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第六十八話 不幸なのか幸運なのか

前方が騒がしい。


人間の気配は沢山あるが、まだ姿が見える所までは来ていないので、何が起きているのかわからない。



慎重に前方に移動して、少しずつ人間の気配がある所に近づくにつれ、叫び声が聞こえてきた。


武器を打ち合う音や悲鳴、そして動物の鳴き声…………争っている人達がいるようだ。



しかし今はこの馬車の護衛。


ラウール達はどうしたらいいか迷っていた。



「すいませんがラウールさん。この先の争いを見てきてもらっても良いですか?このままだと、私の馬車にも被害が出るかもしれませんから……。そうならないように、二人が状況を実際に確認して今後の行動の判断をしていただけたら……。」



この移動馬車の人……いい案だ。



「わかりました。急いだほうが良さそうなので、サクラ!行こう!」



そう言い僕達は素早く移動を開始した。

そしてすぐに戦場にたどり着いた。


そこには、金属の鎧を着た人達が必死に馬車を守っている姿が見えた。


金属の鎧を着た人たちは十人。そのうちの七人はもう倒れこんでいる。


馬車を取り囲んでいる盗賊?達は三十人はいる。


なぜこんな目立つところで、こんな金属の鎧の人達に襲い掛っているのかはわからないが、どちらが危ないかは一目瞭然だ。



「加勢は必要ですか!!」


と僕は金属の鎧の人達に叫んだ。



「いいのか!?」と先頭に立つ金属の鎧の人が答えた。



返事を聞いた瞬間僕とサクラは目で会話した。


僕は金属の鎧の人の前に出て守りを。


サクラは広範囲魔法を。


二人は役割分担をした。



そしてサクラは適当な詠唱をはじめて


「風の刃!!」


そう叫ぶと、サクラの目の前の盗賊?は一番偉そうなやつを除き、頭と体がおさらばした。



その後にラウールは、残りの偉そうにしている盗賊の頭?を入れて五人の腹を殴りつけ、大ダメージを与えて地面と仲良くさせた。



~~~~~



「ありがとう!助かったよ!」


そう言って一番先頭に立っていた人は近づいてきた。



しかし言葉を全て聞く前にラウールは、適当に詠唱して、


「範囲回復!」と天に向け両手を掲げた。



パ~~~~!



その言葉の後には倒れている金属の鎧を装備した男を含め、盗賊?以外は光に包まれた。



「それは範囲回復魔法??」


金属の鎧の人はびっくりしているが、一人一人の状態を確認に行った。



・・・・・


・・・・・



「ありがとう!!みんな無事だ!!本当にありがとう!!」


金属の鎧の人は、兜が吹っ飛ぶんではないかと思うほど頭を下げた。



「僕達も近くにいたので、一緒に対処した方が良いと思って行動したので、そんなに頭を下げなくてもいいですよ。」



「いやいやいやいや……。私たちは負けそうだった。そして君たち二人で全ての盗賊を倒した……。我々は何もしていないよ。おまけにみんなを回復してもらって。どうお礼をしたらいいのか……。」



「いいんですよお礼なんて…………だけど、僕達の冒険者ランクアップのために、次の街で誰か一人が証言してくれませんか?盗賊を討伐すると、サクラはCランクへ。多分僕はAランクに昇格できますから。」



目の前の金属の鎧の人はびっくりしているようだ。


「その年で…………そんなに高ランクの冒険者だったとは……。それならこの成果も納得だ。」



ビックリしている人に、身分を明かしていないと思い出し、冒険者プレートを掲示した。


目の前の馬車は紋章が入っているものだと、いまさらながら気づいたからだ。



「ありがとうわざわざ。私はサワー……この馬車に乗るお方の護衛隊長だ。」


そういって兜を脱いだ。


するとそこには、白髪のボブカット、二十歳代中盤くらいの可憐な女の人だった。ただ身長は僕より大きかった……。



「そうなんですね。それでは用事が終わったのでしつ『ちょっと待って!』」


僕は面倒事を避けようと、その場を立ち去ろうとした。しかしその言葉を遮り、馬車の中から声が聞こえた。



「キソ・ポルフォ様!ここでお顔をお見せになるのは……。」



馬車の中から顔を出した人はサワーを静止した。



「この度はありがとうございます。私はキソと申します。」



「どうも……ラウールです……。」



「おい!ポルフォ侯爵家のキソ様になんて口の利き方だ!」


サワーの後ろにいた騎士が怒鳴りつけてくる。


既に兜を脱いでいるから顔は見えているが、こんな状況なのに長身……金髪……イケメンだ。カシマスさんとは系統が違うが……。



「申し訳ございません。僕は冒険者で……丁寧な言葉は苦手なので。」


そう答え、普段はもっと丁寧な口調だが、あえて崩していた。



「いいのです。ラウールと言いましたね……そしてサクラとそちらの女性を呼んでいましたね。お二人は命の恩人。言葉遣いなんてどうでもいいじゃない!」



おっおう…………急に来た……。



「私が良いって言うんだからいいの。ねっサワーもウツカも……ねっ!」



「「はい……。」」



二人は逆らえない。絶対強者だ。



「わかりましたよ、ラウールよろしくね! 私はサワー。キソ様の護衛筆頭!」



「俺はウツカ!二番目と言いたいが、二番目でない護衛だ!よろしくな!!」



「「おっおう……。」」


ラウールとサクラはガラでない返事をしてしまった……。



「それでラウールさん達~? 一緒に進んでくださいね。こわ~いので。」



~~~~~



なぜこうなった?


いきなり一緒に?


どこに?


ロムビドに。


護衛はいるよね?


さっきピンチになったよね?


護衛は納得するの?


OKっす!


ウツカは面白くないよね?冒険者も一緒なんて?


キソ様が安全ならそれでいい!


僕は移動馬車の護衛依頼を受けてるんだけど?


移動馬車も一緒に行ったら良いですよ!


そんなに守れるかな?


あれで何言ってるの?


僕は……。


あ~あ~!?きこえな~い!



何と不毛な会話か…………すべて返される。この人は……やり手だ。


ラウールとサクラはあきらめた。


しかしランクアップができるように報告してとお願いをした。


快諾された。



「そんなにランクアップを急いでなかったけどありがたいよ。」


「私もっ! そんなに気にしてなかったけどよろしく。」


ラウール達はキソ様に素直に話した。



「そうなんだ?冒険者ってランクアップを常に目指してると思ってた。」



「そうでもないんだよ。僕の両親もCランクで止めてたしね。ランクアップすると危険や、緊急招集依頼があるからね?」



「なるほどね~、私なんて護衛隊長はなりたくて頑張ったけどね?」


そうサワーが会話に入ってきた。



「それで、ラウール達はパーティーを組んでるのか?」


ウツカも入ってきた。



「そうですよ。二人だけですけど、【黒猫】って言います。」



「へ~、似合うね。見た目も性格も黒猫みたいだし、いいね!」


とキソ様が褒めてくれた。



「じゃあ、Bランクだと厳しいかもしれないけど、あの実力だと、二つ名とかは?」


とキソ様がぶっこんで来た……。



・・・・・・・


・・・・・・



「【漆黒の翼】です…………。」



「「「え~~~~~~!!!」」」



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