第八十八話 ゴブリン討伐を開始した?
もしかして……もしかしてだけど……僕達だけでゴブリンを殲滅したら、目立たなくても済むんじゃないのか?
勝手に……単独でだけど……
そう僕は考えたが、その考えを振り払った……結局目立つ!
「さくら?何か目立たない方法はないかな?どうせなら徐々にギルドに貢献してSランクになった方が目立たないんじゃない? 僕なんてSランクの冒険者の名前をほとんど知らないよ?だから遠くの高ランク冒険者より、身近な実力のある冒険者の方が目立つよね……。ゴブリンを殲滅させた方が絶対目立つよね?」
「そうね。私もSランクの冒険者は知らない。難しいね……。チートがありすぎるから、強い敵一匹より、弱い敵が大勢の方がやりやすいものね。」
「ね~。多数の殲滅だけだったら、一瞬だと思うけどね……」
「いっそのこと、雑魚を私たちで殲滅して、ボスをSランクパーティーに任せる?」
僕達は悩んだ……
Sランクパーティーがボスを倒した後、そのパーティーを可能な限り持ち上げて、自分たちは雑魚を倒しただけですと言う顔をする……
そこくらいが限度か?
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数日後に一度高ランク者だけ集まって話し合いがもたれた。
そこには【黒猫】の姿はもちろんあった。
そして僕は提案した。
【黒猫】が、広範囲殲滅魔法を放って、雑魚を一掃する役割をする。
そうするとおそらく魔力が底を突くから、ボスは任せると。
実際は余裕だと思うが……
僕達の噂を聞いているのだろう。ランクが高くなるほど情報を大切に考えているから……。だからかSランクパーティーは【黒猫】の実力をある程度は認めていたため、大体の雑魚は一掃してくれると考えてくれた。
そこで今回の作戦はこうだ。
1.【黒猫】の二人がゴブリンの拠点に広範囲殲滅魔法を打ち込む。
2.ゴブリンの拠点周囲を他の冒険者で固め、打ち漏らしのゴブリンを討伐する。
3.Sランクパーティー二組は、ボスを討伐するために、魔法が撃ち込まれた後に拠点に突入する。
4.Sランクパーティーはボスと、ボスの護衛の討伐に分かれてとどめを刺す。
簡単に作戦はその四つの順で進めると決められた。
ギルマスのウールは司令官として指揮を執ることになった。
作戦は二日後。
それまでに依頼で少し街の方向から魔物を倒し、周りの魔物を奥に押し返し、出来る限り拠点にゴブリンが集まるように誘導することになった。
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作戦当日、僕達と冒険者達はゴブリンの拠点が見える高台にいた。
司令官のウールは一言「これから作戦を開始する。」それだけ話すと冒険者たちは配置についた。
配置についた冒険者を見たウールが言った。
「【黒猫】攻撃開始だ。」
……
「じゃあサクッと殺ろっかサクラ!」
「そうね、同じ魔法で!」
今回は雰囲気も出すために、適当な詠唱もしてみた……
「我はここに願う あまねく大地の熱よ 我の元に集まれ そして天空を支配する見えざる力よ 大地の熱を更なる境地に導き給え 熱は力 天空は支配 我はこの空間を支配し目の前の敵を殲滅することを願う…………灼熱の太陽!」
そう唱えた瞬間、空から炎?隕石並みの質量をもった炎の塊が大地に降り注いだ……拠点を大幅に覆いつくすほどの炎が……
「「(やべ!! やりすぎた……)」」
一つの炎が百体以上のゴブリンを焼き尽くす……
同じ規模の炎が50以上……
目の前の拠点が消滅した……
僕とサクラは逃げようとした……
しかしウールに回り込まれた、どうする?
逃げる……
シトカに回り込まれた……
逃げることが出来ない……
今までの迷いは何だったんだろう……目立たないようにって。
しかしそこに救世主?
救世ゴブリンが現れた!
「オマエハナニモノダ……オレノナカマタチヲ……」
目の前にいる無傷で立っているゴブリンが話しかけてきた。
ゴブリンも話せるのか!
