Pre.2
妹は街が信仰に染まるこの時期を何よりも嫌う。
「あのペテン師ども、まだ帰らないのかな。」
「ペテン師って…。もう二週間はいると思うよ、いつも通り。」
妹が彼らの何を気に食わないでいるのかは理解できないが、その主張は人々をインチキで煽動する外道というものであった。それについては否定できないのもまた事実ではあるが、そう言い出しては実のところ我々だって大差はない。それに、彼らと親しくしないことには経営は成り立たない。
「別に彼らは私たちにはなにもしてこないよ。」
食事を終えるとすぐに部屋へと戻ってしまった。
「そうですか…、いつかお会いしたいものですけどね。」
神父に挨拶をするが、例の如く妹がついてくることはない。
「あなた方の事情は少々入り組んでおりますから…。」
「なんです?」
神父の呟きが耳に残り、聞き返すが、いえいえとはぐらかされる。
「それにしても、ここはいい街だ。活気があるのはもちろんだが、統治が行き届いている。」
「持ち上げたってなにもないぞ。」
「いいや、本心だよ。どこも過剰に踏み込んで荒れるものだが、ここはそういったことがない。立派なものだ。」
恐れて距離を置いているだけだ。そう返すと席を立つ。
「なんだ、もう少しくらい」
「妹が寂しがるだろうからさ、もう帰るよ。」
「そうかい。」
建物を出て、改めて街を眺める。鮮やかに彩られた通りには人はいない。まだ準備の段階にある。
妹は普段と違い、出迎えることはなかった。部屋に向かうと「気分が悪い」とだけ返した。
夕飯にも顔を出さなかったが、翌朝には何事もなかったかのように食事の準備をしていた。
昨日はどうかしたのか、と尋ねても、ただ調子が悪かったのだというだけであった。しかしその表情からするに何かを誤魔化しているように感じられた。