は守護妖精の結界に守られ、外敵の攻撃を受けることは一切無い。これにより、リコリタ王国は他国からの侵略という長年の悩みから解消されることとなった。


 王都には妖精への感謝の意を込めて神殿が建てられ、神官や民たちが日々妖精に祈りを捧げている。

満月の日には神殿に妖精から日々の祈りのお礼として妖精石が贈られる。

その妖精石は王国の領地に配られ、火の妖精石で火を起こしたり、土の妖精石を土に埋めて農作物を耕したり、風の妖精石を使い風車を動かし製粉や製材を行ったりと、今まで以上に生活が便利になり、もともと豊かであった国はさらに暮らしやすい国へと発展していった。

また、水の妖精石のお陰で水道設備が整っているため、リコリタ王国は平民の家にまでも温水シャワーが完備されている。


 神殿に贈られる妖精石の量はその国で暮らす民たちの喜怒哀楽に大きく影響され、民が妖精に感謝し、楽しく平和に暮らしていると妖精が喜んで妖精石を沢山贈ってくれると言われている。


国として妖精の加護を受け、妖精石を贈られるということは国が最大級に富むということを意味するのだ。


それゆえ妖精の加護を受けたいという国は多数あるものの、そこは気紛れな妖精たち。彼らの気が向かなければ加護は受けられず、また国に住まう民に悲しみや苦しみが広がるとたちまち妖精の加護は消えてしまう。


――


そんな水の妖精の加護を受けるリコリタ国 フィオニア侯爵家の長女として産まれたイリス・フィオニアは8歳になった。



「お嬢様。そろそろご起床の時間ですよ。」


「うぅぅぅぅん… いつもより少し早くない…??」


イリスは眠そうに目を擦り、嫌々ベッドから身体を起こす。


「お嬢様、良いのですか? 今日は船が戻ってくる日ですが。」


「……そうだったわ!!! 早く準備しなくちゃ!!」


侍女のエレナの言葉に飛び起き、走って私室の窓を全開にする。


「エレナ!!見て!!船よ!!船が帰ってきたわ!!!」


窓を開けると潮の香りがする風が部屋いっぱいに広がる。

イリスは大好きな潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。


港には3カ月前に出港した船が戻ってきており、船からはたくさんの積み荷が絶え間なく降ろされている。

船が戻ってきた街はいつも以上に活気にあふれていた。


 王国にただ一つの港を構えるフィオニア領には、いち早く新しいものや珍しいものが入ってくる。

見ているだけでワクワクする風合いの異なったカラフルな布、異国風のアクセサリーや果物を売る屋台などが立ち並ぶ港町がイリスは大好きだった。


「お、お嬢様!!! 外からお姿が見えてしまいます!!!」


もう一人の侍女のマヤが慌ててカーテンを閉める。


ふと自分の姿を見下ろすと寝起きの顔に寝巻にボサボサの頭。

イリスの顔は一気に真っ赤になり、その場にしゃがみこんだ。


「さぁ、ご準備しましょうね。」


エレナはクスっと笑い、イリスの身支度を始めた。




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