「ワガテシタガ、ミヲテイシテマモッテクレタ。オマエハチンノテキカ?」
……僕はつい言ってしまった。
「僕達の後ろにいるSランクの冒険者がお前の敵だ!!」
周りの冒険者は突っ込みそうになった……
「オマエラガ、マホウヲ、ツカッタンダロ!!」
そう言って目の前のゴブリンロードだろうな……ゴブリンロードが殴りかかってきた。
「遅い!」
そう言いながら僕は体をひねり、こぶしを躱した。
「危ない!」
そう言ってサクラは大鎌を瞬時に取り出し、ゴブリンロードの後ろに回った。
ゴブリンロードは反応できておらず、僕にそのまま回し蹴りを放とうと体をひねった。
「させない!!」
そう叫びサクラは大鎌でゴブリンロードの首をはねた……
ジャッ!!!!
ゴブリンロードの首と体が離れた。
……
……
…………
「さすがSランク!! 僕達にはが分からない方法で討伐してくれた!!」
サクラも合わせてきた。
「私も躱すのが精いっぱいで……ありがとうSランク。」
……
……
「せめて名前を言ってね……」
そうSランクパーティーのリーダーらしき人は呟いた……
「それは無理がある。」
ウールも参戦した。
「【黒猫】のお二人……目立ちたくないのでは?」
シトカさんが締めくくった。
なぜギャグのような状況になっているのか悩んだ僕達だったが、犠牲者がいない事だけは喜んだ。
しかし目の前の焼け野原は……
【黒猫】が現状回復しなければいけないのかな……
そんなところを悩んでしまった。
~~~~~
我々はゴブリンの噂を聞いて冒険者ギルドに駆けつけた……
ニジュールの危機だった。
ゴブリンの集団が拠点を持っているという情報を、冒険者ギルドから聞いた。
我々は地道に依頼をこなし、才能も有り、強さも一流になった冒険者パーティーだった。
今回討伐を持ち掛けられ、ニジュールのために真っ先に参戦することを決めた。
この二ジュールは我々がSランクに上がった、記念するべき街。
そのニジュールに危機が訪れている。
作戦会議のため冒険者ギルドの一室に、高ランク冒険者が集まった。
ふむ、まだ若いが、実力は申し分なさそうな二人がいる。
Sランク冒険者ともなれば、相手の実力もわからなければやってはいけない。
この二人は【黒猫】と言うようだ。
最近噂が出始めているあの……
男女の二人パーティー。
若いが夫婦か恋人か?
そう考えていると作戦を読み上げられた。
【黒猫】の二人が広範囲殲滅魔法を唱えて、雑魚を少しでも多く倒すと。
ふむ。やはり冒険者ギルドに信頼されているようだ。
お手並み拝見と行こうか。
二人が魔法を使うという事は、魔法使い二人組のパーティーだったのか。
……我々はボスの討伐に集中しよう。
作戦当日、ギルマスのいつものトーンの作戦開始の合図があり、気合が入った。
そして【黒猫】が詠唱を開始した。
出来る限り多くのゴブリンを倒せよ、と心の中で応援した。
【黒猫】の詠唱は、
『我はここに願う あまねく大地の熱よ 我の元に集まれ そして天空を支配する見えざる力よ 大地の熱を更なる境地に導き給え 熱は力 天空は支配 我はこの空間を支配し目の前の敵を殲滅することを願う…………灼熱の太陽!』
聞いたことのない詠唱だ……
独自開発の詠唱か?
そして次の瞬間、我々は目の前の出来事が信じられなかった。
一発?で目の前の拠点が消滅した……
生き残っていたゴブリンが話した……
おそらくゴブリンロード、Sランク……
早い!目で追うのがやっとだ!
……
……
……
次の瞬間には、ゴブリンロードの首が飛んでいた……
あの女の子の大鎌が斬った?
魔法使いの二人ではなかったのか?
あの男の子の動きもとらえられなかった……
全く活躍の場がない……
そんな我々はSランク冒険者パーティー……
名を……




