第八十九話 冒険者ランクS
ラウールは思った……やりすぎた。
サクラは思った……せめては二回くらい斬りつけたら良かったか?
今【黒猫】は冒険者ギルドにいる。
僕の周りにはウール、シトカ、Sランク冒険者パーティー二組、高ランク冒険者数人になぜか勇者のダイチもいた。
「おうラウール!! 大活躍だったみたいだな!! 流石! 俺は今回はファンフート様にお願いされて、現状把握に来た。」
無理に状況把握なんてしなくてもいいよ!とは貴族の使いには言えないな。
次にウールが口を開いた。
「ラウール、サクラ、ありがとう。君達がいなければ……街に被害があったかもしれない。そして冒険者は確実に何人かは死傷者が出た……。今回はどいつも無傷だ……ありがとう。」
ウールの笑顔は今まで見たことがなかったが、慣れない表情なのかぎこちない微笑だ。
「私はもっと色々と聞きたいことがあるけどね……」
シトカさんは普段通りの口調に戻っている。
……Sランク冒険者が話した言葉は割愛する。
僕は謝っておいた。
「ごめんなさい! ちょっとだけ気合が入りすぎた!!」
「「「ちょっと?!!」」」
他の人達が驚いた。
そして言葉の使い方を間違えた……
「ちょっとと言うか、ん~……今回の討伐が成功してよかったね!!」
僕は誤魔化そうとした。
「「「おい!!」」」
「何か変だった? たまたま良い感じの詠唱が浮かんで……たまたま良い感じの威力が出た魔法が発動して……たまたま倒せたんだよ~!」
僕の言葉にダイチも反応した。
「ラウール……それは無理があるぜ……」
シトカも反応した。
「ラウールさんは何を言っているの?」
ウールは更に厳しかった、
「はっ?!」
周りの人達が驚いた。冷静なウールがそんな感じで反応するのかと。そして続けて話し出した。
「それでもゴブリンロードを倒せたんだ。【黒猫】の二人はSランクに昇格するかもしれない。サクラは飛び級だ。」
「えっ! 私が飛び級? 魔法を一つ唱えて、ゴブリンの首を一つ飛ばしただけなのに!?」
「「「「「うぉい!!」」」」」
名を知らないSランク冒険者は「俺にも無理だからな……一応Sランクです……」と落ち込んだ。
ウールも話し出し「昇格に必要なのは強さだけではない。自分は目立ちたくないという理由があったのだろう。しかしお前達は前線に出てくれた。そして他の冒険者の犠牲を出さなかった。これは……いくつもの依頼をこなすことも大切だが、冒険者ギルドの仲間の命をなくさなかった。十分な貢献だ。」
ダイチも話に乗ってきて「凄いぜ!! だってさ、ゴブリンロード一匹でやばいんだろ! だから今日は確認のため、ファンフート様も俺をここにねじ込んだんだぜ! それが他にも上位種がいるような戦場で、一気に上位種もろとも殲滅……。しかも誰も怪我をしていない。俺の世界なら、何階級特進と言われるだろう手柄だ!!」と言った。
何階級特進には突っ込めない……
「俺の世界については置いておいても、ラウールとサクラは堂々と査定を受けるべきだ。この世界に来たばかりの俺が言う事でもないが。」
ダイチの言葉はラウールもうれしかった。
誰も傷つかなかったことには意味があると思いたい。
犠牲が少なく済むように、目立ちたくなかったが参戦したのだから。
~~~~~
こうして話し合いが終わり、数日間が経った。
冒険者ギルドから呼び出しがあり、あっさりとSランクに昇格した……
それで良いのかと思いながらも冒険者プレートが更新された。
その時に受付を担当したシトカさんが言った。
「Sランクはあくまでも冒険者ギルドが認めたランクです。それは冒険者ギルドが判断した基準です。【黒猫】の御二人は何を大切にしているかはわかりません。しかし、冒険者ギルドはあなた達を認めました。冒険者ギルドは、そこに住む人々の為に存在している組織です。中にはお金儲けの為に登録をしている人もいます。生活に困って登録している人もいます。しかし冒険者ギルド設立の理由は、そこに住む人が困っていることを解決することだった。その対価として報酬をもらう。本当に単純に、自分の行ったことが、金銭として自分に返ってくるだけです。そこに冒険者ランクが出来ました。それも全ては依頼をする人が、質の良い人を選ぶためのもの。だから、冒険者ランクを気にせず、自分は街の人にとって良いことをしたとだけ思っていればいいのです。人のためと言うのが原点ですから……」
……
……
人のため……
僕はこれでSランク冒険者になった。八歳で登録し、十六歳でSランク冒険者。
サクラもSランクになった。十四歳で登録し僕と同い年だから、十六歳でSランク冒険者。
サクラはチートだ……
もしかしてSランク冒険者になるまでの最短では……
僕が思った最短記録なのかと言う期待は裏切られた。
過去に登録から二週間でSランクになった者がいると言う。
今回とは比べ物にならないほどの大規模な魔物の侵攻があり、街を救った英雄だという事だ。
言葉は濁しているが、きっと冒険者登録をした、過去の勇者だ……
EXランクの最短記録ももう狙えないみたいだ。
登録から3か月で魔王を討伐して英雄になった者がいるみたいだ……
またもや……過去の勇者だろう……
魔王なんてそんな簡単には出てこないよ!
それでも僕達はSランクに昇格した。
……
そろそろ良い区切りなので旅を再開しようとラウールは考えていた。
サクラはまたついてきてくれるかな?
安心しつつも少し不安なラウールだった。




