第七十一話 ソウゾウゾウさん
騎士たちは尋問した。
敵達……盗賊達?は必死に話した。苦しすぎた……
盗賊?は男女どちらもいた。
その光景は悲惨だった。
体中が何だかわからない液体だらけになり、汚い……
「ラウール、サクラ、ありがとう! おかげで助かった。」
サワーは2人に近づき頭を下げた。
「いえ……。申し訳ありませんでした。護衛を引き受けたのに、怪我を負った人もいて……。」
そういってラウールは頭を下げた。
「そんなこと言うなよ~。さすがに俺達は騎士だぜ。そんなことを言われたら、俺達の立場がないぜ! 助かったよラウール。」
ウツカはそう言ってラウールの肩を叩いた。
「そうよ。私をみんなが守ってくれた。傷ついたけど、みんなを治してくれた。ラウールは無頓着だけど、街で回復魔法をかけてもらうのって高いのよ。回復魔法でも高いのに更に高位の回復魔法……そしてラウールの回復魔法は効果が高いのよ。この前も思ったけど、欲がなさすぎ。」
そうだったのか……。国民皆保険……。みんながある程度のお金で治療してもらえると言う意識が消えない。
「たぶん、その回復魔法だけで、教会の大司教以上になれると思うよ。もしかするとその上も狙えるかも。代々の貴族の位置には行けないけど?狙ってみる?」
そう笑顔を向けてきた。その顔は、「その気はないでしょ?」と言うように。
「嫌ですね~……僕は冒険者で、旅がしたい。一か所に今は留まる気はないです。」
「そうでしょ。だから言ったのよ。」
キソ様は嬉しそうだ。
「ラウールは欲がない顔をしている……」
僕はちょっと恥ずかしかった。
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尋問を終えた騎士がキソ様に報告をしている。
その報告を僕にも教えてくれた。言えない部分もあるだろうけど。
盗賊?はやはり貴族に雇われていた。
ロムビドの街ではない街の大司祭だった。
その大司祭がもっと上の立場になりたいと考えた時、邪魔になるのがポルフォ家の人々。
ポルフォ家は……キソ様だけでなく全員が街の人々、特にはじかれた人に対しての施策を積極的に考えている人みたいだ。
この国ではまれに欲にまみれた人物が上に行こうとしているようだ。
しかし世襲以外で上り詰める立場に行ける人は、本当に聖職者と言える人物と言う。
あとは善意の押し付けでこじれるような人はいるが、全ては良かれと思って行動する人がほとんどだという説明を受けた。
しかし、更に下の立場になると、今回の騒動を起こした貴族のような予備軍はいるようで、どこの世界も小悪党が一番面倒くさいようだ。
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「証拠もたくさんあったし……【黒猫】とも仲良くなれたし、良い旅だったよ。」
もうすぐ首都ニジュールに到着する頃に、キソ様は感慨深げに声をかけてきた。
「僕もキソ様と仲良くなることができて良かったですよ。少しはこの街に滞在私用と思えましたし。」
僕がそう返事をすると、キソ様は目を輝かせた。
「じゃあもう少しこの街にいる? もう少しお話ができるの?」
「もう少しいるってラウールが言うなら、面倒くさい事が起きなきゃいると思うよ。私も同じ気持ちだよ。」
「そうなの?面倒くさい事って?」
「僕は偉そうにしている人は嫌いだ。偉いと周りに言われる人は好きだけど……。だから、偉そうにしている人が僕に絡んでくると、その街からは早く出たいと思ってるよ。」
キソ様は顎に手を当てた。
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「私達はいいでしょ?それに私が言うのも変だけど、私の家族もみんな私みたいな感じよ! だから、この街にいる時は、時々会ってくれないかな?」
キソ様が不安そうに聞いてきている。
