表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/153

第九十七話 ラウールとサクラの魔力

ラウールとサクラは興奮しながらも眠った。そして次の日は朝食を食べてからラウールの部屋にサクラも来た。




ベットに腰かけた僕は、椅子に座ったサクラに聞いてみた。

「今日は一日中宿屋にいても良い? 早速卵に魔力を送りたいと思ってるんだけど……」


「良いわよ。私も魔物の卵がどう変化するか見ていたいし、どれくらい魔力を込めて、どれくらいの期間が必要なのか気になるわ?」


「そこなんだよね……何も分からないんだよね……。これまでも詳しい条件はわかっていないみたいだし、愛情を与えながら……魔力をできるだけ多めに込めたら良いんじゃない?」


「んーーいっぱいって言っても、ゆっくりにした方が良いんじゃない?私達の魔力、MPって表される数値はもの凄い多いから。」



「そうだったね。僕達の魔力は一般的な人よりだいぶ多いんだった。……Sランクの魔物に対しても、詠唱する魔法なら初級と言われる魔法?になるのかな……。詠唱してイメージを強くするだけで、Sランクの魔物でも傷をつけることが出来るんだものね。」


「傷つけるっていうか、倒せるくらいにね。思った以上に二十五歳の平均値の十倍から二十倍の能力ってやばいね……」


「僕もまだまだだと思ってたんだけど、やばいね能力だね……。Sランク冒険者と比べると五倍くらいは能力値が高い? EXランク冒険者は見たことがないから比べようがないしね。」


「そうね、今度EXランクの冒険者がいるっていう情報があったら聞いてみる?」


「そうだね、冒険者ギルドに行ったら、何人いるのか、名前は何と言うのか聞いてみよっか。」


「そうしましょう。」


魔物の卵をさすりながら僕が話題を魔物の卵についてへ戻す。


「話がそれたね。じゃあこの僕の腕ほどの大きさのある魔物の卵に、魔力を込めていこうかサクラさんや。」


「なぜそこで口調が……私も魔力を込めるの?」


僕はその言葉に驚いた……


「もちろんだよ! せっかく僕と一緒にいるって言うし、もともと一緒にやりたいと思ってたんだ。これからも一緒に行動するなら、サクラの魔力も流しておいた方が良いんじゃない? 僕達二人に従うかもよ?」


「……嬉しい……。これからも私と一緒に旅を続けるって捉えても良いのよね?」


……


「サクラが嫌じゃなければね。」


「嫌なわけないじゃない! ラウールこそ他の冒険者を捕まえて来て、明日からはサクラはいらない……なんて言わないでね!」


「言うわけないよ。サクラこそ急に……この人と旅することにしたっ! なんて言わないでね。」


「言わないわよ!!」


そこで僕達は笑い出した。

これから先の旅はお互いに一緒に歩むことを約束できたから。

僕達はここまで一緒に旅をしても、一方的に相手からお別れを言われる事を恐れていた。

しかし今日……その不安がなくなったと感じた僕達は二人だった。


~~~~~


しばらく笑いあった僕達は、魔物の卵に魔力を込める準備に入った。

お互いに初めてステータスの数値を正確に言い合った。

まだ僕の方がチートが強かった。


ここまで話したのならと、お互いの称号以外は教えあった。称号は恥ずかしいものも今後出てくるかもしれないから、今後も明かすことは無いだろう。

お互いのスキルを考えても、僕の方がMP魔力ともに多く、回復も早いようだ。

だから僕はサクラが注ぐ魔力に合わせることにした。


「じゃあ、左右から徐々に魔力を込めて行こう。サクラの魔力をできる限り真似するよ。」


「よろしくラウール。私もできる限りゆっくりと、力強く、多く魔力を込めていく。」


僕達は食事をする以外はずっと魔物の卵に魔力を込めていた。

寝て起きて、魔物の卵ではない魔力を込めて食事をして……


宿屋はしばらく延長の手続きをしなくとも良いだけの料金は支払っている。


二日、三日、四日と魔力を込めるほど、魔物の卵の中身が活性化している気がする。


……魔物の卵に魔力を込めって七日たってもまだ孵化する気配はない。


七日以降もサクラとたわいもない話をしながら魔力を込めていった。

サクラは僕と長い旅をしているけど、まだこの世界には慣れていないことを話していた。

僕はこの世界では自由に生きて行きたいことを改めて伝えた。

それにはサクラも同意してくれて、僕と一緒に自由に生きて行きたいと言ってくれた。


僕達はなんとなく生きていきたいと願う……


前世が何かに縛られた……不自由で決めつけられた人生だったから。

自分で断ることが出来ない人生は二度と嫌だ。


……


魔物の卵についてサクラは僕に言った。

「なかなか魔力が満たないのかな? っていうか、満たすことが条件ではないか…に」


魔物の卵に手をあて僕も答えた。

「なんとなく反応してきている気がするんだけど……悩んでいても孵化するわけでもないし、何か楽しい話題にしよっか!」


その僕の言葉で話題変え、和やかな雰囲気で旅の思い出を話していた。


~~~~~


冒険者ギルドで依頼を受けず、ただひたすら魔物の卵に魔力を込めて二十日になった時……魔物の卵がかすかに動いた。


「動いた! 動いたよラウール!」


お腹を蹴った、お腹を蹴ったみたいにサクラが言った。


「そうだね! 動いたよ! これは魔物の卵に魔力を込めることは成功しているみたいだね!」


段々と魔物の卵が目に見えて震え始めている。


「もしかして今日生まれる?ねえラウール、産まれるの!」


「もう少し魔力を込めてみよう。もしかしかすると今日孵るかな!?」


……


どんどん魔物の卵が震えだし、心なしか卵にひびが入って来ている。


そしてそのひびは大きくなり……とうとう上の方が割れてきた。


「もう少し、もう少しよ!」


「頑張って出ておいで!」


僕がもう一度「頑張って」と言った時、とうとう割れた。

魔物の卵が割れた……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