第九十九話 話し過ぎた冒険者ギルド
宿屋のおかみにはサクラが事情を説明して、僕とクロウは一緒の部屋に宿泊できることになった。
クロウが説明できる範囲で自分の事を教えてくれた……
「我、魔力をもらえたら口から何も食べなくても大丈夫。」
「我、食べることもできるよ。」
「我、卵の中にいた時からラウールとサクラの魔力を感じていた。」
「我、ラウールもサクラも好き。」
「我、我の能力はまだわからない。」
「我、なんとなくこの世の中のことはわかる。」
ワレワレワレワレ……我か……
何か頭に残る言葉があるが、クロウは自分の事を教えてくれた。
クロウはなぜこの世のことがわかるのかは説明できなかったが、頭の中には色々な知識があるようだ。
そして、空はもちろん飛べる。
ちなみに産まれてからは僕の肩が気に入ったのか、僕の左肩が定位置になりそうだ。
夕食を摂った後は僕が何となくクロウに魔力を注ぐと満足したようで、僕もその後はすぐに眠りについた。
次の日の朝はみんなで食堂で食事をした。
クロウには魔力を上げた。
周囲には冒険者らしき格好をした人もいるが、前世の鴉と同等の大きさのクロウを怖がる者はいなかった。
その代わりに物珍しそうに見たり、声をかけて来る者がいた。
僕はクロウの事を食堂で軽く紹介してから、冒険者ギルドに向かった。
もちろんクロウには声も出させていない……
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冒険者ギルドにつくと珍しく男の人が受付をしていた。
その受付の人の前には誰もいなかったので、僕は空いていてついていると思い声をかけた。
「おはようございます。今日は従魔登録をお願いします。」
目の前の受付の男は僕の周囲を見渡してから口を開いた。
「従魔登録は良いが……従魔は外か?」
「いえいえ、この肩に乗っているのが従魔です。」
首を伸ばし僕の肩の方を見た受付の男は目を見開いた。
「この鳥が……これが魔物?」
失礼な……僕とサクラがようやく孵化させた魔物なのに……
「そうですよ! 魔物の卵から産まれたので魔物ですよ!」
なんとなく納得していない男は僕に向かってもう一度聞いてきた。
「この鳥が……魔物の卵から? 魔物の卵はどうやって手に入れた……」
「普通にダンジョンで手に入れましたよ。魔物の卵が出るまでが大変でしたけど。」
「……そう言えば冒険者プレートを見ていなかったな? 見せてくれ。」
僕は冒険者プレートを見せた。
「サクラも出して……依頼もそろそろ受けてもいいだろうし。クロウがもう少し成長するまでは、この第三都市に拠点を置こう。」
「良いわよラウール。じゃあ私も出しておくわ……」
そう言ってサクラも冒険者プレートを男に渡した。
「おい……お前らランクはこれか! ……んーーそれだったらこの鳥も魔物と認めても良いのか?」
さすがにSランクの冒険者が連れてきた魔物を……魔物ではないとは言えないようだ。
「そうですよ。きちんと魔物の卵を手に入れて孵化させて仲間にしましたから。」
驚いた表情をした受付の男は、クロウと冒険者プレート、サクラと僕にと忙しく目を動かしていた。
「この冒険者プレートを装置に入れても良いか? 従魔登録をしようと思う。それと……冒険者プレートの魔物討伐の欄を見ても良いか?」
そう言われた僕とサクラは同意した。
そして目の前の受付の男は装置に冒険者プレートを入れた……
「従魔とした魔物の種類と名前を教えてくれ。それとあなた方二人の冒険者プレートに従魔として登録するのか?」
そう聞かれた僕とサクラは相談し、二人の冒険者プレートに登録してもらった。
目の前の受付の男は従魔登録をしたのだろう動きをした。
そして僕達は、魔物討伐履歴も見れるようにしてみた。
「……な”っ!! お前らこれは……冒険者プレートに記憶されているってことは本当なんだろうな……。お前らは何者だ……」