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「【黒猫】の二人は、キソ様の友達と名乗ってもいい存在ですか?「もちろん!!」」
予想外にかぶせてきた。
「では友達だね……。じゃあこの街でもわかばに泊まってるから、何かあったら声をかけてよ。冒険者ギルドでもいいよ。僕が話しておくから。」
「わかった。じゃあ何かあったら、私にも声をかけてね。私はここにも家があるから、用事がある時はここにきてね。」
そう言って地図と、紋章入りのメダルを手渡された。
「ラウールとサクラの事も執事に教えておくから。」
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ラウール達は首都ニジュールの門に到着した。
そして貴族専用門から街に入った。
ここまで来るとキソは、一度貴族の娘に戻らなければいけない。
一度は家に戻って説明をする必要がある。
ポルフォ家の本宅はロムヒドにあるが、侯爵ともなれば、街を行ったり来たりする必要があるようだ。
侯爵にはあったことがない。
そして重要なこと……
ラウールは聞いた。今まで一度も出てこなかった名前を。
「お父上様の名前は?」
「テイセキ・ポルフォです……」
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ニジュールについたラウール達は、キソの誘いもあったが、宿屋わかばにてゆっくりと休むことにした。
「これからどうするラウール?しばらくこの街にいる?」
「ん~~、どうしようか?ロムヒドの冒険者ギルドにも依頼を受けるだけで、何も言ってこなかったし。一度冒険者ギルドに行って話をしてみよっかな?依頼修了の報告も必要だし。」
「そうね、ラウールはAランクになってるしね。居場所を明かしておいたほうがいいかもね。」
そう言って疲れていたラウール達はそれぞれの部屋に戻った。
そんなに力を使ったわけでもないけど、人を攻撃するのは疲れる……
二人はそれぞれの部屋に戻った…………疲れているのか、すぐに眠りについていた。
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いつもより遅い起床だったが、二人は朝食を摂っていた。
「サクラ?今日はどうする?」
目の前の眠そうなサクラに僕は聞いてみた。
「最近ちょっと疲れが残ってる気がするのよね。少しゆっくりしたいかな?」
そう言って目をこすり、目の前の野菜を口に含んでいる。
「じゃあ、久しぶりに教会にでも行く……他のところに行く予定がないなら……」
「ラウール……それは何かを踏んでないかしら?」
僕は考えた。教会へ行った場合に何が起こるか?
光の神関連?創造神関連?才能の神関連?神には近づかないほうがいいかな……
「じゃあサクラ……買い物にする?」
「今私が何を買うのよ……今必要な物はないんじゃない?」
「じゃあ、僕と一緒にダラダラしてる?」
「ラウールとダラダラって、どこでどうやって?」
「じゃあ何がしたいの?サクラに任せるよ……」
「なんでもいいんだけど、今まで言われたなかじゃあ……光の神のことが気になるかな?」
「じゃあやっぱり教会?」
「そうね、教会にでも行ってみようか?」
そう話し合った二人は教会の場所を聞き、教会に向かった。
さすがに皇都なのか……街並みはきれいで、服装も皆清潔だ。
どの種族も明るい顔をしており、貧しそうな人がいない。
いい政策をしているのか?
そう考えたり、サクラと会話していると教会に到着した。
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教会の中に入り、出迎えてくれたシスターに促され、光の神の像と思われる物の前に導かれた。
ここで断るのも不自然なので、二日人は片膝をつき、両手を合わせた。
ピカッ~~~!!
