第六十九話 轟く二つ名
「あの【漆黒の翼】さんですか?」
そうキソ様が言った。
「お前が【漆黒の翼】…………。」
そうウツカは目を見開いた。
「【漆黒の翼】に会えました!!」
そうサワーは拝みだした。
「ぶふぅ~~~!!」
そうサクラは噴出した……。
「サクラ…………後で話がある。今後のパーティーの行方を左右する…………大事な話だ。」
サクラは慌てた
「ごめんなさいラウール。免疫がないのよ、急に出てきたら……ね?」
「は~、そうだよね……。」
なぜ僕の二つ名をこの人達が知っているのか気になった。
なぜ漆黒の翼を知っているのかを……聞いてみた。
「少し前にクライスの街に遊びに行ったんだけど、そこで知り合いのデーブンさんが言ってたの。デーブンさんがこの国に来た頃に【放浪の羊】と知り合いになって、護衛依頼もしてもらったことがあったんだけど……その途中でね?このくらいの攻撃など~! 漆黒の翼に比べたら~!と言っていて、気になったから聞き出したの。」
そう良い笑顔をキソ様が向けてきた。
「デーブン……」
「それでね、漆黒の翼について聞いてると、Gランクから二つ名があったっていうじゃない!! 何それ、Gランクってまだ町中の依頼しかしてないようなランクよ。それなのに二つ名なんて、面白いじゃない!!」
面白いのか…………僕は面白い……。
「だから、ラウール……私の護衛依頼を受けてくれないかしら?」
真剣な表情になったキソ様だった。
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急に真剣になったキソ様の事情が分からないので、依頼は冒険者ギルドに指名依頼で出しておいてほしいことを伝えた。
そして街に到着し入口の列に並ぼうと思っていたのだが、貴族入口から入ることになった。
今回の門番さんとの出会いは、もう少し後になりそうだ……。
門をくぐり、父にも紹介したいとキソ様は言った。
しかし僕は、街に到着したばかりと言う理由をつけ、今日のところは別れた。
そして冒険者ギルドに行くために、サワーさんにだけは来てもらうことになった。
サワーさんに案内され、冒険者ギルドに行き、移動馬車の護衛依頼の報告をした。それと一緒に、サワーさんと一緒に途中で盗賊に襲われた事を報告した。
ほとんどの盗賊は討伐したが、五人程度は生かし、ポルフォ家に移送されたことも併せて説明した。
今回の盗賊討伐は依頼で受けたわけではなかった。だからラウールとサクラの昇格は、冒険者ギルドで審議して依頼達成とするか決めると言われた。
その後はサワーさんと別れ、教えてもらった宿に泊まることにした。
もちろんいつものチェーン店があった。
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「つかれたねラウール……。」
「そうだねサクラ……。」
2人は肉体よりも精神的に疲れていた。
もちろん原因はあの貴族だ。
【黒猫】にも指名依頼が入る状況になってしまった。立派な騎士の護衛がいるにもかかわらず、冒険者ギルドに護衛依頼を出すほどの事って?
そして盗賊だ。あの盗賊たちの装備は、一見粗末なものに見せかけていたが統一されていた。
魔法使いの気配も感じた。魔法を唱えることが出来る人は確かに盗賊にもいるだろう。しかしその男の魔力の運用は、盗賊に落ちるほどの粗末な魔力運用ではないと感じた。今まで見た人の中でも上位なほどに上手いと思った……。
だからこ時間をかけず、一瞬での殲滅させた。
間違っても攻撃を受けて、痛い思いをするのはは嫌なので……。
「サクラは感じた……あの集団の違和感を?」
「うん……この世界のことはまだまだ分からないことが多いけど、何かわざとらしい雰囲気を感じた。自然じゃない話し方……違和感……何か変な感じだった。」
「そうだよね……話し方も無理してる感じだったし、なんとなく棒読みな話し方……。」
「どこかの敵対貴族が狙ってるのかな?よくあるでしょ、盗賊に見せかけてって……。」
「そうだね……僕のステータスの幸運値は高いはずなんだけどね……巻き込まれるね。」
「巻き込まれるのが幸運だったりして? この世界を楽しめよって言う、神様の仕業?」
「それは……そう……違うと良いな……。」
ラウールとサクラはそこで話を止めて休むことにした。
明日は冒険者ギルドに向かい、ランクアップ出来るか聞いてみる。
そしてしばらくはこの街に留まる事になる状況になったので、街も散策しないといけないと思っていた。
できたら権力者とは絡みませんように…………と祈って……。
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宿で身も心も休めたラウール達は、冒険者ギルドにいた。
受付に声をかけ、冒険者ランクはどうなったか聞いてみた。
「おめでとうございます!ラウールさんはAランク、サクラさんはCランクとして登録させていただきます。最後の決め手はやはり……ポルフォ侯爵の五女、キソ様を助けたことです。」
なんと……貴族の威光があるのか……?
