Pre.6
港での生活には慣れた。しかし、どうも気味が悪くて仕方がない。突然現れた私たちの存在を気にかける人はどこにもいないのだ。もっとも、大きな街であるし、内外の人間が盛んに行き交う中においては、人間同士の距離感というのは違うのかもしれない。この問題はその程度。
そしてもう一つ、違和感がある。
教会の影響力を感じられないのだ。私たちの街がそうであったように、この街も祭りへと動いているべきだというのに、そのような様子はどこにもない。妹はそのためにこの街を選んだのであろうか。
そのようなことを妹に尋ねる。するとこう言った。
「あの街が異常だったんだ。人々はあそこまで原始的ではないし、私たちもまたあの街にいるべきではなかった。」
妹の体は何かを恐れるかのように震えていた。
「寂しかっただけなんだ。だからあなたをこんな風に…。」
何かを言いかけた妹の口は、それ以上の言葉を紡ぐことなく閉ざされた。
この街の人間はなんだっていうんだ。男は恐ろしく感じていた。その男はむしろ、人々に恐れられる存在であるはずだというのに。
街にやってきた見知らぬ男女、二人。初めはよくいる旅人であろうと、若い男女が妬ましいことに二人旅かと、その程度にしか思わなかった。
しかし、彼らは町外れとそう遠くない場所にまで入り込み、もう何十年も放置されていた空き家に-少なくとも男の知る中においては、彼らのような若者が所有しているはずのない場所に-住み着いた。
そこまではよかろう。もしかしたら故あって彼らの所有物となったのかもしれないからだ。
問題はここからだ。街に住む誰一人もが、彼らに関心を示さないのだ!男が店頭にて馴染みの店主に話を振ったとき、彼は確かに認知しているかのように振る舞いはした。しかし、男に指摘されるまでは、そのようなことに全く気がつきやしなかったのだ!
と、ここまでは怖い話だ。ここからが喜劇に変わる。
では、と男は考えた。誰も住まない空き家に、ある日突然俺が住み着いたとして、それに疑問を抱く人間は現れるのか。
賑やかであるかのようなこの街にも、空き家は点在していた。