そう聞かれた僕達は、冒険者ギルドの職員を信用して、軽く説明を始めた。
「僕とサクラで【黒猫】って言うパーティーです。二人ともSランク冒険者です。テザン皇国で魔物の被害からちょっと街を守ったら……Sランク冒険者になりました。その後は魔物の卵が欲しくてダンジョンを攻略していたので、その表示されている討伐数になったと思います……。今日からはこの魔物のクロウと名付けた従魔の成長を見守りながら、依頼も受けるつもりでいます。」
……
…………
「ちょっと街を被害からって……。魔物の卵が欲しくても、この討伐数って……。何年ダンジョン攻略に時間をかけたんだ…………お前らはまだ若いだろ?」
「若いですけどそんなに日数はかけていませんよ。魔物の卵の孵化に二十日? 魔物の卵を手に入れるまでに一ヶ月くらい? もう少し時間が経過したら、またダンジョン攻略組のSランク冒険者たちが来るんじゃない? それくらいの時間だと思うけど……」
……
……
「この数のダンジョンボスだろう魔物の討伐数……この数のボスを……その日数で倒したって……本当にお前らは何者だよ……。あとな……魔物の卵の孵化に二十日? ……魔物の卵の孵化を成功させた秘訣も教えてもらえるのか?」
「……教えても良いですけど、僕たちも聞いた話だけですよ。魔力を満足したようで卵に込めることだけですから。」
「それは知っている。しかしほとんどの人は失敗するんだ。そしてもっと時間がかかる。そして魔物の卵から孵化した魔物も…のなかなか孵化させた人物に懐かない……」
「んーー今回は二人で魔力を込めましたけど、やったことはそれくらいですね。ただ僕たちは二人とも、魔力はもの凄く強いですけどね。」
「……二人でか。他の魔物の卵の孵化に成功した人物は、多くの人員を投入して魔力を注いだみたいだが……。想像する
に……魔力を注入する人員は少ない方が魔物の卵を孵化させた後に懐き易いのか?」
……
「魔物の卵から産まれたクロウは、僕を父、サクラを母と認識していましたよ。」
「ん~、やっぱり人員や魔力強度……そこに秘訣があるか……。ありがとうな、貴重な情報だ。」
「どういたしまして。これで従魔登録は終わりですか?」
「あーー終わりだ。これでクロウ? は従魔として登録された。後は従魔に目印をつけておいてくれ。人が目印を付けたとわかる物なら何でも良いからな。」
……
僕とサクラは考えた。クロウには何の装飾品が似合うか……
僕は閃いた!
ダンジョンで手に入れたミスリルの腕輪を、クロウのどこかに着けたらどうか?
サクラは考えた。
ダンジョンで手に入れたミスリルの指輪を足にはめることが出来るのではないかと。
……
僕とサクラは目の前の受付の男に閃いた事を話してみた。
目の前の受付の男は驚いていた。
「そんなに簡単にミスリル装備を使うな!」と言われた。
ミスリルは貴重な物で、従魔やペットなどに着けることは聞いたことがないと言った……
僕とサクラはまた考えた。
今まで手に入れた物で目立ちすぎず……すぐに周りの人が僕達の従魔とわかる物がないかなと……
目の前の受付の男にも相談しながら決めた。
【ミスリルの指輪】
結局はサクラの案を採用した。
目の前の受付の男も「盗まれる危険性はあるが指輪のサイズならわかりにくいから大丈夫かもしれない」と返事をした。
僕は早速クロウの足に指輪を通した……
「我うれしい!」
目の前に受付の男がいるが、何も考えていないのだろうクロウが声を出してしまった……
「おい! まだ何かお前らは秘密があるのか?」
そう聞かれてしまったからにはしょうがないと、僕は少しクロウについて説明をした。
産まれてすぐ人族の言葉は話せたこと。
ある程度はこの世界の仕組みを知っていたこと。
目の前の受付の男は小さな声で話しかけてきた。
「まだお前らの従魔にはそんな秘密もあったのか……だが良い情報が聞けた。」
流石に話し過ぎたと思った僕は、目の前の受付の男との会話を終えて、依頼票の確認に向かった。