貴族の娘と知り合いになり、ランクアップの決め手になってしまったのか……。
恩を返せと言われることはないと思うけ……ん……。
「キソ様のお父様は……この街の教会で大司祭として健全な街となるように活動している、立派な方です。そんなお人の五女様を守った。素晴らしい!」
・・・・・・
「それでは他にご用件はありますか。」
「僕たちに護衛依頼を受けてほしいと言ってたから、指名依頼を出してくださいと言っておいたんだけど……ある?」
「えーと、確認してきますね。」
そう言って受付さんは後ろにある部屋に入っていった。
「ラウール……やっぱり依頼は受けるの?」
「指名依頼でって言ってるしね。数日しても依頼がなければ旅立とうと思っているけど、挨拶くらいはしていかないとね。」
「そうなのよね。勝手に出発するのもね……。それまでどうする?この街のダンジョンにでも行く?」
「ダンジョンだといつ出されるかわからない依頼を確認できないから、日帰りでできる依頼でもうけようか?」
そんな会話をしていると、受付さんが手に何かの紙を持ち戻ってきた。
「【黒猫】に護衛の指名依頼が入っています。内容を確認しますか?」
早い!
さっきのサクラとの会話は何だったんだ……。
受付さんから手紙を受け取り、内容を確認した。
【首都ニジュールまでの護衛依頼
期間は到着するまで。
護衛対象はキソ・ポルフォ。
騎士を十名配置する。
黒猫はできるだけ軽装で、護衛とばれないようにしてほしい。
戦いが必要な時は、敵を一人は残し殲滅する事。
そして残した敵一人は騎士に渡すこと。
依頼主:ポルフォ家】
「父でなくて家からの依頼……キソは五女って?重要な人なの……。受付さん、どう言うこと?」
「ちょっと様を……。キソ様は五女です。でもあの方は頭もよく、普段は首都ニジュールで学園に通っています。そして滅多にいない光属性の適正があることから、回復魔法を使えます。だからキソ様は教会で、上に登っていく人と考えられています。そんなキソ様をよく思わない人から敵対されることもあるようです。教会内でも派閥争いはあるようで、ポルフォ家の当主様は立派な方なのですが…………。だから自分の出世の邪魔になると、キソ様を排除しようと考えている人がいるのでは……。」
ん~完璧に争いに巻き込ままれる……。
いや……護衛だけだから、その間だけの関係だ。首都ニジュールについたら僕達はダンジョンにでも行こう。
「依頼は受けます。それで、打ち合わせはどうしますか?」
「ラウールさん達が今日の予定がないのなら、今から使いを出して聞いてきますが。」
「そうですね、行き違いになるよりはその方が良いですね……お願いします。」
そう話してからラウール達は、冒険者ギルドで気になる本を読むことにした。
・・・・・・
『学園について』そういう本を見つけた。薄い、学園を紹介する内容のようだ。
ラウールは学園についての知識がないため、確認しておこうとページをめくった。
本の内容は大体はこんな感じだ。
学園は十歳から通え、試験を突破し上の学年に上がる。年齢関係なく試験による実力主義だ。
十八歳まで通え、十八歳で四年生を卒業する試験を突破できなかった者は退学になる。
実力があれば中途入学もでき、飛び級もある。
優秀であれば十歳で入学、十歳で卒業もあり得るようだ。
学園を優秀な成績で卒業した者は、教会で一つランクが高い役職から始まる特権もある。
キソ様は見た目は僕たちと同い年くらいに見えるけど、何歳なんだろう?
優秀と言われているみたいだから、四年生なんだろうか?
本を読み考え事をしていると、「こちらの部屋に。」と受付さんに言われ、指定された場所に移動した。
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受付さんが案内してくれた部屋に入ると、ウツカさんがいた。
「よっ!」
軽い……。
「こんにちはウツカさん。ウツカさんが打ち合わせの相手?」
「そうなんだよ。すぐに動けるのが、あまり重要な役割のない俺だったんだ……。何て言うのは嘘で……こういうことの担当は……実は俺なんだ。」
意外にまじめな役割があったウツカさん。
しかしちょっと軽薄そうな印象のウツカさん。
「そうなんですね。僕は【黒猫】のラウールです。こっちがサクラ……二人パーティーの冒険者です。」
「そんな真面目に自己紹介しなくても知ってるよ。」
「一応貴族様からの使いですからね。少しはまじめに話しますよ。」
「いやいや、昨日のうちからそうしてくれ……。いきなりあの話し方は少し焦ったぞ! キソ様は気にする人でないけど……他の人が聞いてたら大変だったぞ。」
「……そうなったらすぐ逃げますよ。足は速いですから。」
「逃げるのかい!?」
そう軽口をたたきながら話し合いが始まった。
キソ様はもう四年生で、いつでも卒業できるほどの成績を修めている。
しかしすぐに働くのも面白くないと、短い距離の旅に出ることがある。
だが最近の旅では、盗賊らしき者たちに襲われることが増えていた。
今までは護衛騎士だけで対処できていたが、今回のように強い相手は初めてだった。
そこで護衛の増員を考えたそうだ。しかし五女までとなるといくら優秀で貴重な存在でも、そこまで騎士の人数を割り当てる事が出来ない。
だから今回出会った【黒猫】に白羽の矢が当たった。回復もでき、あの人数を一瞬で殲滅する戦闘力もある冒険者。
隠し玉として、キソ様を守る。
ピンチの時は回復の役割りをする。
そんな適任者が見つかって、すぐに声をかけてしまった。
最後に移動はすぐにでも良いようで、明日にでも出発は可能という事だ。
「どうするラウール?俺達護衛騎士は、いつでもどんな行動もできるように準備はしているが。」
僕は考えた……。
早いほうが面倒ごとはないのではないかと。
サクラは考えた……。
どうでもいいと……。
「明日で「どうでもいい」」
・・・・・
…………明日に決定した。
出来るだけ、護衛が増えたと思われないような格好で、合流してほしいという説明だった。




