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側仕えと王都陥落

 変わった神様と和解したので、私はレーシュ達の手伝いをするためお城へと向かった。

 騎獣を操縦して空を進む。

 お城は半透明の壁で覆われており、おそらくはあれが結界なのだろう。

 ローゼンブルクの騎士達が炎や風の魔法で破壊しようとしていたが全く壊れる気配をみせない。


「お姉ちゃーん!」


 私を呼ぶ声が聞こえたので下を見ると、フェニルの姿が見えた。

 一緒にやってきたが、レーシュ達の手伝いのために途中で降りてもらったのだ。

 操られていた私が付けた傷も回復薬でほとんど治っていた。

 私はフェニルの近くで騎獣を降りた。


「邪竜を倒したの?」

「ううん、別の神様だったみたい。話せば分かってくれる優しい神様だったよ」


 邪竜でなくてよかったと話をすると、フェニルは少し考え込む。


「どうしてこのタイミングで別の神様を呼んだんだろう。なんだか変だよね……」

「そうかな? でも今はこっちが最優先よね」


 一生懸命考えているフェニルには悪いが。今はそれどころではない。

 私は剣で結界を壊そうとした時に、一瞬だけ鳥肌が立った。


「ヴィー? どうしたの急に袖を引っ張って? それに震えが――お姉ちゃんも汗がすごいよ」


 ヴァイオレットも感じたのだろう。恐ろしい何かが城の中に居た。

 しかしすぐにその気配も消え去り、おそらくもうすでにどこかへ消えたのだろう。


 ――本物の邪竜が現れていたのだ。


 先ほどの神様とは別物だ。まるで三大災厄が赤子のように感じた。

 しかしもう立ち去ったのなら気にすることはない。

 また剣を振ろうと振りかぶったときに、結界にヒビが入り始めた。

 攻撃を続けていたローゼンブルクの騎士達が騒いでいた。


「お、おい! 結界が消えていくぞ!」



 その言葉の通りに結界はどんどん割れていき、城へ入る障害が無くなった。

 また城の天井が割れ、真っ黒な鎧を身につけた女性が姿を現した。


「レイラ!?」



 これから助けに向かおうとしていたレイラが城から飛び出た。

 そして高らかに戦いの終戦を宣言していた。

 城は制圧され、私はレーシュと合流した。

 フェニルに話したように別の神様だったことを伝えた。


「そんなことはどうでもいい」


 彼の手が私の顔と横髪の間を縫うように手を添える。彼の手が私の頬を触るとその温かさが伝わった。


「もうなんともないか?」

「う、うん」


 すると彼の唇が近づいて、唇が重なった。

 突然のことに反応できず、また周りからも遠巻きに見られている視線を感じて恥ずかしくなった。


「ならいい。お前には言っておかないといけないことがあってな――」

「あらあらお熱いわね」


 レーシュの言葉を遮って、レイラが騎獣に乗ってこちらへやってきた。

 騎獣から降りた彼女は普段とは違う鎧のせいなのか、戦う戦士のように感じられた。

 そしてこの気配に少しだけ見覚えがあるような、ないような。

 それよりも、前に見たときは目が虚ろで心配していたが、目の前の彼女は何事も無かったかのようにピンピンしていたことに安心する。

 私は彼女へと抱きついた。


「良かった! 無事だったのね!」


 元々は彼女を助けるためにこの城へやってきたが、救出に失敗して少し時間が掛かってしまった。

 レイラも抱き返してくれる。


「ええ、貴女たちのおかげであちらも隙が出来ました。それにモルドレッドも、その見た目だとかなり無理をしたようね」


 私はハッとなり、いろいろなことがあって気が回らなかったため、レーシュをじっくり見た。


「ど、どうしたの? 前はそんなにやつれてなかったでしょ?」


 疲れとは違う痩せ方をしていた。

 顔色も悪く、立っているのもやっとのような気がする。


「そうですね。王族と戦うには契約魔術から逃れないといけませんからね。おかげでもう二度と魔法が使えない身体になりましたよ」

「魔法が使えないって……何をしたの?」


 レーシュからもっと話を聞きたかったが、今にも倒れそうな彼を休ませる事の方が重要だ。

 城の医務室で彼を休ませている間に、フェニルから私が居ない間のことを教えてもらった。


「血を変えるって……そんなことできるの?」


 契約魔術から逃れるためとはいえ、危ない方法としか思えない。


「戦いに出られる体力はあったんだから、たぶん大丈夫だと思う。それよりもレーシュ様は今後のことの方が心配だよ。魔力が無いのなら貴族として生きていけないかも」


 そういえば前にもそのようなことを話した気がする。しかしレーシュは別の道で生きていく覚悟を決めていた。

 それならば私から何も言うことはない。

 ふと、外から大勢の人たちがやってくる気配を感じた。

 フェニルとヴァイオレットは部屋に残ってもらい、私だけ部屋の外に出た。

 外には武装した騎士達が居た。

 そして見覚えのある大貴族達も居た。


「ネフライト様にコランダム、全員お揃いでどうしたの?」


 どうにも重苦しい雰囲気を感じた。

 するとブリュンヒルデのお父さんが一番に怒鳴った。


「どうも、こうもあるか! モルドレッドを出せ! あいつのせいで我々は死にかけたのだぞ!」


 そういえば無理矢理に彼らを脅して戦わせたんだっけ。

 これは怒っても仕方ないな。

 ネフライトもあまり乗り気で無い様子だった。


「ごめんなさい、エステル。どうしても彼は反逆をした罪があるの。今回のことでたくさんの非難が集まっているから、その沙汰をアビ――新たな国王にしてもらわなければならないのよ」


 レーシュは時間が無いからとかなり強行な手段に出た。

 全員が死ぬか生きるかを勝手に決められたことでかなりの不満を持たれたのだろう。


「なら私が代わりに――」

「俺を呼んだか」


 部屋からレーシュが出てきた。さっき寝たばかりなのに騒ぎで起きてしまったのだろう。

 ふらつく彼を私は肩を貸して支えた。


「皆様、もしかしてアビ・ローゼンブルクを救ったお礼ですか?」

「抜かせ! 貴様は――」


 ブリュンヒルデのお父さんはレーシュの顔を見た瞬間に沸騰しそうなほど顔を真っ赤にしていた。

 しかし、それは遮られた。


「あらあら、皆様どうかしましたか?」


 騎士達がやってきた廊下の反対からレイラがやってきた。

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