Pre.3
街の装飾は日に日に贅沢なものへとなっていった。どうやら外部の人間が中心となっているようで、商店においても少なからず特需が発生しているようだった。
「今年はずいぶんと豪華なものですね。」
神父に尋ねる。
「ええ。今年は特別ですので。」
「特別?どういうことですか。」
私の知る限りにおいて、定められた年に限る祝い事などはないはずであった。
「ええ、特別です。」
それ以上のことはどうも避けられて教えてもらえない。人々もまた、それ以上のことは知らされていないらしい。しかし、労働者については教会が直接雇っているらしく、何かしらの宗教的意味合いを持った行動であることについては疑いようはなかった。
今日も妹は不機嫌であった。先日のように部屋に引きこもることはないが、体調が優れないでいるのはたしかであった。
「街はどうなってるの。」
妹が街のことを気にするのは珍しい。今までは話しても、連れて行ってもつまらなさそうにしていたというのに。
「日に日に華やかになっていってるよ。せっかくだから一緒に見に行くか。」
そう誘うと少しばかり悩むような素振りをとる。
「そうだね、一緒に出かけたい。
体調は整えておくから、明日…」
「わかった、じゃあそうしよう。」
妹の様子がどこか不自然にも感じられたのは、きっと彼女の体調がよくないからであろう。それよりも彼女が自ら外出を望んだというその変化を嬉しく思った。
その晩、寝つけないのだと妹が私の部屋を訪ねた。招き入れるとそのまま布団に潜り込む。
しばらくぶりだけど、と呟くと私も入るようにと催促した。
布団の中で顔を合わせた彼女の様子は、寝つけないのではなく眠る気がないらしかった。