と二人は光に包まれた。
そして目を開けると、目の前には中世の茶室といった部屋が見えた。
『久しぶりだねサクラ。どうだい調子は?』
サンタクロースのような見た目の老人が目の前に現れた。
・・・・・・
・・・・・
「……こんにちは創造神様。お久しぶりです。私は元気に過ごしてますよ、ちょっと初めはハードモードでしたけど。」
サクラは驚いた顔をしていたが、目の前の神?に返事を返していた。
「初めましてソウゾウゾウ様。僕はラウールと申します。僕も一緒にここにきていいのですか?」
『いいのじゃよ。加護があるじゃろ。儂は才能の神とは友好的な関係じゃから。』
そう言って目の前にラウールとサクラが座るための椅子を、何も無かった所に出現させた。
神は王座のような椅子に座り、その前にラウールとサクラが普通の丸椅子……に座るという、アンバランスな対面となった。
『すまなかったのじゃサクラ。お前に注意するのを忘れていたのじゃ。地球の知識はこの世界では貴重なのじゃから、あまり話はしないことじゃ。今さら注意しておくのじゃ。』
サクラは項垂れた……
「遅いですよ……。もうトラブルが起きた後ですよ……。もう少しで自由がなくなるところでしたよ。せっかく創造神様から、この世界に生まれ変わらせていただいたのに……」
『すまんかったのじゃ。あまり言わないでくれなのじゃ。何かお詫びでもするから許すのじゃ。』
「お詫びを頂けるので?」
『何がいいのかな……なのじゃ。それと、口調は普段通りでいいのじゃ。神は色々できるけどもじゃ、そこまで敬う必要もないのじゃ。神も好き嫌いがあって、同じ神同士でも争いもあるのじゃ。人間と一緒なのじゃ。神の間にも格差もあるから、人間の世界と似たようなものなのじゃ。この世界ではとつくけれどもなのじゃ。』
「そうなの? 人間臭いからこんな口調でもいいの?」
『それでいいのじゃ。あちらの世界の人間は簡単に言葉も崩してくれてうれしいのじゃ。』
ラウールも会話に入っていった。
「じゃあ僕もこんな口調でいいの?ソウゾウゾウ様?」
『いいのじゃ。けれどもソウゾウゾウ様とは何のことじゃ?」
『初めにサクラ言った名前ですよ……ソウゾウゾウと言う人の世話になったように僕に話をしてきたから、そのまま呼んでみました。」
『面白いことを言うのじゃ。けれども呼び方は創造神で頼むのじゃ。神が名を魂に刻むことは、争いがある時には不利になることもあるのじゃ。理由は教えないのじゃ。』
そう創造神様とサクラ、ラウールは話をした。
その後もしばらく話をして、お詫びの話になった。
サクラはお詫びはいらないと言ったが、神が一度言い出したからと、神が逆に提案してきていた。
『スキルでは、何でもできるようになるわけではないけれどもじゃ、便利なスキルや、魂か肉体を強化することはできるのじゃ。何も浮かばないのであればじゃ、体を強くするかじゃ?』
「そうね……それが良いのかな? あっ……私もラウールと一緒で、自分の強さとかスキルを見ることはできない?」
『それはできると思うのじゃ。ただ、ラウール?少し君の能力を深く見せてほしいのじゃ。」
それを了承したラウールと神が話をして、ラウールに神が触れ、自分のステータスをラウールが見た。しばらくすると創造神は手を放し、サクラに触れた。
『これで見ることが出来るはずじゃ。今度ラウールと一緒に見てみるのじゃ。』
そういったやり取りをした後は、光の神について二人は聞いてみたが、光の神はいない…………なんてこともなく、創造神と仲が良い神で、しっかりとこの国を見守っていると言う。
その情報を聞いた後は「もう時間だ」と言われ、お別れをした。
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教会に意識が戻った二人だったが、やはり時間は進んでいなかったようで、周りにいた人達は何も気づいていなかった。
お祈りをした後は何もしないと言いながらも、冒険者ギルドでラウールが拠点を移した事を報告した。
冒険者ギルドでは、拠点を移す前の所より、移した後の所で報告してくれたら良いと言われた。
普段から、冒険者ギルド同士で情報交換をしているそうだ。
その後は夕方まで街を二人でぶらぶらしながら過ごしていた。
ここまで一緒に旅をしているだけあって、はたから見ると仲の良い恋人に見えたり見えなかったり……?
友達ですけど何か…………




