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第七十九話 ラウールの相談

今日は朝食後に僕はサクラに相談を持ちかけた。



「これからのことを相談してもいい?そろそろ違う街に行こうかと思ってるんだけど。」



「……そうね、私はラウールが移動したいなら、何処にでもついて行くわよ。」



「本当? じゃあ行き先をまだ決めてないから、どの辺に行きたいかだけでも一緒に考えて。」



「わかったわよ。だけど直ぐには思いつかないな~。ラウールは何処か行きたい所はないの?」



「僕も今まで行ったことのない所を目的地にしたいだけで、ここに決めたって思える場所がね、思い付かないんだ。何か行き先を決める良い案はないかな?」



僕達はしばらく無言となり考えたが、これといった目的地が決まらない……



「今は誰か人に聞くのもな……とりあえず依頼でも受けながら考えるかサクラ?」



「そうね、何か依頼票を見てみたら何か良い目的地が浮かぶかもね。あとは冒険者ギルドで聞こえてくる話とかでもヒントがあるかもね。」



そう言って僕達は冒険者ギルドに向かった。



~~~~~



冒険者ギルドはいつも通りの賑やかさだった。


そして【黒猫】の二人も、ギルマスのお陰で騒ぎには巻き込まれない。僕達はギルマスに感謝した。


ギルマスに感謝し、冒険者ギルドの雰囲気を感じながら、僕達は依頼票を確認した。


貼られている依頼はほとんどがいつも通りの内容で、めぼしいものはない。それでも何かないかと低ランク帯の依頼票も確認していった。



「これなんてどうラウール?」


そう言ってサクラが一枚の依頼票を指差した。



【長期護衛:帝国までの護衛を依頼したい】



「ん~、帝国は行ってみたいけど、長期か……」


「じゃあこれは?」



【森に魔物が増えているので、魔物討伐をお願いします。できるだけランクの高い魔物を討伐してください。】



「小さな村からの依頼だね。普段なら受けたい依頼だけど、その森って学園行事でいく予定だったところじゃない、サクラ?」



「そうね、よく見るとその森ね。じゃあパス。」





……まだ僕達は依頼票を確認している……



しかし、めぼしい依頼は見つけることが出来なかった。



「サクラ? ちょっと酒場で果実水でも飲んで休もっか?」



「そうね。特に急いでいるわけでないしね。」



僕達は酒場に行き、果実水を注文し椅子に座った。そして、少しの間飲み物を口にして、ぼーとしていた。



『おい聞いたか?今度勇者召喚があるみたいだぜ!』

『本当か? 魔王が出現したって言う噂も聞かないぜ。』

『あ~、魔王なんて出現してないぜ。俺が聞いた話だと、自分の側に強い奴を置いておきたい貴族が召喚するみたいだぜ。』

『そんなことができるのか?』

『召喚陣は完成させたみたいだぜ。国や教会にある召喚陣を確認できる立場の貴族らしいからな。』

『なんでそれをお前が知っているんだ?』

『どこにでも情報を洩らす奴はいるもんだ。特に今回は国が今ある召喚陣を使うのでなくて、ある意味で情報を盗んでいるからな。関わっている人数は多くなるさ。』

『そんなもんか? ちなみにどこの誰だ?』

『それがなんとな、この国の、教皇の弟の子らしいぞ。』

『あーあの、大きな口では言えないが……ろくでなしか~。』

『ああその、ろくでなしだ。後は噂が本当で、召喚陣が上手く作動したら、もうすぐ行われるはずだ。』

『じゃあこの街に勇者が……』



『おーい、2人とも、待たせたな行こうぜ!』



そんな噂話をしていた冒険者達は冒険者ギルドを出ていった。



~~~~~



「ラウール聞いた?テンプレよ……。ただし魔王なし、国の召喚ではないようだけど。」



「そうだね……国で召喚するわけでないみたいだけど……。ただ噂だし、成功するかわからないようだし、どうしよう?」



「私はもう少しこの街に残りたくなった!ラウールが反対するならどこへでも行くけど……」



僕は少し考えた。

どっちがこの世界を楽しめるか。

旅をして色々見て回るのは、初めて体験することを楽しみにしているのが一つの理由である。だったらここは少し待って、召喚はあるのか?召喚があるのなら成功するのか?

その結果を確認してからでも出発は良いのではないかと考えた。


本当に勇者召喚があっても、僕たちには止めることは出来ない。

もし良い人が勇者として召喚され、困っている事が分かったのなら、可能なら手助けしても良いのではないかと思う。


もし、テンプレ通り悪い奴が召喚されたら、何事もなかった事にして無視して旅立てば良い。


更に複数人の召喚で、誰か一人が無能と放り出されたら、助けてあげても良いのではないか。



「そうだね。もし噂が本当なら、僕達が手助けできる場合もあるし、少し様子を見よっか。」



「……ありがとうラウール。出会えないかも知れないけど、ろくでなしなら直ぐにお披露目しそうだしね。」



「ね~。だから、良い人限定で困っていたら助けてあげようよ。」



「「できる範囲で!」」



そう話し合いが終わり、僕達はしばらくこの街に残り、この街周辺の依頼をするか、街をブラブラすることにした。



~~~~~



「そうと決まれば、今日はどうする? 噂の貴族の家の近くにでも行ってみる? 僕は名前も覚えていないけど、サクラはこの街の……国の教皇の名前はわかる?」



「……そういえばわからない。」



「そうでしょ……。僕もなんだけどね。まずは教皇とその弟と、ろくでなしって言われる子供については調べよっか?」



結局僕達は冒険者ギルドに戻った。


そして何でも相談受付で教皇達の名前を知った。


住んでいる所はみんな同じ辺りで、誰でも知っている情報だからと教えてくれた。



そして教えてもらった場所に向かい、迷うことなく到着した。


教皇は当然王宮で、その弟は隣の城だった。そしてろくでなしは、更にその隣の城にいるようだ。



ここまで来たことがなかった僕達は、こんなに城が続いているものかと驚いた。


そして、冒険者にも噂になっているのに、こんなに近くに住んでいる教皇達が何故召喚を止めないのか疑問に思った。



教皇はいい人と聞いている。


弟もいい人らしい。


それなのにナゼ?


あくまで噂だったのか?



僕は色んな考えが浮かんだが、時間が経過したら結果がわかるはずだと、考えるのを止めた。



ただ、魔力の調整で送られてきた僕がいる。

転生や転移者が増えた場合、世界の魔力量がどうなるのかだけ気になった。




そこまで確認して、考えるのもやめ僕達は買い物を楽しんでから、宿屋わかばに帰った。












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